アーバンファームの制度・法律
各国・州・自治体の、市民の都市農業に関わる法律・条例・計画・支援制度を集めています。農地の保全や貸借、土地利用(ゾーニング)、税制優遇、公的プログラムなど、事業を始める・続けるうえで使える制度を整理します。毎日のルーティンで更新しています。
317 件
米国農務省 食品廃棄物削減・コンポスト(CFWR)協力協定
2026国公的プログラムアメリカ合衆国米国農務省が2026年に公募した26件のコンポスト・食品廃棄物削減協力協定。地域のイノベーティブで拡張可能な廃棄物管理計画を支援する国家資金プログラム。2027年までに実施予定。
都市農との関わり: 都市農業における有機資源循環の制度的支援。市民参加型のコンポスト・食品廃棄物削減プログラムを通じて、コミュニティスケールでの循環農業を実現。
米国Supporting Urban and Innovative Farming Act S.4470(2026)
2026国公的プログラム提案中アメリカ合衆国2026年5月に上院で提案された都市・革新的農業支援法。USDA都市農業・革新的生産事務所の予算拡充と権限強化を規定。農業者支援、競争的補助金へのアクセス、連邦農業プログラムでの認定など、機制度的支援の充実。
都市農との関わり: 米国の都市農業者が連邦レベルの制度支援、競争的補助金、規制サポートを受けられるようになり、事業規模の拡大と持続性の向上が期待される。地域別・分野別の多様な農業形態に対応。
FAO国際女性農業者年(2026)
2026国振興・基本法国際農業機関(FAO)国連・FAOが2026年を「国際女性農業者年」と宣言。農食システムにおける女性の本質的役割を認識し、ジェンダーギャップ解消と女性の生活向上を促進するグローバル・キャンペーン。
都市農との関わり: 女性農業者の経済的エンパワーメント、マイクロファイナンス・協同組合強化、技術・土地アクセス支援。都市農業における女性指導性の認識と促進。
フィリピン 農業省×TESDA 都市農業の職業資格化協定(Urban Agriculture Production NC II)
2026国公的プログラムフィリピン共和国農業省(DA)と技術教育技能開発庁(TESDA)が2026年8月に結んだ5年間の覚書。都市・近郊農業を職業訓練制度(TVET)に正式に位置づけ、「Urban Agriculture Production NC II」という国家資格をつくって、能力基準・訓練規程・カリキュラム・評価ツールを定める。タギッグのTESDA本部に「都市農業技術実演・訓練センター」を置き、各地方のTESDA訓練センター・DAの施設・実際の都市農園にも学習拠点を広げる。訓練内容は容器栽培・保護栽培・水耕・垂直栽培・コンポストのほか、食品安全・バイオセーフティ・適正農業規範(GAP)まで含む。
都市農との関わり: コロナ禍に趣味として広がった都市の家庭菜園を、資格に裏づけられた仕事に変える制度。市民が実践者・指導者・評価者として公的に認定される道ができるため、コミュニティ菜園の運営者や講師の育成、指導料を得る道が開ける。ただし訓練内容には水耕・垂直栽培といった設備型の手法も含まれる。
マレーシア「自宅で菜園を(KENDIRI)」キャンペーン(2026年)
2026国公的プログラムマレーシア農業・食料保障省(KPKM)が2026年、農業・園芸・アグロツーリズム博 MAHA 2026(スランゴール州スルダンの MAEPS)で、モハマド・サブ大臣により立ち上げた全国キャンペーン。標語は「Tanam Apa Yang Kita Makan, Makan Apa Yang Kita Tanam(食べるものを植え、植えたものを食べる)」。家庭の食料の一部を自宅で生産することを国家的な戦略介入と位置づけ、住まいの空間を家庭の食のエコシステムに変えることをうたう。推奨作物としてトウガラシ、からし菜、空心菜、ネギ、パンダンリーフ、レモングラス、ウコンを挙げている。
都市農との関わり: 共同菜園ではなく各世帯のベランダ・庭先での栽培を対象にした、国レベルの啓発型プログラム。供給網が乱れたときの家庭のねばり強さを高めることを目的に掲げており、都市の住民が自分の手の届く範囲で食べものを育てる動きを国が後押しする枠組みとして参照できる。参加世帯数や予算は、確認できた報道では示されていない。
フィジー 家庭菜園拡充イニシアティブ「From Our Backyards to Our Plates」(2026年)
2026国公的プログラムフィジー共和国農業・水路・製糖産業省が2026年4月19日に、農業復旧計画とあわせて発表した家庭菜園の拡充事業。標語は「From Our Backyards to Our Plates(裏庭から食卓へ)」。掲げる目的は、世帯単位の食料生産を進めること、栄養のある食べものへのアクセスを改善すること、低所得世帯・シングルマザー・高齢者といった脆弱な立場の人を優先することの3点。保健省、女性・こども・社会保護省と連携する「政府横断(whole-of-government)」の進め方をとる。発表と同時に2週間の申込受付を開き、そのあと対象を絞った支援を行うとした。第1期の支援内容と規模は公表資料には記載がない。
都市農との関わり: フィジーの農業省は以前から都市・準都市の世帯向けに家庭菜園プログラムを持っており、本イニシアティブはそれを災害後の復旧と物価上昇への対応として押し広げるもの。生産の場を農地ではなく世帯の裏庭に置き、支援の優先順位を脆弱層に明示して置いた点が、市民参加型の都市農の政策として参考になる。
米国農業法2025年:保全プログラム資金(25億ドル年間)
2025国税制・補助アメリカ合衆国2025年の米国予算調整法に含まれた農業法関連の保全プログラム資金:25億ドル/年。5つの人気のある農業法保全プログラムに対する追加の義務的資金。農民と保全に対する政府支援を強化。現在の農業法は2026年9月30日に失効予定。
都市農との関わり: 都市農業と小規模農業への保全資金提供を拡充。有機農業、ローカル食料システム、生物多様性保全支援を含む。都市農業の事業性支援と環境保全の統合的推進を実現。
パナマ都市農業振興枠組み法(法律465号)
2025国振興・基本法パナマ共和国パナマ全域の都市・都市周辺地域における農業実践を促進・規制。持続可能開発、食料安全保障主権、農業教育を目指す。垂直農業、水耕栽培、アクアポニクス、緑の屋根など革新技術の導入を推進。経済財務省と協力し、技術支援・研修・財政支援を提供。2025年3月31日施行。
都市農との関わり: パナマにおける市民参加型都市農業と革新的農法を促進。食料安全保障と持続可能開発を両立させながら、公的支援(財政・技術・教育)により市民農業の実践を支援。
シンガポール「30 by 30」拡張支援プログラム(2025年)
2025国振興・基本法シンガポールシンガポール政府による「30 by 30」政策(2030年までに食料の30%を国内生産)の一環として、屋上ガーデン・コミュニティガーデンへの拡張支援を強化。技術支援、市民参加プログラム、官民連携による推進。
都市農との関わり: 屋上ガーデンが公式に食料戦略の一部として組み込まれ、200以上の屋上が活動中。政府の技術支援と市民参加制度により、都市農業の制度的基盤が強化。
南アフリカ都市食料システム変革政策
2025国食農政策南アフリカ共和国南アフリカの都市食料システムの包括的な変革を指向する政策。67%の人口が都市に居住し、約5800万人が食糧不安に直面している現状に対応する必要性から、都市農業と食料政策の統合が進行中。
都市農との関わり: 南アフリカはアフリカで最も都市化が進んだ国だが、食料安全保障達成に失敗している。都市農業統合による食糧アクセス改善と栽培品目多様化が求められる。
ルワンダ「Urban Green Women Hubs」プログラム(2025)
2025国公的プログラムルワンダ、キガリ市キガリで2025年初頭に開始。3,000人以上の女性にマイクログラントとバーティカルファーミング・キットを供給。デジタル市場アクセスも提供。アグロ・イノベーションと協同組合ガバナンスを統合。
都市農との関わり: 女性のアグロ起業化、マイクロファイナンス、垂直農業技術移転。食料自給と経済的エンパワーメントの統合。デジタル市場へのアクセス支援。
チリ 都市菜園の振興・整備・登録に関する法案(法案番号 17.433-06、審議中)
2025国振興・基本法提案中チリ共和国チリ下院に議員提出(moción)された法案で、都市菜園(huertos urbanos)の振興・整備・登録について定める。提出者は Mulet、Félix González、Melo、Oyarzo、Saffirio 各議員および Veloso 議員。都市菜園を『都市域内にある最大500㎡の栽培空間で、野菜・果物・薬草・花などを生産し自家消費するためのもの』と定義し、都市菜園の登録制度を設ける。国は食料安全保障・環境教育・都市農業に関する政策を推進するものとされる。運営者は安全の確保と社会的な包摂を進める措置をとることとされ、働き手を雇う際は脆弱な立場の人や高齢者を優先できる。放置され危険な状態にある土地の一時的な利用を認める一方で、そこでの寝泊まりは禁じる。下院の住宅・都市開発・国有財産委員会に付託され、審議・採決・報告に付された。
都市農との関わり: 都市菜園を国の法律で定義し、登録制度を置こうとする、ラテンアメリカでは珍しい国レベルの試み(同地域の制度化はメキシコの州法やペルー・アルゼンチンの市条例など、地方が中心)。とくに『放置され危険な状態にある土地の一時的な利用』を認める条項は、遊休地の暫定利用(meanwhile use)という都市農の中心的な課題を、市の判断ではなく法律で扱おうとするもの。上限500㎡という定義や、雇用で高齢者・脆弱層を優先できるとする規定も、都市菜園を『どこまでが自家消費でどこからが事業か』を線引きする考え方の参考になる。2026年8月時点で審議中であり、成立していない。
シンガポール NParks「Grow and Share」イニシアチブ
2025国公的プログラムシンガポール国立公園局(NParks)が、コミュニティ・イン・ブルーム(CIB)20周年にあわせて2025年に始めた仕掛け。CIB に登録した菜園グループが、自分たちの菜園やその周辺で「園芸に関わる地域向けのイベント」を最低1回開くことを求める。2026年分は1月1日から12月31日までに開いたイベントが対象で、実施報告は2027年1月11日まで。応募要件は、住民委員会・近隣委員会・団体・学校などの支援団体がついていること、企画チームが庭のリーダーを含め5人以上いること、参加者を15人以上見込むこと。イベントは教育、文化行事、健康とウェルネス、サステナビリティ、地域でのおすそ分け、アートの6分野のいずれかに当てはめる。先着300グループには啓発資材と園芸用品の入ったスターターパックとアプリシエーションパックが配られ、参加者には電子証明書が出る。
都市農との関わり: 菜園の区画や資材ではなく「菜園が地域に開く催しを開くこと」に補助と承認を与える設計になっている点が特徴。区画数を増やす政策とは別に、既にある菜園を近隣に開かせる方向の後押しとして参照できる。要件(企画5人以上・参加15人以上・6分野)が具体的で、他都市が同種の制度を組むときの雛形になりうる。
ウェールズ コミュニティ食料戦略(Community Food Strategy、2025年)
2025国食農政策ウェールズ(英国)ウェールズ政府が2025年4月29日に公表した食料戦略。2021〜2026年の施政方針に掲げた公約にもとづき、地元産の食料の生産と供給を後押しする。2025-26年度に200万ポンド超を投じ、2028年3月までの資金を確保した。小規模園芸への助成・研修・計画政策の見直しを組み合わせ、地域主導の栽培の取り組みを支える。自治体への手引きの発出、ウェールズ政府所有地の地域栽培への開放、公有地・民有地の所有者への働きかけも掲げる。2022年以降すべての自治体に広がったローカル・フード・パートナーシップが実施の受け皿となり、実施の監督に新設の大臣諮問グループがあたる。2030年までに公共部門のウェールズ産食料・供給者への支出を5割以上増やす目標を置く。
都市農との関わり: 市民農園法の系譜が「区画を確保する義務」を定めてきた英国で、ウェールズは地域の栽培を食料政策の側から支える形をとった。公有地の開放と自治体向けの手引きが同じ文書に入っているため、団体は「土地を出す根拠」と「自治体に相談する根拠」を1つの戦略から引ける。助成が2028年3月まで確保されている点も、単年度の補助に振り回されがちなコミュニティ菜園にとって計画を立てやすい条件になる。
ブラジル 都市・近郊農業国家政策(PNAU、法律14.935/2024)
2024国振興・基本法ブラジル2024年7月29日に施行されたブラジルの連邦法。都市・近郊での農の振興を国家政策として位置づけ、学校・病院など公的調達との連携、家族・協同型の生産支援、環境教育や有機資源(生ごみ)の循環の普及、専用の信用枠などを定める。連邦・州・自治体・市民社会の協働により分権的に実施される。
都市農との関わり: 市民・家族による都市の農的活動を国レベルで初めて体系的に支援する枠組み。生ごみの循環や直売、地域での食料生産を後押しし、運営者が公的調達や信用支援にアクセスする道を開く。
メキシコ適切で持続可能な食料一般法(LGAAS)
2024国食農政策メキシコ2024年4月18日施行。農村部および都市部住民の生産能力開発を規定する食料政策。特に食料主権と食料安全保障に焦点を当てたもの。2025年4月に政府は「Cosechando Soberanía」プログラムを開始し、都市内の被覆栽培(垂直農業など)インフラに4,188百万ドルを配分する計画を発表。
都市農との関わり: メキシコの23%の新鮮農産物輸入ギャップに対応。都市農業を食料主権達成の重要な手段として位置づける。垂直農業などの被覆栽培への国家投資により、市民参加型の都市農業を支援する枠組みを提供。
タイ都市農業振興政策(2024)
2024国振興・基本法タイ王国タイ政府によるバンコク・チェンマイなどの主要都市における都市農業の振興と持続可能な農業管理促進政策。食糧安全保障と地域経済の強化を目的とした国家戦略。
都市農との関わり: 市民参加型コミュニティガーデンと持続可能な都市農業の推進を通じて、タイの都市部における食糧自給率向上と地域コミュニティの形成を支援する。
農業用地の保全と発展に関する法律(2024年)
2024国農地保全・貸借南アフリカ共和国優良農地を非農業利用から保護。農地の評価・分類制度を確立し、国・州レベルの保護農地を指定。食料安全保障と持続可能な農業発展を促進。2024年12月20日施行、2025年1月29日公表。
都市農との関わり: 市民農業を含む都市農業実践の拠点となる農地を法的に保護。都市部の優良農地確保により、持続可能で参加型の農業活動を支援。
UAE都市農業・食料安全保障国家枠組み(2024-2025)
2024国食農政策アラブ首長国連邦(ドバイ)ドバイ2040年都市マスタープランの一部として都市農業を統合。2051年までに地元食料生産を50%増加、2030年までに30%達成目標。2024年後半に地域コミュニティ参加プログラム開始。生産性農場20%増、有機農場25%増、農業廃棄物50%削減を目指す。2025年リスク基準型食品検査モデル導入。
都市農との関わり: UAEの都市部における食料自給率向上と市民農業の推進。都市マスタープランへの組込みにより、インフラ・政策支援の統合的推進を実現。コミュニティ参加プログラムにより市民の農業実践を支援。
エジプト都市農業成功指数イニシアティブ
2024国食農政策提案中エジプトエジプトにおける都市農業の実装促進を目的とした成功指数の開発。砂漠主体の土地、水不足、農地細分化、輸入依存の構造的課題に対応する政策枠組み。
都市農との関わり: エジプトは食料安全保障戦略に都市農業を限定的にしか統合していない。成功指数は政策決定者に対して都市農業の可能性を示し、実装の指標を提供する。
USDA 都市農業・革新的生産助成金プログラム(2024-2025版)
2024国税制・補助米国米国農務省(USDA)が都市農業と革新的生産に 14.4 百万ドルを投資。計画助成金(初期段階の評価・コミュニティ参画・用地分析)と実装助成金(資本投資・設備・労働力訓練・堆肥施設)を提供。助成額は 10-25 万ドル、期間は 24-36 ヶ月。
都市農との関わり: 米国内の市民参加型都市農業プロジェクト、非営利団体、自治体がアクセス可能。施設整備、労働力育成、堆肥基盤、プログラム拡張を支援。
USDA都市農業・革新的生産投資プログラム(2024)
2024国公的プログラムアメリカ合衆国2024年10月、USDA が全米10団体に対して都市農業・革新的生産支援に900万ドル(約9億円相当)を投資。同年1月には、23州でのコンポスト・食品廃棄物削減事業に1,150万ドルを投資。連邦による直接的な財政支援と能力構築を実現。
都市農との関わり: 都市農業と食料循環システムに対する直接的な連邦投資により、市民農業プロジェクトの実施、技術導入、組織支援が可能に。規模・質の両面での向上が期待される。
ケニア都市農業振興・規制法(2024年)
2024国振興・基本法ケニアケニアが制定した都市農業の振興と規制の枠組みを確立する法律。ナイロビ市郡に都市農業振興諮問委員会を設置し、法令遵守を監督。全17区域での都市農業プロジェクト展開を予定。
都市農との関わり: 東アフリカにおける初の包括的都市農業法。市民参加型農業に対して法的保護と支援制度を提供。
エチオピア農村土地管理・利用告示第1324号(2024年)
2024国農地保全・貸借エチオピアエチオピア農村部における土地利用権を担保として認める革新的な改革。都市農業の金融アクセスを改善することが期待されている。
都市農との関わり: 都市農業の事業性と持続性向上を支援。小規模農業者の資金調達を可能にする制度的枠組み。
ルワンダ農業変革第5次戦略計画(PSTA 5、2024-2029)都市農業部分
2024国振興・基本法ルワンダルワンダの国家農業戦略計画において都市農業を重要な戦略的介入として位置付け。ハイドロポニクス、垂直農法、屋上菜園、キノコ生産など高強度・気候適応的・栄養対応型モデルへの投資を推奨。
都市農との関わり: アフリカの高密度都市(キガリ)における土地制約下での食糧安全保障と栄養改善を実現。先進的な政策モデル。
ギリシャ 共通農業政策(CAP)戦略計画 都市農業支援(2024年)
2024国振興・基本法ギリシャギリシャの EU 共通農業政策戦略計画が都市農業を支援対象に含める。経済危機後の食糧困難層向けの市民農業を正式に振興政策として位置付け。
都市農との関わり: 経済危機後のギリシャの市民農業運動を公式政策として支援。EU 全体の農業振興枠組みに市民農業を組み込む事例。
クレマン・ボーヌ法(食糧主権法)2024年
2024国食農政策フランスフランスの食糧主権と都市農業を支援する法律。集団的都市農業プロジェクトへの直接融資を可能にし、2026年には複数のフランス都市がこの法律に基づいて都市計画に共有庭園を統合。
都市農との関わり: 直接融資により、コミュニティガーデンプロジェクトの実行可能性が向上。都市計画への統合により、長期的な土地利用が保障。フランスの庭園数が2015年の3000から12000超に拡大する契機となった。
スペイン国家食品ロス削減政策(2024)
2024国食農政策スペインスペイン政府が食品ロス削減のため€176.5百万を自治州・都市に配分。学校・企業・病院のカンテーンに調理不可食品のコンポスト化や動物飼料への転換を指示
都市農との関わり: 都市農業と有機資源循環の連携を支援。食品ロスの削減がコミュニティガーデン・コンポスティング事業の基盤となり、有機資源が農業に還元される仕組みを整備
アイルランド 計画・開発法2024 第48条(市民農園・コミュニティガーデンの法定定義と持続可能な地域戦略)
2024国農地保全・貸借アイルランド2024年10月17日にヒギンズ大統領が署名した計画・開発法2024の第48条により、コミュニティガーデンがアイルランドの法律で初めて定義された。計画当局は新たに「持続可能な場所とコミュニティの戦略(Sustainable Places and Communities Strategy)」を策定し、そこに市民農園および政令で定めるコミュニティガーデンとして利用・耕作するための土地の確保を目的として盛り込むことが義務づけられる。あわせて、こうした用途のための土地供給を規制・促進・支援・管理することも検討事項とされる。法律上の定義は、市民農園(allotment)が「1,000平方メートル以下の土地で、主に本人または家族の消費のために野菜や果物を生産する目的で地域住民に貸し出されるもの」、コミュニティガーデンが「自治体から地域住民に貸し出され、食料生産や植物の繁殖のために共同で耕作され、非営利で運営される土地」。施行は大臣命令による段階施行で、この義務は2025年12月31日に発効した。政府は自治体向けのガイダンス文書を出すと約束しているが、当初の目標だった2023年12月を過ぎ、2025年11月時点でもなお作成中とされていた。
都市農との関わり: アイルランドではこれまで市民農園やコミュニティガーデンが法的な位置づけを持たず、確保も自治体の裁量任せだった。この改正で、自治体は計画文書のなかで用地確保の目的を書き込む義務を負うことになり、市民団体が「法律上の根拠」を示して土地の確保を求められるようになった。実際に2026年1月にはコーク市議会がこの義務を受けてコミュニティガーデン・市民農園のための用地を確保する戦略づくりに動いている(同市の既設市民農園はチャーチフィールドの53区画とバリンコリグの84区画)。一方で、コミュニティガーデンの定義が「自治体から貸し出された土地」に限定されているため、民有地や公有地以外で運営される菜園は定義から外れうる点、および政府ガイダンスが未発出で運用の具体像が定まっていない点には注意が必要。
ナイジェリア 国家都市農業プログラム(NUAP)
2024国公的プログラムナイジェリア連邦共和国連邦農業・食料安全保障省が導入した、都市部の世帯を対象とする国の都市農業プログラム。2024年12月4日、同省のアリユ・サビ・アブドゥラヒ農業・食料安全保障担当国務大臣が、大統領夫人室が主催する「Every Home A Garden(どの家にも菜園を)」コンテストの最終審査の場で発表した。大統領夫人の農業支援プログラムの一部だった「Every Home A Garden」と「Young Farmers Club(若手農業者クラブ)」の2事業を同省が引き継ぎ、NUAP のもとで制度として定着させる。大臣は「われわれの国家都市農業プログラムは、これらの取り組みの成果を、すべての人のために制度化する」と述べた。事業費は2025年度予算案に計上され、2025年から始動するとされた。
都市農との関わり: アグリテックや大規模農場ではなく、都市の家庭が自宅で野菜をつくることを国が支援対象に据えた点が、市民参加型の都市農にとって重要。とくに女性と世帯を主な受け手とし、家庭菜園を通じた食生活の改善と食料不安の緩和を目的に掲げている。大統領夫人の事業として単発で走っていた家庭菜園の取り組みを、省庁の恒常的な事業へ移した制度化の例でもある。
モーリシャス 家庭菜園スキーム(Household Gardening Scheme/FAREI)
2024国税制・補助モーリシャス共和国農産業・食料安全保障省が食料農業研究普及機構(FAREI)と組んで運用する、家庭の裏庭での集約的な野菜づくりを後押しする補助制度。栽培設備(小型の防虫ネットハウス、アクアポニクス、小型水耕、垂直栽培など、FAREIが認めた生産方式)の購入費を現金給付で補助する。2024年3月4日付の公示「Household Aquaponic Gardening Scheme」では、購入費の50%・1世帯あたり最大25,000ルピーを先着順で給付し、対象は指定モデルのアクアポニクス設備(水槽・栽培槽・付属品を含む全長7m×1m)とされた。申請は身分証と居住証明の写しを添えて行い、この回の締切は2024年3月29日。以前の枠では補助率75%・上限15,000ルピーだった。申請書は省とFAREIのサイトから入手できる。
都市農との関わり: 都市部の住宅でも実行できる裏庭・ベランダ規模の食料生産を、国が資材費の面から直接支える仕組み。島嶼国で輸入依存の食料構造を家庭側から少しずつ変える狙いがあり、個人・世帯が申請主体になれる点で、団体を前提とした市民農園制度とは性格が異なる。
シエンブラ・トゥ・パティオ(庭に植えよう)家庭菜園推進プログラム
2024国公的プログラムドミニカ共和国農牧開発特別基金(FEDA、Fondo Especial para el Desarrollo Agropecuario)が実施する家庭菜園プログラム。大統領府の広報が2024年7月11日付で公表した。第1期は郡都30市の自治体(30 alcaldías de los municipios cabecera)を対象とし、7月中に果樹苗3,000本以上を家庭の庭向けに配り、300のミニ菜園(minihuertos)をつくる種子を配布する。初回の実施地はサンフアン県のマタヤヤとサントドミンゴのロス・アルカリソス。FEDA所長 Hecmilio Galván は狙いを「各家庭に小さな食料庫を持つ伝統を取り戻すこと(recuperar la tradición de tener una pequeña despensa en cada casa)」と説明している。第1期後の拡大が予定されているが、対象戸数の最終目標と予算額は同発表に記載がない。
都市農との関わり: 対象が庭(patio)という住宅の敷地内で、農地を持たない都市・準都市の世帯がそのまま参加できる。配るものが種子と果樹苗という消耗品・長期作物の組み合わせで、短期の野菜収穫と数年後の果樹収穫を同時に狙う設計になっている。実施主体が農業省ではなくFEDAという基金で、自治体(alcaldías)を通じて配布する点も、ドミニカ共和国で家庭菜園を広げるときの窓口がどこかを示す。ロス・アルカリソスはサントドミンゴ都市圏の人口密集地で、都市部での運用実績がある。
国家食料安全保障戦略2030(カタール)
2024国食農政策カタール自治省(Ministry of Municipality)が策定した国家戦略で、首相シェイク・モハメド・ビン・アブドゥルラフマン・ビン・ジャーシム・アール・サーニが2024年12月に発表した。式典には自治大臣アブドゥッラー・ビン・ハマド・ビン・アブドゥッラー・アル・アティーヤが出席。3つの柱、すなわち「国内生産と国内市場」「戦略備蓄と早期警戒システム」「国際貿易と投資」の下に17のイニシアチブを置く。第1の柱は野菜・生鮮赤身肉(羊とヤギ)・生鮮魚の国内生産を伸ばし、生鮮乳製品と鶏肉の自給を維持することを狙い、近代的で持続可能な技術による生産効率の向上を掲げる。指導原則として健康的な消費習慣の促進、食品の安全と品質、持続可能性、気候変動への適応、実効的なパートナーシップの構築を挙げる。発表日は国営カタール通信(QNA)が12月11日、The Peninsula 紙が12月12日と報じており、出典間で1日ずれる。自給率の数値目標と備蓄月数について、開いた出典では確認できなかった。
都市農との関わり: 戦略の本文で都市農業という語が使われているかは、開いた出典では確認できていない。それでもカタールを収録する意味は、国土の大半が砂漠で人口がドーハ都市圏に集中しているため、「国内生産」の柱がそのまま都市近郊での施設生産の話になる点にある。野菜の国内生産を伸ばすには限られた面積と水で収量を上げるほかなく、近代的で持続可能な技術という表現が指す先は施設園芸と閉鎖環境栽培に寄る。湾岸諸国の都市農業は市民の菜園ではなく国家の食料安全保障政策の下で動くという構図を示す例で、UAEの食料安全保障戦略2051と並べて読める。
USDA『土地・資本・市場アクセス拡大』プログラム(ILCMA)
2023国税制・補助廃止米国(連邦・農務省)施行期間: 2023–2026
新規・零細・条件不利地域の生産者(都市農家を含む)の農地取得や市場参入を支援した連邦助成プログラム。全米約40州のプロジェクトを対象に約3億ドルを措置していたが、USDAが打ち切りを決定し中止。カンザスシティのCultivate KCは農地取得等に充てる250万ドルを失った。
都市農との関わり: 都市農業の土地・資本アクセスを支える連邦助成が事業途中で一方的に打ち切られ、現場に大打撃を与えた最近の失敗事例。
USDA地域食料ビジネスセンター
2023国公的プログラム廃止米国(連邦・農務省)施行期間: 2023–2025
小規模農家や食品事業者が地域の流通・加工インフラを構築するのを支援するため2023年に設けられた連邦のセンター網。USDAが2025年に廃止方針を打ち出し、地域・ローカル食システム支援の縮小の一環として打ち切られた。
都市農との関わり: 都市・地域食システムの基盤支援を担うはずだった連邦制度が稼働間もなく打ち切られた例で、政策の持続性欠如を示す。
バングラデシュ 屋上菜園に対する保有税10%減免(全市法人・自治体)
2023国税制・補助バングラデシュ(全国の市法人・自治体)2023年6月14日、地方自治・農村開発・協同組合省(LGRD)のタジュル・イスラム大臣が、全国の市法人(シティ・コーポレーション)および自治体(ポウロショバ)の区域内で、屋上に菜園をつくった建物所有者の保有税(ホールディング・タックス)を10%減免すると発表した。もともとはダッカ北市法人(DNCC)が2020年に市域向けに打ち出した減免措置で、DNCCからの申請を受けて全国に広げられた。大臣は都市の気温を下げることを目的として挙げている。
都市農との関わり: 屋上での市民の食料栽培に、税の減免という金銭的なインセンティブを国レベルで結びつけた例。ダッカのように屋根が主要な栽培可能面積である都市では、屋上菜園の初期費用に対する現実的な後押しになりうる。一方で、鉢をいくつか置いただけでは足りず、菜園を継続的に維持・管理させる運用が課題として指摘されている。減免の可否は、環境森林気候変動省・農業省・市民社会・都市計画家・環境団体の代表からなる委員会の勧告にもとづいて判断される。
フィリピン国家都市近郊農業プログラム(NUPAP)
2022国公的プログラムフィリピンCOVID-19パンデミック後に復活した国家プログラム。農務省(DA)と複数省庁が連携し、都市・近郊地域の食料安全保障、食品マイル削減、生計創出、健康的なライフスタイル促進を目指す。Quezon City LGUなどの地方自治体と連携し、種子・苗木・道具・スターターキット・温室施設などの支援を提供。
都市農との関わり: 都市農民の生計確保と食料安全保障を直結。2025年4月時点でQuezon Cityだけで1,439都市農地が確立され、43,170人の農民が従事している実績がある。市民参加型農業を国レベルで推進する政策的枠組みの好例。
ベトナム決定150/QD-TTg - 2030年までの都市農業開発戦略
2022国振興・基本法ベトナム2030年までに250,000ヘクタールを目標とする都市農業戦略を確立する国家決定。都市計画・開発プロジェクトへの農業統合を促進。
都市農との関わり: 都市貧困社会層と不利な立場のグループの参加を優先。地区および市レベルでのコミュニティ基盤プログラム管理を含む。
みどりの食料システム法(環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律/令和4年法律第37号)
2022国振興・基本法日本令和4年法律第37号、令和4年7月1日施行。農林漁業に由来する環境への負荷の低減を図る事業活動等に関する計画の認定制度を設ける。生産者向けの「みどり認定」(環境負荷低減事業活動の実施計画を都道府県が認定)と、食品産業など事業者向けの「基盤確立事業実施計画」の認定があり、支援措置としてみどり投資促進税制(対象機械の導入支援)、生産者向けの農業改良資金・畜産経営環境調和推進資金、事業者向けの新事業活動促進資金・食品等持続的供給促進資金がある。
都市農との関わり: 化学肥料に頼らない土づくり(堆肥の利用)や有機農業の拡大を国の制度として後押しする法。都市の小規模な生産者や市民農園の運営主体にとっては、堆肥利用や有機的な栽培の取り組みが公的な認定・支援の対象になりうる枠組みであり、地域の生ごみ堆肥を農地に戻す循環の追い風になる。
マレーシア 隣組(KRT)区域のコミュニティ菜園事業「Kebuniti」
2022国公的プログラムマレーシア(全国の隣組=Rukun Tetangga 区域)国民統合省(Kementerian Perpaduan Negara)が農業・食料産業省(MAFI)と組み、隣組(Rukun Tetangga、KRT)の区域でコミュニティ菜園を開くために3,000万リンギ(RM30 million)を配分した事業。2022年8月7日、スランゴール州の MAEPS で開かれた農業博の花き園の開所式で、ハリマ・モハメド・サディック国民統合相が発表した。全国の KRT は8,330組あり、菜園に適した土地をすでに持つ111組の KRT が最初の実施対象として特定された。集合住宅や住宅地の空間で住民が野菜を育て、団地内で売ることもできる仕組みとしている。
都市農との関わり: 既存の住民自治組織(隣組)を器にして、国の予算でコミュニティ菜園を面的に広げるやり方。マレーシアの都市住民、とくに集合住宅の住人が栽培する場所を確保する手立てとして機能する。土地を持つ組織を先に選んで着手する段階的な進め方も、制度設計の参考になる。
プロジェクトCARE(地域農業レスポンス・エンパワーメント)
2022国公的プログラムバルバドス2022年にパンデミックと供給網の混乱への緊急対応として始まった家庭向け食料生産支援を、2026年9月1日に長期の国民エンパワーメント事業として再始動したもの。所管は農業・食料栄養安全保障省(大臣 Shantal Munro-Knight)、実施はバルバドス農業開発販売公社(BADMC)で、CARDI と土壌保全局が連携する。当初の裏庭菜園向け資材配布に加え、技術研修・気候スマート農法・アクアポニックス・小規模畜産を新たに含める。参加世帯にはブロイラーまたは採卵鶏・ウサギといった家畜、サツマイモの挿し苗・キャッサバ・ヤム・野菜苗などの作付け資材、Farmer Dave モバイルアプリと BADMC 職員による技術支援が渡る。旗艦拠点はセントマイケル教区デーコンズの実証農場で、ブラックベリー羊30頭を置く。支援対象は600世帯、うち400世帯は政府の One Family Programme からの参加。優先されるのは一人親世帯・若年層・社会扶助受給者。今年度中に実証農場を3か所つくり、第4の柱にあたるイノベーション・チャレンジの詳細は2026年11月に公表予定。
都市農との関わり: 裏庭という都市住宅の敷地をそのまま生産の場にする設計で、島嶼国の輸入依存に家庭単位で対抗する。緊急給付から長期プログラムへ性格を変えた事例として読む価値があり、資材配布だけだった段階から研修・アクアポニックス・小家畜へ広げたことで、支援が一度きりの現物給付から技能形成へ移っている。福祉制度(One Family Programme)の対象世帯を農業支援に接続している点も特徴で、食料生産と貧困対策を同じ窓口で扱う設計になっている。デーコンズの実証農場のように都市部に学びの場を置く構成は、区画の狭い都市住民が技術を見て覚える経路をつくる。
アラブ首長国連邦食料セキュリティ戦略2051
2021国振興・基本法アラブ首長国連邦UAE政府が2021年に発表した長期食料セキュリティ戦略。2051年までに国内食料生産を30~40%増加させることを目標に、農業技術スタートアップ、垂直農業ゾーン、屋内農業支援に資金配分。気候変動省が推進。
都市農との関わり: 砂漠・水不足地域での食料セキュリティ確保のため、先進的都市農業技術(垂直・屋内農業)への国家投資。長期的な食料自給化戦略。
マレーシア「ヤング・アグロプレナー・プログラム」
2021国公的プログラムマレーシアマレーシア政府の第12次5年計画(12MP)で2021年9月に導入されたヤング・アグロプレナー・プログラム。次世代による持続可能農業起業を支援し、農業セクターの3.8%成長を実現。スマート農業戦略と連携し、都市・近郊農業への若年起業家育成と支援金提供を実施。食料安全保障と雇用創出を双方向で推進。
都市農との関わり: 若年層の農業参入障壁低減、都市近郊農業への起業支援制度化、持続可能農業への資本流入促進。マレーシアの食料自給能力向上と次世代雇用創出の同時実現。社会起業型都市農業の制度的支援。
マレーシア「社会起業アクション・フレームワーク2030」
2021国振興・基本法マレーシアマレーシア政府が策定した社会起業アクション・フレームワーク2030(SEMy2030)。社会・環境課題の解決に向けた社会起業体育成を目指す。持続可能農業実践を含む複数分野での社会起業支援を規定。都市農業を社会起業の重要領域として明示し、政策的支援と手引きを提供。食料安全保障と社会統合の同時実現。
都市農との関わり: 社会起業型農業の制度化、商業性と社会性の統合、環境課題への創業型アプローチ。マレーシアの包摂的開発戦略における都市農業の位置づけ。持続可能性と起業精神の融合。
英国『Right to Regenerate(再生請求権)』改革案(2021年協議)
2021国農地保全・貸借提案中英国(イングランド)既存の Right to Contest(遊休公有地の処分請求権)を作り替えて「Right to Regenerate」として再出発させるという、2021年1月16日に公表されたイングランドの改革案。個人・事業者・団体が、低利用または空いている土地をより速く簡単に見つけ、購入し、再生できる経路にすることを狙いとする。主な提案は、(1) 保有し続ける説得的な理由がない限り公的機関は低利用地を原則として売却する、(2) 請求者に市場価格での先買権(first right of refusal)を与える、(3) 所有者に近い将来の明確な計画を求め、長く遊ばせた土地は売却させる、(4) 対象にタウン・パリッシュ議会を加える、(5) 未利用の公営住宅・ガレージにも権利を及ぼす、(6) 国務大臣が迅速・公正な裁定者となる、(7) 未利用・低利用の定義を公表して請求の指針とする、(8) 自治体に四半期報告の公表・掲示・請求と結果の一覧のウェブ掲載を求めて透明性を高める、というもの。対象は1980年地方自治・計画・土地法 附則16に列挙されたイングランドの公的機関が保有する土地。協議は2021年3月に締め切られた(公表時の告知では3月13日、協議ページ上は3月20日と記載)。協議ページは「終了した協議(Closed consultation)」と表示され、政府の回答文書は同ページに掲載されていない。
都市農との関わり: 既存の請求権が2014年以降192件中1件しか処分命令に至っていない実情を、政府自身が『より広く効果的に使われるようにする』ために是正しようとした案であり、遊休公有地を市民農園・コミュニティガーデンに転用したい側にとっては本来もっとも直接的な改善策だった。政府の発表文でもコミュニティ空間・地域資産・緑地への転用や庭の拡張が用途例として挙げられている。ただし2026年7月時点で参照できる範囲では、協議は終了した状態のまま政府回答が公表されておらず、提案が法制化されたことを示す資料は確認できない。したがって現時点で実務上使える制度は改革前の Right to Contest のままであり、この改革案は『提案されたが実装が確認できない』ものとして扱うのが正確である。また、請求者に市場価格での先買権を与える設計は、資力のある個人・事業者ほど有利に働きうる点で、資金力の乏しい市民団体が土地を確保する手段になるとは限らない。
ジャマイカ 裏庭菜園キット・プログラム(Backyard Gardening Kit Programme)
2021国公的プログラムジャマイカジャマイカ農業・漁業・鉱業省と農村農業開発公社(RADA)が新型コロナ流行下の2021年に始めた、都市・近郊の世帯に家庭菜園の初期キットを配る事業。キットには各種の種(カラルー、パクチョイ、レタス、トマト、サツマイモなど)とハーブ、育苗トレイ、培土、移植ごて、手鍬、栄養補助資材が入る。第1期は2,500キットで予算1,000万ジャマイカドル、2023年11月に始まった第2期は3,000キットを計画し、記事時点で1,000キットが配布済み。申込はRADAのウェブサイトから行い、受け取った人はRADAと組んで栽培の助言を受け、菜園の進み具合を追跡される。派生する「アーバン・ハーベスト(Urban Harvest)」プログラムでは、都市部を中心に3,000の裏庭菜園キットと垂直水耕栽培装置を配る。RADAは民間企業にも支援を呼びかけている。
都市農との関わり: 土地を持たない都市世帯を対象に、国が資材と技術支援をセットで配る形の都市農業支援。ゾーニングや土地貸借を動かす制度ではなく、コンテナ栽培や垂直利用など「狭い場所で始める」ことを前提に設計されている点が特徴で、RADAの担当者も『裏庭菜園と言うとき、話しているのは小さな空間のこと。コンテナでもいいし、垂直栽培に絞ってもいい』と述べている。受け取った側が指導つきで追跡される仕組みは、単発の配布で終わらせないための設計だが、配布数(数千キット規模)に対して継続率や実際の収穫量を示す公表データは確認できなかった。
「グロウ・イット・ユアセルフ(GIY)チャレンジ」— トリニダード・トバゴ政府の家庭菜園振興事業
2021国公的プログラムトリニダード・トバゴスポーツ・地域開発省が農業土地漁業省と共同で2021年5月7日に立ち上げた、家庭菜園づくりを競技形式で促す全国事業。首相杯ベストビレッジ・トロフィー競技会の後援のもとで行われ、参加者は自分の菜園の様子を動画で提出し、3回の審査を経て評価される。部門は菜園の規模別(小・中・大)のほか、水耕、アクアポニクス、さらに人気投票賞・家族賞・装飾賞・持続可能賞・革新賞などの特別賞が設けられている。賞金総額は30万トリニダード・トバゴドル超。
都市農との関わり: 輸入依存の強い小島嶼国で、政府が「自分で育てる」ことを個人の食料安全保障の入口として制度化した例。土地の供与や条例ではなく、既存の全国的な地域文化競技会(ベストビレッジ)の枠組みに菜園部門を接ぎ木し、賞金と動画審査で参加を集めるという設計が特徴で、初回だけで230人以上が挑戦した。地域コミュニティ振興の器を食の分野に使う手法として参考になる。
ケニア・気候レジリエンス都市農業政策
2020国食農政策ケニア共和国ケニア国が2020年に気候変動・食料セキュリティ対応として策定した都市農業促進政策。特にナイロビの都市スラムにおけるロータップ・サック園芸などの低コスト農業技術の普及を支援。貧困層の自給・生計向上を目指す。
都市農との関わり: 気候脆弱性の高いケニアにおいて、都市農業を気候適応・食料セキュリティの主要戦略に位置づけ。ボトムアップの技術・ナレッジ流布を国策として支援。若年・女性起業家への機会提供。
チェコ自然保護法および都市緑化規定 2020
2020国緑化規定チェコ共和国20,000人以上の住民を持つチェコの都市が2021年末までにコミュニティガーデンを含む都市緑化計画を作成することを要求する環境法。
都市農との関わり: コミュニティガーデン配置を含む都市緑化の参加的計画プロセスを委任。近隣の必要性を考慮することが必須。
フィリピン共和国法11511 - 2020年有機農業法
2020国振興・基本法フィリピン都市有機農業を含む有機農業生産を促進する国家法。有機生産者への認証支援とマーケティング支援を提供。
都市農との関わり: 小規模有機農民協会の規定を含む。女性農民認証とマーケットアクセスプログラムを支援。
ブータン 近郊・都市農業イニシアティブ(PUUF)
2020国公的プログラムブータン王国(農業省農業局/ティンプー・パロ・プナカ・チュカほか)2020年5月、新型コロナウイルス対策の一環として農業局が始めた都市・近郊での野菜生産事業。首都ティンプーでは休閑地26エーカーを農地に転換し、ベガナ・ベベイナ・クシュチェン・チャンタガンなど市域内の土地で、観光・宿泊業を離職した人を中心とする34グループが栽培を担った。第2期は約800万ヌルタムの予算で2023年1月に開始し、菜園を始めたい市民個人には種子と技術指導を、5人以上の若者グループには団体単位の支援を出す2本立てとした。対象はティンプー・プナカ・パロ・チュカに広がり、計約100エーカーの遊休地が貸し出されている。
都市農との関わり: 危機対応で始まった都市農業が、そのまま常設の事業として制度に残った例。行政が遊休地の借り上げと種子・技術指導を担い、市民が生産と販売を行う分担で、収穫物は近隣住民・デスープ研修・寺院(ダツァン)へ売られている。第13次5か年計画(2024〜2029年)では2,000万ヌルタムを投じ、15か所・65エーカーへ広げる計画が示されている一方、継続性と組織的な裏付けの弱さが現地報道で課題として指摘されている。
シンガポール「30 by 30」
2019国食農政策シンガポールシンガポール食品庁(SFA)が2019年に掲げた、2030年までに国内で栄養必要量の30%を生産する食料安全保障目標。駐車場の屋上や建物を活用した都市型農場の整備、補助金・研修による支援が柱。
都市農との関わり: 屋上・遊休空間での食料生産を国策として後押しする例。高度な施設型が中心だが、都市での食料生産を制度的に正当化・支援する枠組みとして参考になる。
シンガポール「30 by 30」都市農業食糧自給戦略
2019国食農政策シンガポール共和国シンガポール政府が提示した「30 by 30」戦略。2030年までに国内野菜・魚・卵の30%を国内生産で賄うことを目標とする国家食糧自給戦略。垂直農業・高度制御環境農業の活用を含む。
都市農との関わり: 先進的な都市農業技術と国策による推進を通じて、限定的な土地を有する都市国家における食糧安全保障と自給率向上を実現する国家戦略。
シンガポール「30 by 30」国家食糧安全保障目標
2019国食農政策シンガポールシンガポール政府の戦略的食糧安全保障政策。2030年までに栄養需要の30%を地元生産で充当する目標。コミュニティ・イン・ブルーム等の都市農業プログラムが中核。屋上農業と都市農業地の確保。
都市農との関わり: 国家規模での都市農業戦略。市民参加型農業を食料安全保障の中核政策と位置付け、1,900以上のコミュニティ庭園を展開。
食品ロスの削減の推進に関する法律(令和元年法律第19号)
2019国食農政策日本第1条(目的)は、「食品ロスの削減に関し、国、地方公共団体等の責務等を明らかにするとともに、基本方針の策定その他食品ロスの削減に関する施策の基本となる事項を定めること等により、食品ロスの削減を総合的に推進する」ことを掲げる。第1章で国・地方公共団体等の責務(第1条〜第10条)、第2章で基本方針等、第3章で基本的施策、第4章で食品ロス削減推進会議を定める。
都市農との関わり: 自治体に食品ロス削減推進計画の策定などの役割を与える法律で、市民向けの生ごみコンポスト講座やフードドライブ、地域の食の循環の取り組みが自治体施策として位置づけられる根拠になる。都市農・コミュニティガーデンの側からは、家庭の生ごみを堆肥として畑に戻す活動を行政と結ぶ接点になる。
都市農地の貸借の円滑化に関する法律
2018国農地保全・貸借日本生産緑地の所有者が、相続税の納税猶予を維持したまま他の農業者や市民・企業に農地を貸せるようにした法律(2018年9月施行)。貸しても自作とみなされ、契約終了時に確実に返還される仕組みを整えた。
都市農との関わり: 農地を持たない事業者・市民団体が、都市部の生産緑地を借りて市民農園や体験農園を開く道を開いた。新規参入の鍵となる制度。
米国農務省 都市農業・革新的生産局(OUAIP)
2018国公的プログラム米国2018年農業法(Farm Bill)に基づき、米国農務省(USDA)内のNRCSに設置された都市農業の専門部局。競争的補助金、都市部のコンポスト・食品ロス削減のパイロット事業、都市農業者向けの政策・支援を担う。
都市農との関わり: コミュニティガーデンや都市農場が連邦の計画・実装補助金を受けられる窓口。自治体・NPO・学校が申請できる。
バングラデシュ「国家農業政策2018」屋上農業条項
2018国振興・基本法バングラデシュバングラデシュの国家農業政策が「専門化農業」の一部として屋上農業を明確に参照。市民に屋上利用による栽培を奨励。しかし、政策過程に支障が生じており、屋上農業が政策アジェンダに組み込まれていない状況が続いている。
都市農との関わり: 屋上農業が正式に国家農業政策の一部として認識されているが、実装とサポートが不十分。市民の屋上ガーデニングへの関心は高いが、既存法制が障壁となっている。
田園住居地域(都市計画法 第9条第8項・第52条/2018年施行)
2018国土地利用・条例日本都市緑地法等の一部を改正する法律により都市計画法に追加された、13番目の用途地域。都市計画法第9条第8項は「田園住居地域は、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする」と定める。国土交通省は、住宅と農地が混在し両者が調和して良好な居住環境と営農環境を形成している地域を、あるべき市街地像として都市計画に位置づけるために創設したものと説明している。あわせて第52条が、田園住居地域内の農地の区域内で土地の形質の変更・建築物の建築・工作物の建設・政令で定める物件の堆積を行おうとする者に市町村長の許可を義務づけた。ただし第52条第2項は、規模が政令で定める基準未満のものは許可しなければならないと定めており、その規模は都市計画法施行令第36条の6により300平方メートルとされている。つまり300平方メートル以上の開発行為等が市町村長の裁量による規制の対象になる。国または地方公共団体が行う行為は許可を要さないが、あらかじめ市町村長と協議しなければならない(第52条第3項)。
都市農との関わり: 従来の用途地域制度は、市街化区域内の農地を「いずれ宅地になるもの」として扱ってきた。田園住居地域は逆に、農地が住宅地のなかに残り続けることを前提に、農地の開発を市町村長の許可制にかけて守る。市街化区域内の農地を保全する仕組みとしては、生産緑地地区(生産緑地法)が個々の農地を指定するのに対し、田園住居地域は面として区域を指定する点が異なり、両者は併用できる。都市農業振興基本法(2015年)と都市農業振興基本計画(2016年)が掲げた「都市の農地は宅地化すべきものから、あるべきものへ」という転換を、用途地域という土地利用計画の側から具体化した制度と位置づけられる。
ウルグアイ 法律19.717号「アグロエコロジーに基づく生産の振興に関する国家計画」(2018年)
2018国振興・基本法ウルグアイ東方共和国2018年12月に国会が可決した法律。アグロエコロジーに基づく生産・流通・消費の仕組みを育てることを「一般の利益」と宣言し、食料主権と食料安全保障の強化、環境の保全、生活の質の向上を目的に掲げる。実施のために名誉委員会(Comisión Honoraria)を設け、国家計画の作成・実施・監督を担わせた。委員会は2019年9月に活動を始め、公的部門7名と市民社会団体の推薦による6名からなる13名(と同数の代理)で構成される。計画の本体は5つの作業部会(生産振興/アクセスと流通/遺伝資源/研修・研究・普及/ガバナンスと社会対話)で練られ、2021年12月に承認された。
都市農との関わり: この法律が対象とする範囲には、家族経営とならんで「都市および近郊の農業生産システム」が明示的に含まれる。計画のもとで掲げられた事業のひとつは、県庁と自治体(municipios)の側からコミュニティ菜園・家庭菜園を生む土地へのアクセスを容易にすること、そして公共の都市空間に生態系の機能を高める農的な場を組み込むことを促すもの。都市農業を単独の制度ではなく、国のアグロエコロジー政策のなかに位置づけた例として参照できる。ウルグアイはこのデータベースに制度が1件も無かった国。
タイ国 都市農業国家イニシアティブ(タイシティファーム)
2017国振興・基本法タイ王国タイ国が2017年以降に推進する都市農業の国家イニシアティブ。バンコク・シティファーム・プロジェクトの成功を受け、全国規模にスケールアップ。タイシティファーム(Thai City Farm)として複数都市でコミュニティガーデンネットワークを構築・拡大。食料セキュリティ、生計向上、コミュニティ結合の統合目標。
都市農との関わり: 市民参加型都市農業の国家戦略。食料・生計・社会資本の多元的価値を国レベルで認識。スケーラビリティと複製可能性を示唆。東南アジアにおける先進的モデル。
市民緑地設置管理計画の認定制度(都市緑地法 第60条〜第68条)
2017国公的プログラム日本都市緑地法(昭和48年法律第72号)第60条以下が定める、民間が設置・管理する市民緑地を市町村長が認定する制度。緑化地域または同法第4条第2項第10号の地区内の土地等に市民緑地を設置し管理しようとする者は、区域と面積、整備する緑化施設・園路・広場などの概要と規模と配置、管理の方法、管理期間、設置および管理の資金計画を記載した「市民緑地設置管理計画」を作成し、市町村長の認定を申請することができる(第60条)。市町村長は、周辺地域で良好な都市環境の形成に必要な緑地が不足していること、区域の面積が国土交通省令で定める規模以上であること、緑化施設の面積割合が省令で定める割合以上であること、管理の方法が省令の基準に適合すること、管理期間が1年以上で省令の定める期間以上であることなどの基準に適合すると認めるときに認定できる(第61条)。認定を受けた事業者には報告の徴収(第63条)と改善命令(第64条)が及ぶ。認定された市民緑地は、地方公共団体または緑地保全・緑化推進法人が、認定事業者との契約にもとづいて管理することもできる(第67条)。
都市農との関わり: 民有地を、所有者以外の主体(NPO・企業・地域団体)が計画をつくって緑地として開き、市町村長の認定を受けて管理できるようにする仕組み。都市の空き地や未利用地をコミュニティガーデンとして開こうとするとき、地権者と利用団体のあいだの取り決めを行政の認定という形で裏づけられる点に意味がある。管理期間が1年以上と定められているため、単発のイベント的な利用ではなく継続的な運営が前提になる。認定を受けた市民緑地は、地方公共団体や緑地保全・緑化推進法人が契約にもとづいて管理を引き受けることもでき、担い手が変わっても緑地が続くようにする設計になっている。
ロシア連邦法 第217-FZ号(市民が自家用の目的で行う園芸・菜園に関する法律、2017年)
2017国農地保全・貸借ロシア連邦2017年7月29日に成立した連邦法で、市民が自家用(собственные нужды)の目的で行う園芸(садоводство)と菜園(огородничество)を規律する。2019年1月1日に施行され、同法第53条により、それまでの1998年連邦法第66-FZ号(園芸・菜園・ダーチャの非営利団体に関する法律)は同日をもって失効した。市民がつくる非営利団体の民事上の地位をロシア民法典に沿って定め直し、従来9種類あった団体形態を「園芸非営利組合」と「菜園非営利組合」の2つに整理した。園芸用・菜園用の農地の区画を持つ人、およびそうした区画を取得しようとする人が、これらの非営利組合を設立できる。区画の用途、共有財産の扱い、組合の意思決定と会費のルールを定める。近年の改正では、家畜衛生・衛生規則を守ることを条件に、区画で家禽やウサギを自家用に飼うことが認められた一方、馬・牛・豚など大型家畜の飼育は、組合内のトラブルを避けるため認められていない。
都市農との関わり: ロシアのダーチャ(郊外の菜園付き小屋)は、世界でも最大級の規模で市民が自家消費用の食べものを育てている実践であり、この法律はその土地と団体運営の根拠にあたる。都市農の観点で重要なのは、区画の所有・利用と、共有部分(道・水道・電気など)を誰がどう負担するかを、非営利の団体自治として法律で組み立てている点。市民農園を「行政が貸し出す区画」として設計する西欧・日本の制度(ドイツ連邦クラインガルテン法、日本の特定農地貸付法など)とは対照的に、所有権を持つ市民の組合が主体になる。2019年施行時に9種類の団体形態を2つへ整理した経緯は、市民の栽培組織を法人格の面からどう扱うかを考えるときの比較材料になる。
都市農業振興基本計画(2016年5月13日 閣議決定)
2016国振興・基本法日本都市農業振興基本法(2015年〈平成27年〉4月22日施行、法律第14号)第9条にもとづき、2016年5月13日に閣議決定された政府の基本計画。都市農業の振興に関する基本方針と、政府が総合的・計画的に講じるべき施策を定める。柱は(1)都市農業を担う人の確保、(2)都市農業のための土地の確保、(3)農業振興策の本格的な展開の3つ。
都市農との関わり: 「宅地化すべきもの」とされてきた市街地の農地を「あるべきもの」へと位置づけ直した基本法を、実際の施策に落とす計画。都市農地の貸借(2018年の都市農地貸借円滑化法)や生産緑地の運用など、市民が都市で農に関わる制度の土台になっている。
都市農業振興基本法
2015国振興・基本法日本都市農業の振興に関する基本理念と国・自治体の責務を定めた基本法(2015年4月施行)。都市農地を「宅地化すべきもの」から「都市にあるべきもの」へと位置づけを転換し、国の基本計画と地方計画の策定を求める。
都市農との関わり: 日本の都市農を後押しする制度群(貸借円滑化法・特定生産緑地など)の上位にある根拠法。自治体の支援策・農地保全の前提となる。
コミュニティ・エンパワメント(スコットランド)法 2015 第9部(市民農園・コミュニティ栽培)
2015国農地保全・貸借スコットランド(英国)スコットランド議会が2015年に制定した法律の第9部。市民農園(allotment)に関する旧法を整理・近代化し、待機者数が一定基準(自治体の保有区画数の50%)を超えた場合に自治体へ市民農園を確保する合理的措置を義務付ける。第119条は各自治体に「食料栽培戦略(Food-Growing Strategy)」の策定を求め、市民農園や地域栽培に使える土地を特定させ、特に社会経済的に不利な地域での提供拡大を計画させる。公正な賃料や余剰農作物の販売も認める。
都市農との関わり: 市民が運営するアロットメントやコミュニティ栽培用地の確保を自治体に法的に義務付け、待機者削減・土地特定を求める点で、市民主導の都市農を直接後押しする土地保有・アクセスの枠組み。
米国USDA都市農業及び革新的生産助成金プログラム
2014国税制・補助アメリカ合衆国USDA農業・食糧省が提供する競争的助成金。コミュニティ庭園、非営利農場が対象。経済困窮地域での食料生産・アクセス向上、職業訓練・教育、ビジネス計画・ゾーニング提案開発。2025年1月に助成金発表。
都市農との関わり: 連邦政府による直接助成。市民農業の資金支援と制度構築を同時に推進。低所得地域への食糧アクセス改善。
家族菜園(ROD)に関する法律(2013年)
2013国農地保全・貸借ポーランド家族菜園(rodzinne ogrody działkowe=ROD)の設置・運営・廃止、区画利用者の権利義務、菜園を運営する団体の仕組みを定める国法。2012年に旧2005年法のうちポーランド菜園連合(PZD)の独占や強制加入規定などが違憲とされたことを受けて制定され、2013年12月13日成立・2014年1月19日施行で2005年法を置き換えた。
都市農との関わり: 全国に約4,600か所・90万区画超とされる家族菜園を支える基盤法で、都市住民が低廉な負担で食物栽培のための土地に安定的にアクセスできるようにする。利用者が自由に団体を結成できる点も含め、市民主導の都市農の土台となる。
インド国家食糧安全法
2013国食農政策インドインド政府2013年可決・署名。食糧安全保障の枠組み。都市農業は補完的食糧生産手段として位置付け。デリーやムンバイなど主要都市での都市農業推進の法的根拠。
都市農との関わり: 国家規模での食料安全保障政策が都市農業を補完的手段として位置付け。市民参加型農業推進の法的根拠。
フィリピン都市農業法(2013年)実装ガイダンス更新(2024年)
2013国振興・基本法フィリピン共和国フィリピン都市農業法(2013年)は、農業省に都市農業と垂直栽培の推進を義務付け、放置政府敷地および建物の農地転用を指示。2024年の実装ガイダンス更新により、地方自治体レベルでの実施が強化。
都市農との関わり: 都市貧困と食料不安への適応的対応として法制度化。国家レベルの推進義務により、地方都市での都市農業基盤を法制度面で支援。公共用地の活用による市民参加型農業の展開。
ギリシャ「市立菜園プログラム」
2012国公的プログラムギリシャ欧債危機に対応する形で2012年から全国的に展開された市立菜園プログラム。自治体が市有地をフェンス付きコミュニティ農園に転換し、失業者・低所得層・シングルペアレント等に区画を提供。土壌改善と給水インフラを整備する。経済危機下での社会的弱者層への食料不安緩和と生計支援を目的とした革新的施策。
都市農との関わり: 欧債危機という特殊な社会経済状況下での緊急的かつ長期的食料安全保障対策。コミュニティ結成と社会的統合を通じた危機克服モデル。都市部の食料不安への体系的対応。
ギリシャ市民庭園支援プログラム(2012年〜)
2012国公的プログラムギリシャギリシャの経済危機対応として実施された市民庭園支援プログラム。2010年の危機以降、市民が公共スペースを農業・社会教育用途に活用する動きが全国に広がった。各自治体が庭園プロジェクトを支援・運営。
都市農との関わり: 食への不安に対する社会的・実践的対応。市民連帯と自律性の回復を促進。栄養アクセスの向上。地域コミュニティの再構築。
都市農業の育成及び支援に関する法律(韓国)
2011国振興・基本法韓国2011年11月22日に公布された韓国の都市農業に関する基本法(法律第11096号)。都市農業を「都市地域の土地・建築物・各種生活空間を利用して農作物を栽培する行為」と定義し、住宅利用型・近隣生活圏型・都心型・農園型・学校教育型の5類型に分類する。農林畜産食品部長官に5年ごとの総合計画策定を、自治体に年次実行計画の策定・実施を義務付け、都市農業支援センターや専門人材育成の根拠を定める。
都市農との関わり: ソウル市など各自治体の都市農業条例の上位にある国家法。市民が住宅・近隣の空閑地・学校・公園などで行うコミュニティ農園や市民農園を制度的に支援する根拠となり、施行後に参加者と地方条例が大きく増えるなど市民主導の都市農を全国に広げた。
英国 ローカリズム法 2011 第5部第3章(地域資産登録・コミュニティによる買取権)
2011国農地保全・貸借英国(イングランド)ローカリズム法2011(2011年法律第20章)の第5部第3章が定める「地域にとって価値のある資産(assets of community value)」の制度。イングランドでは2012年9月21日に施行された。自治体は地域資産の一覧(第87条)を備えなければならず、登録は原則5年間有効。第88条は、その土地の現在または最近の用途が「地域コミュニティの社会的な福祉または社会的な利益(文化・レクリエーション・スポーツを含む)を増進している」こと、かつ将来も付随的でない形で同様の用途に供される現実的な見込みがあることを、登録の要件とする。教区議会・コミュニティ議会や、地域とつながりのあるボランタリー団体・コミュニティ団体が推薦でき(第89〜90条)、要件を満たす推薦は自治体が受理しなければならない。登録された土地の所有者は、自治体への通知を含む一定の要件を満たさない限り処分できず(第95〜96条)、暫定モラトリアムが6週間、完全モラトリアムが6か月、通知から18か月の保護期間が設けられる。第99条は補償、第101条は違反への対処を規定する。
都市農との関わり: 市民農園(allotment)やコミュニティガーデンは、この制度で登録できる資産の典型例のひとつとして挙げられている。登録されると、所有者が売却しようとしたときに6か月のモラトリアムがかかり、地域の団体はその間に買取りの提案を準備できる。借地や暫定利用で運営される都市農園にとって、土地を失う場面で使える数少ない法的な足がかりであり、日本の生産緑地や貸借制度とは異なる「コミュニティ側から土地を守りにいく」型の仕組みとして参照できる。
英国 遊休公有地の処分請求権(Community Right to Reclaim Land / Right to Contest)
2011国農地保全・貸借英国(イングランド)公的機関が保有する未利用・低利用の土地について、誰でも国に対してその処分(売却)を命じるよう請求できるイングランドの制度。根拠となる権限は1980年地方自治・計画・土地法(Local Government, Planning and Land Act 1980)に由来し、2011年に「コミュニティによる土地の取り戻し権(Community Right to Reclaim Land)」としてコミュニティ諸権利の一つに組み込まれ、2014年に中央政府用地の政策と統合されて「Right to Contest」となった。二つの系統があり、Strand 1 は中央政府機関の土地を対象として内閣府が、Strand 2 は地方自治体その他の指定公的機関の土地を対象として住宅・コミュニティ・地方自治省が所管する。請求は「公的処分命令請求(Public Request to Order Disposal)」の様式で提出し、受理されると土地所有者に質問票が送られ、案件は計画審査ユニット(バーミンガム)が処理する。
都市農との関わり: 遊休の公有地を市民が耕作や地域利用に開かせる制度上の入口として、市民農園・コミュニティガーデンの用地確保に関わる。ただし実際の効果はきわめて限定的である。政府自身が公表した数字によれば、Strand 2 では2014年以降に提出された請求192件のうち、145件が却下、10件が取り下げ、27件が有効な請求と認められず、9件が審査中で、処分命令が出されたのはわずか1件である。政府は却下の主な理由を「当該公的機関がその土地について用途または用途予定を持っているか、ローカルプラン上で用途が割り当てられているため」と説明しており、自治体が『将来使う予定がある』と述べれば通りにくい構造になっている。市民側から見れば、請求の提出自体は誰でもできる一方、成功はほぼ見込めず、用地交渉の主たる手段として当てにはできない。
英国ナショナル・ガーデン・スキーム コミュニティガーデン助成(2011年〜)
2011国公的プログラム英国(イングランド・ウェールズ・北アイルランド)慈善団体ナショナル・ガーデン・スキーム(NGS)が2011年から続けるコミュニティガーデン向けの小口助成。1件あたり1,500〜5,000ポンドで、2026年度分の申請は2025年9月15日(月)から10月20日(月)まで受け付けられた。2026年はコミュニティガーデン・ウィーク(3月31日〜4月6日)に合わせて、イングランド・ウェールズ・北アイルランドの118件のプロジェクトに合計294,241ポンドを配分したと発表。原資はジュリア・ラウジング・トラストで、同トラストは2024年に150万ポンドの拠出を約束している。2011年の開始以来の累計は600以上のプロジェクトに約150万ポンド。対象は、孤立した人・障害のある人・社会から取り残された人を支える福祉と園芸のプロジェクト、コミュニティの果樹園、フードバンク、診療所での社会的処方(social prescribing)の取り組みなど。
都市農との関わり: 行政ではなく慈善団体が担う、コミュニティガーデンの運転資金に届く数少ない全国規模の助成。金額は1件数千ポンドと小さいが、資材・水道・保険といった「地味だが無いと回らない」費用に充てられる規模で、毎年100件超に配られている。英国では地方自治体の緑地予算が細るなか、この種の民間助成が実質的な下支えになっている点で、日本の運営者にも比較材料になる。社会的処方(医療機関が園芸活動を処方する仕組み)とつながっている点も特徴。
フィリピン「政府都市農業プログラム」
2010国公的プログラムフィリピンフィリピン政府が実施する全国都市農業プログラム。農業省が地方政府と連携し、都市農業の推進、農民への支援、コミュニティガーデンの設置、訓練プログラムの実施を目指す。都市部での食料安全保障向上と生計支援を目的とする。バックヤード菜園、コミュニティガーデン、垂直農業、屋上菜園など多様な形態を支援。
都市農との関わり: 都市農業を国家食料安全保障戦略の中核に位置づけ、省庁横断的・地方分権的アプローチにより全国展開。市民農業の多様な形態を制度的に支援。東南アジアにおける国家規模の都市農業推進の先例。
ハンガリー KÉK 都市農業振興・支援プログラム
2010国公的プログラムハンガリーハンガリー現代建築センター(KÉK)が 2010 年から展開する都市農業振興プログラム。法的枠組み、現地適応型モデル開発を実施。全国 79 の活動中の市民菜園をリスト化・支援。
都市農との関わり: 中欧における市民農業の体系的支援モデル。法的課題、資金支援、コミュニティ参加の安定性を総合的に対応。
ビッグ・ロッタリー『ローカルフード』助成事業
2008国公的プログラム廃止英国(全国)施行期間: 2008–2012
2008〜2012年に運営された総額約5,750万ポンドの宝くじ基金助成事業。地元産食料へのアクセス改善や都市部の食料生産スペース創出(ロンドンのCapital Growth等)を数百件支援したが、時限プログラムとして2012年に終了し、同規模での更新はされなかった。
都市農との関わり: 英国の都市食料生産を大規模に押し上げた助成が時限措置として終了し、恒久財源化されなかった例。持続財源設計の欠如を示す。
コミュニティ・イン・ブルーム(CIB)
2005国公的プログラムシンガポール国立公園局(NParks)が2005年に開始した、全国規模のコミュニティ・ガーデニング推進プログラム。住宅団地・学校・団体などでの市民の園芸活動を、助言・資材・表彰などで支援する。あわせて公園内の貸し農園(アロットメント・ガーデン)も各地に拡大している。
都市農との関わり: 土地の限られたシンガポールで市民のコミュニティ農を可能にする中心的な公的枠組みであり、食料自給を目指す国家目標『30 by 30』を市民参加の側面から補完する。
シンガポール「コミュニティ・イン・ブルーム」(緑化推進プログラム)
2005国公的プログラムシンガポールシンガポール国家レベルの緑化推進プログラム。2005年開始。都市農業を食料生産・生物多様性向上・コミュニティ参加の手段として活用。国家食料安全保障戦略「30 by 30」(2019年)に組み込まれ、30年までに国内食料消費の30%を自給する目標を支援。
都市農との関わり: シンガポールの食料安全保障戦略における都市農業の戦略的位置づけ。高度都市国家での食料自給向上の実例。国家食料政策と市民参加型農業の統合。
ジンバブエ 都市・近郊農業の規制枠組み(ハラレ等)
2003国その他ジンバブエ(ハラレ市ほか)多数の住民が食料生産に頼るなか、2003年には都市農業を一定程度保護する法整備もあったが、自治体の条例(バイローズ)は依然として都市農業を禁じ、作物の刈り取りなど取り締まりが繰り返された。実効的な支援政策は根付かず、政府は2025年に都市・近郊農業の禁止を再度打ち出した。
都市農との関わり: 保護的立法があっても条例と執行が都市農業を否定し続け、最終的に禁止へ回帰した例。制度の不整合と政策失敗の教訓事例。
コロニヘーヴ法(Kolonihaveloven)
2001国農地保全・貸借デンマーク2001年6月7日の法律第476号。コロニヘーヴ(市民菜園)区域を都市住民のレクリエーションと余暇活動の重要な基盤と位置づけ、2001年11月1日より前から使われている区域を原則『恒久区域』として保護する。恒久区域は『重大な公共上の必要』がない限り廃止できず、5区画以上の菜園と共用地からなる区域を対象に、通年居住の禁止などの枠組みも定める。
都市農との関わり: 開発圧力から市民菜園の土地を国法で恒久的に守る、世界でも数少ない例。既存の菜園を『守る』法制のモデルとして参照される。
デンマーク家庭菜園法(アロットメント法)2001年
2001国農地保全・貸借デンマークデンマークの家庭菜園文化を保護・強化する法律。所有権確立により、デンマークの庭園文化の消滅を防止。現在、約60000のアロットメント庭園が存在。19世紀後半の工業化に伴う公有地利用の伝統を現代に継続。
都市農との関わり: 長期的な土地利用を確保。市民の庭園文化を法的に保護。都市コミュニティの福祉とレクリエーション機会を保障。
食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法/平成12年法律第116号)
2000国食農政策日本第1条(目的)は、「食品循環資源の再生利用及び熱回収並びに食品廃棄物等の発生の抑制及び減量に関し基本的な事項を定めるとともに、食品関連事業者による食品循環資源の再生利用を促進するための措置を講ずることにより、食品に係る資源の有効な利用の確保及び食品に係る廃棄物の排出の抑制を図る」ことを掲げる。第2章で基本方針、第3章で食品関連事業者の再生利用等の実施、第4章で登録再生利用事業者、第5章で再生利用事業計画を定める。
都市農との関わり: 生ごみ・食品廃棄物の肥料化(堆肥化)を「再生利用」として法律上に位置づけた法。地域のコンポスト事業者を「登録再生利用事業者」として制度に組み込む枠組みがあり、市民の生ごみ堆肥化や、堆肥を市民農園・コミュニティ農園に戻す取り組みの土台になっている。
キューバ 都市・郊外農業国家プログラム(オルガノポニコス)
1997国公的プログラムキューバ(ハバナ中心)1987年に始まったオルガノポニコス運動を基盤に、1997年に「都市農業運動」として全国的に組織化。農業省が集約型有機菜園を規制・課税し、オルガノポニコスの資格を管理する。2009年に郊外農業を加え、29のサブプログラムから成る国家プログラムへ発展した。
都市農との関わり: 経済危機下で都市住民が主体的に食料を生産する仕組みを国家が制度化した希少例で、市民参加型都市農業の到達点として参照される。
ポーランド農地保護法(1995年、2021年11月改正)
1995国農地保全・貸借ポーランド農地を非農業的利用への転換から保護する国家法。2021年11月改正により、農民は農地の30%までの農場建屋で非農業的活動を実施可能。
都市農との関わり: 改正は小規模農業企業を可能にする農場多角化を支援。農地保全による周辺農業を間接的に支援。
生産緑地法(生産緑地地区・特定生産緑地)
1991国農地保全・貸借日本市街化区域内の農地を「生産緑地地区」に指定し、営農継続を条件に固定資産税の軽減と相続税納税猶予を認める制度(1991年の改正で現行の枠組み)。30年の営農義務が満了する『2022年問題』に対し、10年延長の特定生産緑地制度(2017年改正)が設けられた。
都市農との関わり: 日本の都市農地の大半を支える税・土地利用制度。多くの市民農園・体験農園・貸し農園がこの枠組みの上に成り立つ。
プロウエルタ国家プログラム(ProHuerta)
1990国公的プログラムアルゼンチン1990年に始まったアルゼンチンの国家プログラム。社会開発担当省と国立農牧技術院(INTA)が共同で運営し、食料安全保障と食料主権を目的に、家族・学校・地域(共同)のアグロエコロジー菜園を支援する。種子・果樹苗・農具の配布、技術支援、食・環境教育を行い、全国の約8割の自治体で展開し約300万人に届くとされる。
都市農との関わり: 都市・近郊・農村の住民が自分たちで健康的で多様な食を生産できるよう支える基盤的な公的制度で、市民・地域主導のアグロエコロジー菜園に種子・知識・技術を継続的に供給する、ラテンアメリカを代表する都市農支援策のひとつ。
市民農園整備促進法
1990国振興・基本法日本市民農園の整備を適正かつ円滑に進めるための法律(平成2年法律第44号)。市町村が市民農園区域を指定し、開設者(自治体・農協・農家など)が整備運営計画の認定を受ける仕組みを定め、農地法・都市計画法の特例を設ける。休憩施設などの附帯施設を含む「市民農園」を法的に位置づけ、健康的でゆとりある国民生活と良好な都市環境の形成を目的に掲げる。
都市農との関わり: 特定農地貸付法と並ぶ日本の市民農園制度の二本柱で、施設を備えた本格的な市民農園を開設する際の基本ルート。都市住民が農に触れる場を全国に広げた基盤法。
特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律(特定農地貸付法、平成元年)
1989国農地保全・貸借日本区画分けされた小面積の農地を短期間貸し付ける場合について、農地法上の特例を設けた法律。農地法は本来、農地の権利移動に厳しい許可制を敷いているため、そのままでは自治体や農協が市民に小区画を貸すことが難しかった。本法により、地方公共団体および農業協同組合が開設する市民農園について農地法の特例が認められ、市民農園の法的な土台ができた。平成17年(2005年)の改正により、地方公共団体・農協以外の者(農業者、企業、NPO等)による市民農園の開設が可能になった。市民農園に関わる日本の法制度は、本法(平成元年)、市民農園整備促進法(平成2年)、都市農地の貸借の円滑化に関する法律(平成30年)の3本で構成される。
都市農との関わり: 市民農園を開設しようとする自治体・農協・農業者・企業・NPOにとって、農地法の許可を経ずに小区画を貸すための直接の根拠法であり、開設の実務は特定農地貸付規程の作成と貸付協定の締結を通じて行う。一方で、この制度が整備されて35年以上が経ってもなお、市民農園の総面積は増えていない。農林水産省の市民農園開設状況調査によれば、面積は平成26年度の1,402ヘクタールをピークに令和6年度は1,284ヘクタールへ約8%減り、地方公共団体が開設する農園は平成24年度の2,396から令和6年度の1,977へ減っている。法的な貸付の道が開かれていることと、実際に市民農園が増えることは別問題であり、担い手は自治体から農業者・企業・NPOへ移りつつある。
英国 汚泥(農地利用)規則 1989(SI 1989/1263)
1989国その他英国下水汚泥を農地に施用する際の条件を定める英国の規則(1989年統一法定文書第1263号)。第3条は、要件を満たさない限り汚泥を農地に用いること(またはそれを知りながら許すこと)を禁じる。要件には、附則1に従った汚泥の分析と附則2に従った土壌の分析・評価、専用地以外での元素添加量の年平均上限および土壌中濃度の上限、土壌pHを5未満にしないこと(第3条第5項)、そして植物の養分要求に見合った施用を行い土壌と水質を保護することが含まれる。第3条第6項は「果樹以外の果実または野菜の作物が、施用の時点でその土壌において生育中または収穫中であってはならない」と定める。汚泥の生産者には登録簿の作成と情報提供が義務づけられている。
都市農との関わり: 「下水由来の資材を食用作物を育てる土に入れてよいか」という、都市の資源循環の核心にある問いに、英国が1989年から置いている線引き。野菜が生育・収穫中の土壌への施用を明確に禁じ、土壌分析と重金属の上限、pH管理を前提条件にしている点で、市民のコンポスト実践にも参照される考え方の枠組みになる。一方で、この規則が想定するのは事業としての農地施用であり、市民農園・コミュニティガーデンでの少量利用や、市販の汚泥由来培養土の家庭での使い方までは直接カバーしていない。また規制対象は重金属と病原体が中心で、近年問題になっているPFASやマイクロプラスチックは1989年の枠組みには入っていない。
キューバ 都市・近郊・家族農業国家プログラム
1987国公的プログラムキューバ1987年に始まったキューバの国家プログラム。都市内外の遊休地でオルガノポニコ(有機培土の菜園)や小区画の家族菜園を広げ、アグロエコロジーに基づく食料生産を全国で組織する。現在は200万ha超・14万超の近郊農場に及ぶとされる。
都市農との関わり: 経済危機下で市民・家族による都市農を国家的に制度化した先駆例。遊休地の活用、有機・無農薬栽培、地産地消を組織的に支え、世界の都市農業政策の参照点となっている。
連邦クラインガルテン法(Bundeskleingartengesetz)
1983国農地保全・貸借ドイツクラインガルテン(市民菜園)の賃料・利用・解約保護を全国的に定める連邦法(1983年制定、1994年最終改正)。1区画は原則400㎡以下、小屋は24㎡以下で居住は不可。区画の少なくとも3分の1を果樹・野菜の栽培に充てることを求める。
都市農との関わり: 約89万区画・44,000haに及ぶドイツの市民菜園を、低廉な賃料と強い借主保護で支える土台となる法律。都市の市民農の安定的な基盤を提供する。
クラインガルテン法(オーストリア連邦法)
1958国農地保全・貸借オーストリア1958年12月16日制定の連邦法(BGBl. Nr. 6/1959)。クラインガルテン(原則120㎡超〜650㎡、非営利の利用・レクリエーション目的)の賃貸借契約と菜園団体の法的地位を規律する。期間の定めのある契約は最低10年とし、又貸しを前提とする総賃貸借(Generalpacht)の相手方を自治体・菜園団体等に限定するなど、強い借主保護を定める。ウィーン州のクラインガルテン法など州法が補完する。
都市農との関わり: ドイツの連邦クラインガルテン法と並ぶ、市民菜園の賃借を国レベルで保護する中欧の代表的法制。ウィーンなどの都市で菜園文化が続く法的土台となっている。
英国 市民農園法 1950(Allotments Act 1950)
1950国農地保全・貸借英国(イングランド・ウェールズ)1950年に制定された英国の市民農園(アロットメント)法(1950 c. 31)。全15条と附則1からなり、大きく「市民農園」(第1〜11条)、「契約上の制限の廃止」(第12条)、「補則」(第13〜15条)に分かれる。第1条は1922年市民農園法の定める借地の解約予告期間を6か月から12か月に延長し、予告は当年の4月6日以前または9月29日以降に満了するものでなければならないと定める。第2条以下は、借地終了時の作物・厩肥に対する借主への補償、立退き(disturbance)に対する補償、土地の劣化に対する貸主への補償とその相殺の仕組みを置き、コテージ・ホールディングや戦時中の市民農園を適用除外としている。第12条は、鶏とウサギの飼育を禁じる契約上の制限を廃止した。
都市農との関わり: 市民農園の借主の地位を強くした法律で、区画を耕す市民が予告なく突然追い出されないための最低限の期間と、作物や投じた労力に対する補償を国の法律として保障している。日本でいえば市民農園の利用者保護にあたる部分を、借地法の枠組みで手当てした例。第12条が家庭での鶏・ウサギの飼育を禁じる契約条項を無効にした点は、都市の住宅地で小さな畜産を営む自由を法律が明示的に開いた古い例として参照できる。
スコットランド 市民農園法 1950(Allotments (Scotland) Act 1950・2018年廃止)
1950国農地保全・貸借廃止スコットランド(英国)施行期間: 1950–2018
1950年制定(1950 c. 38、14 Geo 6)、適用範囲はスコットランドのみ。市民農園(allotment gardens)の借り手保護と補償を厚くした法律で、条文の並びは、明け渡し通知期間の延長(第1条)、作物・堆肥に対する補償の制限撤廃(第2条)、立ち退きに伴う借り手への補償(第3条)、土地の劣化に対する貸し手の補償請求権(第4条)、補償と賃料の相殺(第5条)、戦時中の市民農園に関する規定(第6条)、1922年法の規定の適用(第7条)、1922年法第1条の改正(第8条)、自治体の市民農園供給義務の制限(第9条)、自治体が貸す市民農園の賃料(第10条)、市民農園に関する情報提供と表彰(第11条)、費用と収入(第12条)、解釈(第13条)、略称・引用・適用範囲(第15条)となっている。2018年4月1日に廃止され、現在はコミュニティ・エンパワメント(スコットランド)法2015 第9部が代わっている。
都市農との関わり: このDBは既に、後継制度であるコミュニティ・エンパワメント(スコットランド)法2015 第9部を収録している。その前に68年間動いていた制度がこれで、廃止された制度をあえて残すことで「何が引き継がれ、何が捨てられたか」が読める。1950年法の中心は借り手の補償(作物・堆肥・立ち退き)だったのに対し、2015年法の中心は自治体側の供給義務(待機者名簿と提供期限)に移っている。市民農園制度を「借り手の権利を守る法」として設計するのか「自治体に供給を義務づける法」として設計するのかという分岐点が、同じ国の新旧2法として並ぶ点で、日本の市民農園整備促進法・特定農地貸付法を読み比べる材料になる。
廃止理由: コミュニティ・エンパワメント(スコットランド)法2015(asp 6)第142条第1項および附則5により、2018年4月1日をもって全部廃止された(施行はS.S.I. 2017/458 第2条・附則)。同法第9部が市民農園に関する規定を全面的に置き換え、自治体に待機者名簿の管理と一定期間内の区画提供を義務づける現行制度へ移行したため。
米国 戦勝菜園プログラム(Victory Gardens, 第二次世界大戦)
1941国公的プログラム廃止アメリカ合衆国施行期間: 1941–1945
真珠湾攻撃直後の1941〜42年、農務長官クロード・ウィカードの主導で始まった全国的な家庭・共同菜園運動。商業野菜・包装・輸送の需要を減らす戦時施策として、ポスターや手引きで市民の自給生産を促した。第二次大戦終結後に国家プログラムとしては終了した。
都市農との関わり: 国家主導の大規模な市民参加型都市・家庭農業の歴史的到達点であり、戦後に廃止された『失われた/終了した』政策の代表例。
英国 土地入植協会(Land Settlement Association、1934〜1983)
1934国公的プログラム廃止英国施行期間: 1934–1983
1934年に英国で設立された、失業した工業労働者の再定住のための国の枠組み。プランケット財団とカーネギー財団の支援を受け、イングランド北東部やウェールズなど不況地域の失業者を農地に再定住させることを目的とした。1934年から1939年にかけて20の入植地に1,100の小規模農地(small-holding)が設けられ、1937年以降は失業男性向けに約0.5エーカーの区画からなる「コテージ・ホームステッド」型の入植地が5か所つくられた。1983年に解散し、資産は民営化された。解散時点で協会はイングランドの国産サラダ野菜の約4割を生産していたとされる。
都市農との関わり: 都市の失業者に土地と住まいを与えて生計を立てさせるという発想が、国の事業として半世紀続き、そして終わった記録である。生産面では相応の規模(解散時点でイングランドの国産サラダ野菜の約4割)に達していたにもかかわらず組織そのものは存続しなかった点が重要で、「生産量が出ていること」と「事業体として続くこと」が別問題であることを示す。ただし解散の理由は今回参照した出典には書かれておらず、財政・政策転換・運営上の問題のいずれが決定的だったかは本エントリでは断定できない。制度の終わり方を検討する際は一次資料(政府文書・議会記録)にあたる必要がある。
廃止理由: 1983年に協会は解散し、保有していた入植地の資産はすべて民営化された。残余資産は元入植者の支援と園芸教育の振興を目的とする LSA Charitable Trust に移された。出典(Wikipedia の記述)では解散に至った理由そのものは明示されていない。
北アイルランド 市民農園法 1932(Allotments Act (Northern Ireland) 1932)
1932国農地保全・貸借北アイルランド(英国)北アイルランド議会が1932年に制定した市民農園(allotments)法(1932年第17章)。地方当局に、市民農園を供給するために土地を借り受けて使う権限を与える(第1条「Power of local authority to take on lease and use land for provision of allotments」)。以下、市民農園の貸し出しに関する規定(第2条)、借り手に適用される条件(第3条)、肥料・種子・農具の供給(第4条)、規則を定める地方当局の義務(第5条)、占有の回復と未払い金の取り立て(第6条)、市民農園を供給する団体を地方当局が支援する権限(第7条)、市民農園への損害に対する罰則(第8条)、略称(第9条)を置く。第8条から第10条および第12条は後の法律で廃止されているが、法自体は現在も効力を有し、legislation.gov.uk 上でも「現時点で未反映の効力(outstanding effects)は確認されていない」とされている。
都市農との関わり: 英国本土の市民農園法制(1908年小自作農地・市民農園法、1922年・1925年・1950年の各市民農園法)は既にこのDBに収録しているが、北アイルランドは別の議会が別の法律を持っている。地方当局が「所有していない土地を借りて」市民農園に転用できる権限(第1条)と、市民農園を供給する民間の団体を当局が支援できる権限(第7条)を明文で置いている点が、日本の特定農地貸付法・市民農園整備促進法と読み比べるうえで示唆的。肥料・種子・農具の供給(第4条)まで当局の役割として書き込まれているのは、1930年代の不況期に食料自給の手段として市民農園が位置づけられていたことをうかがわせる。
英国 小自作農地・市民農園法 1926(Small Holdings and Allotments Act 1926)
1926国農地保全・貸借英国(イングランド・ウェールズ)1926年制定(1926 c. 52、16 & 17 Geo 5)。1908年の小自作農地・市民農園法を土台に、小自作農地(small holdings)の供給と資金面を整えた法律で、3部構成をとる。第1部が小自作農地(供給の義務と権限、土地の取得、規則、州議会による小自作農地購入資金の貸付、建設に関する規定)、第2部が雑則(定義と土地取得手続の改正、借り手による買取りと土地売却に関する権限)、第3部が総則(廃止規定と略称)。中心は「小自作農地を供給する義務と権限」で、州議会が貸付を通じて小規模農地の取得を助ける仕組みと、その運用の枠組みを定める。legislation.gov.uk では現在も効力を有し、未反映の効力(outstanding effects)は確認されていない。
都市農との関わり: このDBには1908年法・1922年法・1925年法・1950年法が既にあるが、1926年法はそのあいだを埋める。市民農園(allotments)そのものより「小自作農地」=自作を志す人に小さな農地を手当てする仕組みに軸足があり、州議会が購入資金を貸し付けるという金融面の手当てを法律に書き込んでいる点が特徴。土地を『貸す』だけでなく『買えるようにする』という選択肢を公的機関が用意した例として、区画の貸付が中心の日本の市民農園制度と対照的で、都市周縁で農地を持ちたい市民をどう支えるかという論点の別解になっている。
アイルランド 土地取得(市民農園)法 1926(Acquisition of Land (Allotments) Act 1926)
1926国農地保全・貸借アイルランド「都市部の地方自治体が市民農園(allotment)用の土地を提供できるようにする法律」(1926年3月6日)。ここでいう allotment は、1/4 statute acre(約1,012m²)を超えない土地で、個人が主に自分と家族が食べる野菜をつくるために貸し出される(または貸し出す予定の)区画と定義される。対象となる自治体は county borough・borough・urban district の議会と town commissioners。住民からの申し出または自らの判断で市民農園への需要があると認め、かつ賃料等でかかる費用を回収できる見込みがあると判断したときに、用地を提供する決議ができる。合意による取得のほか、努力しても十分な土地を得られない場合は強制取得も可能だが、いずれの場合も取得できるのは5年を超えない期間に限られ、強制取得の賃料・条件・補償はアイルランド土地委員会が定める。取得後は市民農園として貸し出す義務があり、貸付対象者の資格や、応募者から不当な優遇なく選ぶ方法などを規則で定められる。地主が建築・鉱業その他(農業以外の)産業目的で土地を必要とする場合は3か月前の通知で返還を求められるが、4月1日から10月31日のあいだに返還する場合、地主は各区画の借り手に対し生育中の作物・投じた労力・施した肥料への補償を支払わなければならない。
都市農との関わり: アイルランドで自治体が市民農園用地を確保するための土台となった法律。取得できる期間が最長5年に限られており、借地の不安定さを制度が最初から抱えている点が、都市農の土地問題を考えるうえで示唆的である。DB に収録済みの英国「小自作農地・市民農園法 1908」やスコットランド・北アイルランドの各市民農園法と並べて読むと、島全体の市民農園法制の系譜が見える。作物・労力・肥料への補償規定は、暫定利用(meanwhile use)の農園で耕作者をどう守るかという、いま各国で議論されている論点の古い先例でもある。
英国 市民農園法 1925(Allotments Act 1925・法定市民農園の処分制限)
1925国農地保全・貸借英国(イングランド・ウェールズ)英国の市民農園に関する法律(15 & 16 Geo 5 c.61)。中心となる第8条は、自治体が市民農園のために取得した土地について「大臣の同意なしに、市民農園以外の目的で売却・充当・使用・処分してはならない」と定める。大臣の同意は自動的なものではなく、「当該自治体の行為によって立ち退かされる市民農園利用者のために十分な措置が講じられること、またはそうした措置が不要もしくは合理的に実行不可能であること」を大臣が認めた場合にのみ与えられ、大臣はさらに条件を付すこともできる(1931年および1993年の立法により文言が改正され、一部の大臣同意規定は廃止されたが、保護の原則は維持されている)。このほか、都市計画(town-planning scheme)における市民農園の確保(第3条)、将来の市民農園のための土地取得(第5条)、新設市民農園の課税評価(第10条)を定める。legislation.gov.uk 上では現在も有効。
都市農との関わり: 都市農の最大のリスクである「土地を取り上げられること」に、事前の行政的チェックを噛ませた制度。自治体が市民農園用地を再開発や売却に回そうとすれば、原則として大臣同意という手続きを通らなければならず、しかも立ち退く利用者への代替措置が要件になる。土地保有の不安定さ(tenure insecurity)に法制度でどう応えうるかを示す数少ない実例である。ただし限界も明確で、(1) 保護されるのは自治体が市民農園目的で取得した「法定市民農園」に限られ、民有地を借りた区画や暫定利用の菜園は対象外、(2) 大臣は「代替措置は不要または合理的に実行不可能」と判断すれば同意でき、実際に同意が下りて敷地が失われる例もある、(3) 100年前の枠組みのため、近年の英国では市民農園の待機者数や区画の減少といった問題を条文だけでは止められていない。
英国 市民農園法 1922(Allotments Act 1922)
1922国農地保全・貸借英国(イングランド・ウェールズ)市民農園(allotment garden)の借地人保護を定めた英国の法律(12 & 13 Geo 5 c.51)。第1条は借地の終了方法を制限し、地主が一方的に終わらせる場合は「6か月以上前の解約予告で、その年の4月6日以前または9月29日以降に満了するもの」によらなければならないと定める。第2条は明け渡し時の補償を定め、通常の耕作の過程で生育中の作物、施用した肥料について補償を受けられる。一般の allotment については、借地人が自ら用意し植えた果樹・果樹低木や、地主の同意を得て行った施設整備も補償の対象となり、借地終了前に果樹・低木を撤去する権利も認められる。ほかに補償の算定と回収(第6条)、王領地への適用(第7条)、強制取得規定の改正(第8条)、未使用地への立入権限(第10条)などを置く。legislation.gov.uk 上では現在も「未処理の効力(outstanding effects)なし」として有効。
都市農との関わり: 市民が借りて耕す区画の「借り手側の立場」を法律で定めた古典的な例で、日本の市民農園制度や各国のコミュニティガーデンの借地条件を比較する際の基準になる。実務上の意味は、(1) 収穫期をまたいで突然追い出されない予告期間、(2) 立ち退き時に生育中の作物・施肥・果樹の投下費用が補償される、という2点にある。ただし補償は「通常の耕作の過程」で生じたものに限られ、地主の同意なしに設けた小屋や設備は対象外になりうる。また果樹などの撤去権は借地人が自力で撤去することを前提としており、実際に費用を回収できるかは別問題である。1世紀前の法律で用語も古く、条文だけでは現在の運用(自治体の細則や賃料水準)は分からない。
スコットランド 市民農園法 1922(Allotments (Scotland) Act 1922・2018年廃止)
1922国農地保全・貸借廃止スコットランド(英国)施行期間: 1922–2018
1922年制定(1922 c. 52、12 & 13 Geo 5)、適用範囲はスコットランド。第一次大戦後に広がった市民農園を制度として整理した法律で、市民農園の借地関係の終了(第1条)、明け渡し時の補償(第2条)、王領地への適用(第3条)、退去する前借り手に補償を支払った借り手の権利(第4条)、市民農園の借地に対する制限(第5条)、市民農園用に借り上げた土地に関する規定(第6条)、共同放牧地に関する規定(第7条)、市民農園のための土地の強制取得に関する規定の改正(第8条)、未占有地への立入権(第10条)、土地の返還時に生じる争いの裁定(第11条)、強制取得の通知期限(第13条)、当局が市民農園用に土地を貸す権限(第14条)、市民農園へのアクセス(第15条)、市民農園の課税(第17条)、解釈(第19条)、略称と適用範囲(第21条)を置く。第9条・第12条・第16条・第18条・第20条は後の法律で削除されている。1950年法(本DB収録)とともに2018年4月1日に廃止された。
都市農との関わり: 共同放牧地(common pasture)の扱いや未占有地への立入権など、スコットランド固有の土地事情を反映した条文を含む点が、イングランド・ウェールズの市民農園法(1908年・1922年・1925年・1950年、いずれも本DB収録)との違いとして読める。市民農園を「借地関係」として設計した1920年代の英国型モデルの原型で、借り手が退去するときの補償、前借り手への補償を肩代わりした借り手の地位、強制取得の手続といった論点が、100年後のいまも市民農園制度の設計で繰り返し問題になる。2018年に廃止され、現在のスコットランドはコミュニティ・エンパワメント法2015 第9部で運用されている。
廃止理由: コミュニティ・エンパワメント(スコットランド)法2015(asp 6)第142条第1項および附則5により、2018年4月1日をもって廃止(legislation.gov.uk の注記は「Act repealed (1.4.2018) by Community Empowerment (Scotland) Act 2015 (asp 6), s. 142(1), sch. 5」)。同法第9部にスコットランドの市民農園制度が一本化されたため。
市民農園・小作地令(Kleingarten- und Kleinpachtlandordnung, KGO 1919)
1919国農地保全・貸借廃止ドイツ(ワイマール共和国)施行期間: 1919–1983
1919年7月31日にワイマール国民議会が採択したドイツ初の市民農園保護法。西ドイツでは1983年まで、東ドイツでは1956年まで有効だった。1979年に連邦憲法裁判所が一部規定を違憲と判断したことを契機に、1983年の連邦市民農園法(BKleingG)へ置き換えられた。
都市農との関わり: 現行の市民農園法制の原型であり、廃止・後継法への置換の経緯が、都市農業の借地権保護制度の歴史的変遷を示す。
英国 土地入植(便宜)法 1919(Land Settlement (Facilities) Act 1919)
1919国農地保全・貸借英国(イングランド・ウェールズ)第一次世界大戦後の英国で、小規模農地(small holdings)と市民農園のための土地取得・管理を進めやすくした法律(9 & 10 Geo 5 c.59)。1908年の小自作農地・市民農園法を改正し、州議会(county council)が小規模農地・市民農園のために土地を取得・管理する権限、土地への立入、労働者への補償、教会禄地(glebe land)の売却などを定めた。legislation.gov.uk では法律全体としては現在も有効とされる一方、第1条、第3〜5条、第7条、第10条、第14〜15条、第18条、第20条、第24条、第26条、第29〜30条、第33条など多数の条文が個別に廃止されており、現在残るのは立入・労働者補償・教会禄地売却・市民農園管理に関する規定が中心である。
都市農との関わり: 戦後の失業・復員対策として国が土地を用意する枠組みを作った例で、市民農園が「福祉・雇用政策」として扱われた時代の制度設計が読み取れる。事業者・自治体にとっての実務的な使いどころは現在ほとんど残っておらず、むしろ「制度は廃止されないまま条文だけが削られていき、実効性が空洞化する」典型として参照する価値がある。条文の多くが個別に廃止された結果、この法律を根拠に何ができるかは条文一覧を確認しないと判断できない状態になっている。
小自作農地・市民農園法 1908(Small Holdings and Allotments Act 1908)
1908国農地保全・貸借英国(イングランド・ウェールズ)それまでの小自作農地・アロットメント関連法を統合した英国の基本法。第23条は、アロットメント(市民農園)への需要があると認める場合、市・区・教区の議会に十分な数の区画を確保し住民へ貸し付ける義務を課す。改正を重ねながら100年以上たった今も有効で、住民6人の請願で自治体に検討義務が生じる仕組みも持つ。
都市農との関わり: 市民が公的に菜園用地を求める『権利』の最古級の法的根拠。世界のアロットメント法制の原型のひとつで、現代の英国のRight to Grow運動もこの伝統の延長にある。
市民農園(スコットランド)法 1892(Allotments (Scotland) Act 1892・2018年廃止)
1892国農地保全・貸借廃止英国スコットランド施行期間: 1892–2018
スコットランドの地方当局が市民農園(allotments)用地を取得して住民に提供するための最初期の法的枠組みを定めた法律(55 & 56 Vict. c.54)。適当な土地を取得する義務、市民農園として使えるように土地を整備・改良すること、農園の管理、貸付条件の規制、地代の徴収、貸付関係の登録簿の作成といった事項を規定していた。第4条および第9〜13条は現行版では削除されている。
都市農との関わり: 現在は効力を持たないが、スコットランドの市民農園制度が「自治体が土地を取得して市民に貸す」という枠組みで始まったことを示す原点であり、現行のコミュニティ・エンパワメント(スコットランド)法2015第9部が何を引き継ぎ何を変えたのかを読む前提になる。事業者・市民が根拠法として援用することはできず、2018年4月1日以降のスコットランドの市民農園は2015年法第9部が根拠となる。逆にいえば、130年近く運用された法律が待機者への対応義務を欠いていたことが2015年の立法理由の一つであり、古い制度が長く残ること自体は実効性を意味しないという例でもある。
廃止理由: コミュニティ・エンパワメント(スコットランド)法2015(asp 6)第142条第1項・附則5により、2018年4月1日をもって全部廃止された(施行令 S.S.I. 2017/458 第2条・附則)。同法2015の説明資料は、第9部が1892年・1922年・1950年の市民農園(スコットランド)法の規定を置き換えるものであり、これらは廃止されると述べている。1世紀以上にわたり3本の法律に分散していた市民農園制度を1本にまとめ、待機者数が一定の基準を超えた場合に自治体が区画を増やす合理的措置をとる義務などを新設するための整理統合だった。
ケニア国都市・近郊農業・畜産政策
国振興・基本法ケニアケニア政府の農業部門における制度的・政策的改革の一環として位置づけられた都市・近郊農業・畜産政策。郡政府に対して、都市農業の持続可能性を進める政策開発を指導。都市農業の推進と規制の統一的枠組みを提供。
都市農との関わり: ナイロビをはじめキスム、ナクル、モンバサなどの郡でも同様の戦略が進行中。都市農業の市民参加を支援し、食料安全保障と雇用創出を推進。
中国都市農業発展政策
国振興・基本法中国中国が国家レベルで都市農業を重点産業として位置づけ、技術投資と補助金制度を通じて振興。水耕栽培やアクアポニクスなどの先端技術への大規模投資を展開し、都市部での食糧自給を推進。
都市農との関わり: 国家レベルの政策支援により、都市農業技術の普及と事業化を促進。補助金制度により、市民参加型ガーデンの拡大を支援。
パレスチナ「都市開発への都市農業統合戦略」
国振興・基本法提案中パレスチナパレスチナの都市開発プロセスに都市農業を統合するための戦略的計画。研究により、パレスチナ都市部では都市農業がほぼ欠落していること、都市計画政策と都市農業の間に大きな乖離があること、都市計画者・政策立案者の知識と意思不足が課題であることが指摘されている。
都市農との関わり: パレスチナの都市開発への農業統合の必要性を提示。政策アジェンダへの組み込み、計画者・政策立案者への教育・訓練が必要。
インド・スマートシティ・ミッション(都市農業連携)
国公的プログラムインドインド政府のスマートシティ・ミッションが都市農業振興の枠組みを提供。NMSA(国家持続可能農業ミッション)とともに都市農業を支援。ムンバイ、デリー、ベンガルール、プネ、チェンナイなど主要都市で実装。政策体系はあるが、実装面での規制ギャップ(土地管理権、市民負担配分、農産物帰属など)が課題。
都市農との関わり: インドの都市農業の多層的支援体制。市民参加型農業のスケール化に向けた国家方針。実装ギャップの克服が次課題。
プランタール・エス・クルトゥーラ(ウルグアイ教育文化省の都市農業プログラム)
国公的プログラムウルグアイウルグアイ教育文化省(MEC)が実施する、都市・近郊のコミュニティ菜園を支える全国プログラム。個々の菜園の持ち味は残したまま、互いの実践を共有する交流ネットワークをつくることを主な目的に置く。省が既存のコミュニティ菜園に参加を呼びかけ、活動を束ねて公共的な発信力を高める組み立てになっている。
都市農との関わり: 既存の菜園を強くするだけでなく、新しい菜園を生み出すことも掲げる。参加できるのは近隣住民のグループ、学校、集合住宅、NGO、保健施設などで、コミュニティ菜園を運営している、またはこれから始めたい主体。加えて、菜園を始めたい人に土地を提供できる個人・団体も参加できる。社会的な包摂、働く習慣、楽しみ、生活の質、健康的な食との関係づくりを重視する。
グアテマラ 都市・近郊菜園推進戦略(農牧食糧省 VISAN/DAPCA 都市農業部 DAU)
国公的プログラムグアテマラ共和国グアテマラ農牧食糧省(MAGA)の食料・栄養安全保障担当次官室(VISAN)のもと、地域食料生産支援局(DAPCA)が都市農業部(Departamento de Agricultura Urbana, DAU)を通じて進める、都市部・近郊部での菜園づくりの戦略。住民を巻き込み、食料の安全保障を確かなものにし、食べものの入手できる量を増やすことを目的に掲げる。実施内容は、研修、技術支援、そして各種の野菜の苗(pilones)の配布であり、食料・栄養の安全保障と健康な食事の大切さを住民に伝えることをねらう。2024年6月にMAGAが報告した実績では、アマティトラン市のロス・フミトス地区に25か所、エヘ・ケマド地区に25か所、サン・ホセ・デル・ゴルフォ市のポンテスエラ地区に28か所、ビジャ・ヌエバ市のサン・ホセ地区に10か所の菜園が設けられた。いずれも各市の農村開発自治体協会(AMER)の協力を得ている。
都市農との関わり: 中米で、都市農業を担当する部(DAU)を国の省庁の組織図の中に常設で置いている数少ない例。所管が農業部門ではなく「食料・栄養安全保障」担当次官室に置かれていることが、この国が都市菜園を農業振興ではなく栄養・貧困対策として捉えていることを示している。支援の中身が現金や設備ではなく、研修・技術支援・苗(pilones)の配布という組み合わせである点も、資源の限られた国での都市農支援の設計として参考になる。実施は各市の農村開発自治体協会(AMER)と組んでおり、国の部局が直接ではなく地域組織を介して届ける形をとっている。
ナミビア 都市・近郊園芸振興 統合イニシアティブ(農業・水・土地改革省)
国公的プログラムナミビア共和国ナミビアの農業・水・土地改革省(普及・技術サービス局)が進める、都市部・近郊での園芸生産を支援する国の統合プログラム。掲げる目標は4つで、(1) 土地と水という資源へのアクセスの確保、(2) 安全で品質の高い園芸産物の確保、(3) 都市・近郊園芸を持続的に発展させる制度的な受け皿の確保、(4) 取り組みの効果の確保。手段としては、統合的な生産技術、マイクロガーデン方式、微量灌水、改良品種を組み合わせ、限られた面積で手間をかけずに生産できるようにする。対象は都市のスラム住民、土地を持たない人、零細農家、社会的に不利な立場のグループ、資力の乏しい世帯、失業・不完全就業の人びと。ねらいは、世帯レベルで新鮮な園芸産物を年間を通して手に入るようにして食料安全保障に寄与すること、および都市・近郊での雇用と所得の創出。
都市農との関わり: サブサハラ・アフリカで、都市農を国の農業省が正面から所管して制度化した例のひとつ。マイクロガーデン(小面積・省力の栽培方式)と微量灌水を政策のツールとして明示しており、水が乏しい乾燥国で都市農を成立させる技術選択が制度に組み込まれている。ナミビアはこれまで自治体レベル(ウィントフック市)の事例しか本DBに無く、国レベルの枠組みとして押さえておく価値がある。施行年は公式サイトに明記がないため未記載。
FAO・ブラジル地域プロジェクト - ラテンアメリカ都市農業食料システム変革
2025広域公的プログラムラテンアメリカ・カリブ(7ヶ国参加:アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、キューバ、ペルー)2025年5月、FAO とブラジル政府が開始した都市農業・食料システム変革の地域プロジェクト。参加7ヶ国が都市部と農村部を連結した食料システム構築、小規模農民の能力強化、都市食料安全保障の向上を共同で推進。地域的なナレッジシェア・協力枠組みを構築。
都市農との関わり: ラテンアメリカの都市農業が国際機関・政府レベルでの正式な支援枠組みを獲得。地域内での政策学習・技術移転、小規模農民ネットワークの構築が促進される。市民農業の制度化と規模拡大が加速。
EU 土壌モニタリング・レジリエンス指令(指令(EU)2025/2360、土壌モニタリング法)
2025広域その他欧州連合EUで初めて土壌そのものを対象にした法律。2025年11月12日に採択され、11月26日にEU官報に掲載された。加盟国に対し、行政区域に対応する「土壌地区(soil districts)」と、土壌型・土地利用・気候などの均質性にもとづく「土壌単位(soil units)」を設定したうえで、地球統計的手法で抽出した調査点による調和のとれたモニタリング網を整備することを求める。土壌単位のレベルで誤差5%以内の統計精度を確保し、ISO/CEN標準にもとづく認証された方法で分析し、2回のモニタリング周期分の試料を保管する土壌アーカイブを設けることとされる。監視項目は、物理的劣化(シーリング・侵食・締固め・保水性)と化学的/生物学的劣化(養分バランスの崩れ・酸性化・汚染・有機炭素の減少・生物多様性への影響)に及び、加盟国は地域条件を反映した拘束力のない持続可能目標値と運用上のトリガー値を設定する。さらに、汚染のおそれのある土地と汚染が確認された土地を、リスク評価と浄化の状況とあわせて公開のジオリファレンス付きデータベースに登録・維持しなければならない。持続可能な土壌管理の原則として、シーリングの最小化、既にシーリングされた土壌の再開放(デシーリング)、緑地を保全しつつの高密度化、ブラウンフィールドの再生、利用終了後の土地の修復といった優先順位が示されている。
都市農との関わり: この指令は森林や農地だけでなく都市の土壌も明確に対象に含む。前文(39)は、市街地のうちシーリングされていない土壌は「他のどの土壌とも同じくらい重要に監視され持続可能に管理されるべきである」と述べており、住宅・商業・生産インフラを含む「集落地域」の土壌が管理対象になる。都市農園にとっては二重の意味を持つ。ひとつは、汚染が確認された土地の公開登録簿が整備されることで、空き地を借りて耕そうとする市民が事前に土壌汚染のリスクを確認できるようになること。もうひとつは、デシーリング(舗装をはがして土に戻す)や緑地を保全した高密度化が持続可能な土壌管理の優先順位として明記されたことで、駐車場や空き地を菜園に転換する取り組みが土壌政策の側から裏づけを得ることである。
欧州連合エネルギー性能建築物指令グリーンルーフ要件
2024広域緑化規定欧州連合2024年1月15日、欧州議会産業・研究・エネルギー委員会(ITRE)が批准。エネルギー性能建築物指令(EPBD)が初めてグリーンルーフをEU加盟国の太陽光パネル設置義務の対象に含める。EU加盟国に対し、グリーンルーフと壁面緑化の設計・建設・維持管理に関する規制枠組みの整備を促進。
都市農との関わり: 欧州規模での建築物への緑化義務化。屋上農業・屋上庭園を建築基準に組み込む法的インセンティブとなる。既存のドイツやスイスの規制(最低基盤深12-15cm、地域固有の種子配合など)が参照基準となり、生物多様性保全と都市農業の両立が期待される。
PARLATINO アグロエコロジー推進モデル法 2024
2024広域振興・基本法ラテンアメリカ・カリブ地域2024年12月、ラテンアメリカ・カリブ議会(PARLATINO)が FAO 技術支援により承認。地域全体での持続可能で強靭な農業実践の推進を目標。市民参加型のアグロエコロジー、有機資源循環、地域食料システムを支援。
都市農との関わり: ラテンアメリカ・カリブの国々が、地域的に一貫したアグロエコロジー推進法を採択。各国での市民参加型都市農業・アグロエコロジーの法制化を促進。
EU自然復興規制(EU 2024/1991)- 都市緑地第11条
2024広域緑化規定欧州連合2030年12月31日までに都市緑地でのNO NET LOSS を要求するEUの拘束力のある規制。都市農場は都市緑地定義に明示的に含まれる。
都市農との関わり: 都市農業を強制的なグリーンスペース目標への道として可能にする法的拘束力のある要件。市立戦略内でのコミュニティガーデン正式化を支援。
未来に残す東京の農地プロジェクト(東京都の農地保全補助事業)
2024広域税制・補助日本・東京都令和6年度に始まった東京都の補助事業で、旧「都市農地保全支援プロジェクト」と旧「農地の創出・再生支援事業」を統合したもの。補助対象者は区市町村で、区市町村が事業主体となって整備する。メニューは6種類。農地創出型(宅地や公有地から農地への転換工事。基礎撤去・舗装版撤去など)が補助率2/3以内、農地再生型(遊休農地の伐採・深耕・整地。認定新規就農者は3/4以内)が2/3以内、生活環境型(土留め、農薬飛散防止施設、簡易直売所、農業体験農園の整備)が3/4以内、防災安全型(防災兼用農業用井戸の設置。周知看板・非常用発電機を含む)が3/4以内、公的利用型(市民農園・福祉農園・農業公園の整備)が3/4以内で1か所あたり上限1億円、推進支援型(基本的な調査、農地保全のPR、直売所マップ作成)が1/2以内。相談窓口は区部が産業労働局農林水産部農業振興課、市町村が農業振興事務所振興課、島しょが各支庁産業課。公的利用型を除く上限額と事業期間はウェブ上の概要には記載がない。
都市農との関わり: 都市農業の経済性にいちばん効くのは初期投資の負担で、この事業はそこを都費で落としている。体験農園・市民農園・簡易直売所という収益に直結する設備、そして防災兼用井戸のような公益設備の整備費を最大3/4まで都が持つため、区市町村を通せば農家やNPOの自己負担は残り1/4まで下がる。宅地から農地に戻す転換工事まで補助対象に入っているので、いったん潰れた農地を農地に戻す選択肢も生まれる。ただし申請できるのは区市町村だけで、生産者や団体が直接申請する仕組みではない。使うには自治体の農政担当課と事業を組み立てる必要がある。
EU生物多様性戦略2030 - 都市緑化規定
2020広域緑化規定欧州連合20,000人以上の住民を持つ都市が都市緑化計画を作成することを要求するEUの拘束力のある政策。都市農場は適格なグリーンインフラとして明示的に含まれる。
都市農との関わり: 都市緑化の参加的計画プロセスを委任。庭園の位置と設計に関するコミュニティ入力を可能にする。
EU肥料製品規則(規則(EU) 2019/1009)
2019広域その他欧州連合2019年6月5日採択の、EU域内で「肥料製品」を市場に出す際の共通ルールを定める規則。正式名称は「EU肥料製品の市場への提供に関する規則を定め、規則(EC) No 1069/2009 および (EC) No 1107/2009 を改正し、規則(EC) No 2003/2003 を廃止する規則」。従来のEC肥料規則が無機(鉱物)肥料に限られていたのに対し、堆肥(コンポスト)・消化液などリサイクル由来・有機由来の資材を対象に含め、CEマークを付して域内全域で流通させる道を開いた。前文第10項は、生ごみ(バイオウェイスト)由来のEU肥料製品に含まれる不純物について、技術的に可能な範囲で防止または制限すべきとしている。
都市農との関わり: 都市の生ごみを地域でコンポスト化し、それを製品として広く流通させたい事業者にとって、EU全域で通用する品質・安全の共通土俵を与えた制度。同時に、コンポストの不純物(プラスチック片など)を規制対象として明示した点が重要で、都市由来コンポストがマイクロプラスチックの搬入経路になりうるという研究知見(本DBに収録)と対応している。ただしCEマークの取得は適合性評価・分析・表示の負担を伴い、小規模なコミュニティコンポストが自力で満たすには重い。域内共通ルートを使わず各国の国内規格に従って販売する選択肢も残されているため、実際には多くの小規模事業者が国内制度にとどまっている。
EU 廃棄物枠組み指令 第22条(生分解性廃棄物)— 指令(EU)2018/851による改正
2018広域その他欧州連合2018年5月30日に採択され、2018年6月14日に官報公示された指令(EU)2018/851は、廃棄物に関する指令2008/98/EC を改正し、その第22条を「生分解性廃棄物(Bio-waste)」として全面的に置き換えた。新しい第22条は3項からなる。第1項は「加盟国は、2023年12月31日までに、第10条(2)および(3)に従い、生分解性廃棄物が発生源で分別・リサイクルされるか、または分別収集されて他の種類の廃棄物と混合されないことを確保しなければならない」と定める(堆肥化・生分解によって回収可能な包装について、欧州規格または同等の国内規格に適合し生分解性・堆肥化適性が同様のものは、生分解性廃棄物と一緒に収集することを認めうる)。第2項は加盟国に対し、第4条・第13条に沿って、(a)高い環境保護水準を満たし高品質の産出物をもたらす形で堆肥化・消化を含む生分解性廃棄物のリサイクルを促し、(b)家庭でのコンポスト(home composting)を促し、(c)生分解性廃棄物から作られた資材の利用を推進する措置をとることを求める。第3項は、有機リサイクルに入る生分解性廃棄物、堆肥、消化液に関する欧州規格の策定を、2018年12月31日までに欧州標準化機関へ要請することを欧州委員会に義務づけた。
都市農との関わり: 都市農の側から見ると、この条文はEU全域でコンポストを「推奨」から「制度の前提」へ動かしたものにあたる。第22条2項(b)が家庭でのコンポストを促す措置を加盟国の義務としているため、市民が生ごみを自分で堆肥化する取り組み——バッグ型コンポスト配布、コミュニティコンポスト、市民農園での堆肥づくり——は、自治体の廃棄物政策の枠内で正面から支援できる根拠を持つ。第1項が「発生源での分別・リサイクル(separated and recycled at source)」を分別収集と並ぶ選択肢として認めている点も重要で、地域や菜園でその場で堆肥化する仕組みが、収集して処理施設に送るのと同等の達成手段として位置づけられている。このDBに既に入っているEUの都市緑化系の規定(自然復興規則、生物多様性戦略、EPBD屋上緑化、土壌モニタリング指令)と組み合わせると、EUが有機物循環と都市の緑を別々の法制で同時に押している構図が見える。
メキシコ市都市菜園法(2017年)
2017広域公的プログラム廃止メキシコ市施行期間: 2017–2020
2016年10月に市議会で可決され、2017年2月16日に官報で公布されたメキシコ市最初の都市菜園法。環境省(SEDEMA)を主管とし、農薬・遺伝子組換えを使わないアグロエコロジー手法による都市菜園の設置・登録・支援を定めた。後により詳細な2020年法に置き換えられて廃止された。
都市農との関わり: メキシコ市で住民が自宅や共同住宅・空閑地に菜園をつくることへの公的支援を初めて法制化したもので、現行の都市菜園制度の前身。市民主導の都市農を制度的に位置づける後続法の土台となった。
廃止理由: 2020年12月31日付の官報で2017年法を廃止する政令が公布され、より包括的な新「メキシコ市都市菜園法」に置き換えられた。新法は2022年3月に改正され、施行規則も整備された。
インスピロン・ル・カルチエ(ブリュッセル首都圏の市民プロジェクト公募)
2016広域公的プログラムベルギー・ブリュッセル首都圏地域ブリュッセル環境庁(Bruxelles Environnement)が2016年に始めた、市民のグループによる共同プロジェクトを対象とする公募制度。扱うテーマは、緑化と自然(屋上の菜園、壁面のつる植物、生物多様性)、地元での食の生産(共同菜園・果樹園・料理のワークショップ)、ごみ削減(コンポスト、ゼロウェイスト、リユース)、公共空間の清潔さ、持続可能なモビリティなど。採択されたグループには、専任のコーチによる個別の伴走、プロジェクト実施のための補助金、研修や実践の交換の場がセットで提供される。制度開始から430件のプロジェクトが支援を受けている。2026年の公募は7月12日締切だった。
都市農との関わり: 共同菜園を立ち上げたい住民グループに、お金だけでなく伴走者をつけるのがこの制度の要点。DB に収録済みのブリュッセル首都圏「グッド・フード戦略」が示す方向を、地区スケールの具体的な菜園・果樹園・コンポストに落とす受け皿にあたる。ブリュッセルの都市農は2015年の20件から2024年には49件に増えており(同庁の集計)、この公募はその市民側の裾野を支える仕組みとして位置づけられる。
アルジェ県 戦略プラン(2035年展望)の都市アグリパルク
2016広域土地利用・条例アルジェリア・アルジェ県(ウィラヤ)2016年12月5日の行政命令16-319号で承認したアルジェ県の戦略プラン(2035年展望)が定める土地利用の枠組み。市街地と自然・農地・農林地帯が接する縁の帯に「アグリパルク」を置き、管理された open space として整備する。県内に23か所を配置し、2016年にクライシア(370ha)、シェラガ(555ha)、ドゥニア公園(5コミューンにまたがる156ha)の3か所を先行事業として着手した。実施は県の森林・グリーンベルト局が担う。
都市農との関わり: 市街地の拡大に農地が押し流される動きに、都市計画の側から線を引いた制度。食料生産を続けたまま生態回廊とレクリエーション・教育の機能を重ねるため、アルジェ近郊で共有菜園や市民の農的活動を営む側にとっては、場所を確保する根拠になりうる。1997年の大アルジェ「緑のプラン」が掲げたグリーンベルト構想を、実行可能な区域指定に組み替えたものでもある。
ブリュッセル『グッド・フード』戦略
2015広域食農政策ベルギー・ブリュッセル首都圏地域2015年12月に地域政府が承認、2016年に開始した持続可能な食料システム戦略。ブリュッセル環境局と地域農業ユニットが推進し、2035年までに果物・野菜の30%を域内で生産することなどを掲げ、屋上農園・地下きのこ栽培・アクアポニクスなど都市農業を支援する。
都市農との関わり: 都市農業を地域経済・食料自給・循環経済に結びつけた包括的な地域食料政策で、欧州都市の参照モデルとなっている。
野菜開発計画(VDP・屋上栽培補助を含む)
2012広域税制・補助インド・ケララ州ケララ州農業局が2012年に開始した州の野菜自給促進事業。空き地・学校・家庭の敷地に加え屋上・垂直栽培・水耕を対象とし、グローバッグや屋上栽培ユニットに最大75%(1ユニット当たり上限2,000ルピー)の補助を出す。ケララ農業大学やLSGD(地方自治体)等が連携して実施する。
都市農との関わり: 家庭・学校・都市空間での市民による野菜栽培を公的補助で直接後押しする、市民参加型都市農業の代表的な州事業。
緑化要素に対する床面積(GFA)緩和制度(スカイガーデン等の屋上緑化)
2011広域税制・補助香港特別行政区香港政府が2021年に更新した緑化建築奨励枠組み。屋上菜園を含む緑化機能を新築建物に求め、開発業者に床面積譲歩(GFA concessions)を提供する制度。BEAM Plus評価基準の一部として実装。
都市農との関わり: 香港の不動産開発と都市農業の統合政策。屋上農業への税制・容積インセンティブを提供し、高密度都市での食料生産と緑化を推進。
東京都 農の風景育成地区制度(2011年創設)
2011広域土地利用・条例日本・東京都減少しつつある農地をオープンスペースとして保全し、農のある風景を将来に引き継ぐために、東京都が平成23年(2011年)に創設した制度。農地や屋敷林がまとまって残る地区を指定し、散在する農地を一体の都市計画公園等として計画決定するなど、都市計画制度を積極的に活用する。要綱にもとづき区市町が地域を選定して保全・活用・連携の方針を策定し、指定は都が行い、運営は区市町が担う。指定に向けて区市町が行う調査等には都が事業費を補助する。これまでに第一号「喜多見四・五丁目」(2013年5月17日)から第八号「小比企町」(八王子市、2026年7月1日)まで8地区が指定されている。
都市農との関わり: 生産緑地のような個々の農地の保全ではなく、農地・屋敷林・水路を含む「風景」の単位で都市計画的に守る点が特徴。都市住民にとっては、身近な農のある景観と、防災時の避難空間や体験の場としての農地が地区単位で残ることを意味する。
EC肥料規則(規則(EC) No 2003/2003)
2003広域その他廃止欧州連合施行期間: 2003–2022
2003年10月13日採択の、EU域内で「EC肥料」として市場に出される製品を規律した規則。対象は無機(鉱物)肥料に限られ、無機肥料は「表示された養分が、採掘または物理的・化学的な工業的処理によって得られた鉱物の形態にあるもの」と定義されていた。有機肥料やコンポストは含まれていなかった。
都市農との関わり: 19年間にわたり、EUの共通肥料制度が化学肥料だけを前提に設計されていたことを示す記録。都市の有機物を土に戻す循環(コミュニティコンポスト、生ごみ堆肥、下水汚泥由来資材)は、この期間、域内共通の製品ルートを持たず各国制度に分かれていた。制度が対象範囲をどこに引くかによって、市民規模の資源循環が「製品」として扱われるか否かが決まることを示す例であり、後継の 2019/1009 と対で読むと制度転換の意味が分かる。
廃止理由: 規則(EU) 2019/1009 により廃止され、2022年7月15日をもって効力を失った。無機(鉱物)肥料しか対象にしておらず、コンポストや消化液といったリサイクル由来・有機由来の資材が「EC肥料」の枠組みに入れなかったため、都市の生ごみや下水汚泥を資源として市場に載せる道が域内共通ルールとしては存在しなかったことが、置き換えの理由の中心にある。
CoFarm4Cities プロジェクト(オブダ大学)
広域公的プログラムハンガリー・ブダペストオブダ大学の教育者が中心となって推進する CoFarm4Cities プロジェクト。中央ヨーロッパ各国で持続可能な土地利用モデルを開発。都市農業と生態的実践の統合的なアプローチを実現。
都市農との関わり: 中央ヨーロッパの複数国を対象とした持続可能な土地利用モデルの開発と実装。都市農業の制度的基盤構築と実践的支援を提供。
サブサハラ・アフリカ堆肥・都市農業統合政策枠組み
広域公的プログラムサブサハラ・アフリカ地域サブサハラ・アフリカの農村~都市間の栄養循環を閉じるための政策枠組み。都市有機廃棄物の堆肥化により、都市・近郊農業への養分還元を図る。堆肥ハブの拡大と自治体・コミュニティレベルでの廃棄物リサイクル・プログラム化を目標。
都市農との関わり: サブサハラ・アフリカの食糧安全保障と廃棄物管理を統合したアプローチ。市民参加型の有機資源循環により、都市農業の持続可能性を向上させ、地域食料システムの強化を支援。
サンティアゴ首都圏州「ノス・コンポスタモス・ビエン2」(地域コンポスト推進事業)
広域公的プログラムチリ・サンティアゴ首都圏州サンティアゴ首都圏州政府が進める地域コンポストの支援事業。共同利用のコンポスト資材一式を配り、有機ごみの資源化について研修と技術的な伴走を行う。2026年8月時点で教育機関200校・住民組織100超の計300超が対象となっており、首都圏州の全52コムーナで住民組織600・教育機関200まで広げることを目標に掲げる。第2期にあたるため事業名に「2」が付く(第1期の開始年は公表資料で確認できず)。
都市農との関わり: 住民組織と学校に堆肥づくりの資材と研修が公費で届くため、コミュニティ菜園や学校菜園が生ごみから土をつくる循環を組み込みやすくなる。区画を持たない団体でも、コンポストを入り口に食と農の活動を始められる。
新たな農的活動支援事業(東京都)
広域税制・補助日本・東京都企業や団体による空地・屋上を使った農的活動を対象とする東京都の補助事業。都市環境の形成に資する農的空間の創出と都民の農体験の推進を目的に掲げ、農的活動の準備・整備・運営と、調査・普及啓発を補助対象とする。補助率と上限額は次のとおり。準備費が2/3以内で500万円、整備費が2/3以内で2,000万円、運営費が1年目2/3以内で1,000万円・2年目1/2以内で750万円・3年目1/3以内で500万円、普及啓発事業が定額で3,000万円。対象は企業・団体等で個人は除く。事業の実施主体は非営利団体が務める。令和8年度は5月29日から6月12日まで募集し、補助金申請の受付を8月6日に開始した。開始年度は公表資料から確認できない。
都市農との関わり: 屋上や空地の農園がつまずく理由は二点ある。初期投資と、黒字化までの数年をどう食いつなぐか。この事業は整備費だけでなく運営費を3年間、2/3→1/2→1/3と逓減する率で見る設計になっており、立ち上げ期のキャッシュフローを直接埋める。普及啓発に定額で3,000万円の枠を置いているため、栽培そのものより見学・研修・イベントで収入を立てるモデルとも噛み合う。個人は対象外で公募期間も2週間しかないので、法人化と事業計画を前年度のうちに準備しておくかどうかで使えるかが決まる。
メリーランド州 都市農業助成金プログラム(2026年開始)
2026州・県税制・補助米国メリーランド州メリーランド州農務省(MDA)が2026年6月15日に募集を開始した、都市農園とコミュニティガーデンを対象とする助成制度。州議会の承認により2029会計年度まで年間最大10万ドルの枠が確保され、1件あたりの上限は1万ドル。国勢調査上の都市地域で営農し、年間1,000ドル以上の農産物販売または寄贈がある個人生産者・営利農業事業者・非営利団体が申請できる。対象は保管庫・洗浄設備・柵・低トンネルなどの設備整備、持続可能な栽培手法と認証取得、屋上菜園や環境制御型農業、堆肥づくりと土壌の健康に関する教育プログラムなど。不動産の取得は助成額の20%まで、運営費は15%までという上限がある。初年度の申請期間は2026年6月15日〜7月24日。
都市農との関わり: 都市の菜園や小規模農園が最も詰まりやすいのは、洗い場・保管・柵といった地味な設備の初期費用で、こうした費目は一般の農業補助の対象から外れがちである。この制度は上限1万ドルと小口ながらその部分を正面から対象にし、非営利団体も申請できる。堆肥づくりと土壌の健康に関する教育プログラムを助成対象に含めている点は、生ごみの地域循環に取り組む団体にとって実際的な資金源になる。
マレーシア・スランゴール州 遊休地の都市農業活用指示(2026年)
2026州・県農地保全・貸借マレーシア・スランゴール州スランゴール州政府が2026年8月、州内の地方自治体(PBT)に対し、管内の遊休地を洗い出して借地申請を出すよう指示した。目的は、放置と不法占拠を防ぎつつ、その土地をコミュニティ菜園・農業プログラム・民間の取り組みに使えるようにすること。州のインフラ・農業担当委員長 Datuk Izham Hashim が明らかにした。州の「都市農業プログラム」の一環で、食料生産の増加、住民参加の促進、州の食料安全保障の強化をねらう。
都市農との関わり: 都市農の最大の壁である「使える土地がない」を、自治体が遊休地を借り上げて市民に開くという形で外そうとする指示。コミュニティ菜園が名指しで用途に挙げられているため、住民グループが自治体に土地を求める根拠になりうる。ただし指示であって条例ではなく、実際にどれだけの土地が開くかは各自治体の運用次第。
ニューヨーク州都市農園・コミュニティガーデン助成金プログラム(2025-2026)
2025州・県税制・補助米国ニューヨーク州ニューヨーク州が 2025・2026 会計年度予算に都市農園・コミュニティガーデン助成金プログラムの予算を確保。市民農園、コミュニティガーデンの創設・拡張に拠出。
都市農との関わり: ニューヨーク州内の市民農園、コミュニティガーデン、学校、非営利団体が対象。地域の食料安全保障、コミュニティの結集、緑化を推進。
西オーストラリア州 コミュニティガーデン助成制度(2025-26)
2025州・県税制・補助西オーストラリア州西オーストラリア州政府が提供する助成制度。プロジェクトあたり最大AUD 10,000を支給。2024-25年度は35プロジェクトが採択されたコミュニティガーデン支援制度
都市農との関わり: 市民参加型コミュニティガーデンに対する直接的な財政支援。食料安全保障向上、地域結合力強化、持続可能な食料生産を促進するインセンティブ
バーモント州都市農業ゾーニング改革ガイド(2024)
2024州・県土地利用・条例米国バーモント州バーモント法大学院農業食料システムセンターが発行した2024年ガイド「Zoning for Urban Agriculture」。市民向けの都市農業推進のためのゾーニング改革手引書。地方政府・計画立案者向けの法的・実践的指針を提供。
都市農との関わり: 地方自治体のゾーニング条例改革を通じて、法的障壁を除去し、市民参加型の都市農業・コミュニティガーデン実装を促進する実践的ガイド。
オハイオ州 SB 111 「都市農業者ユース・イニシアティブ・パイロット事業法」
2024州・県公的プログラム米国オハイオ州上院議員パウラ・ヒックス=ハドソンが提案した2024年立法。都市農業者が直面する障壁の除去と、ユース向けの都市農業パイロット・プログラムの確立を目的とする。
都市農との関わり: 次世代の市民農業者育成と都市農業の事業化支援を通じて、都市部の食糧生産と若年層への教育・雇用機会創出を促進。
カリフォルニア州都市農業助成金プログラム(2024-2026)
2024州・県税制・補助米国カリフォルニア州カリフォルニア州が 2000 万ドルを都市・郊外の農園・庭園に拠出。地植え菜園、プランター菜園、キノコ栽培、屋上農園、空き地の活用、公園での栽培を対象。
都市農との関わり: カリフォルニア州内の市民農園、コミュニティガーデン、学校・公共施設の農業プロジェクトが利用可能。地域食料生産、緑空間創出、コミュニティ構築に寄与。
ミズーリ州 裏庭養鶏法(HB 2062)
2024州・県土地利用・条例廃止米国ミズーリ州施行期間: 2024–2025
2024年7月に成立し、0.2エーカー以上の土地を持つ住民が最大6羽の鶏を飼えるようにした州法(HOAや地方条例の規制を上書き)。2025年10月、コール郡巡回裁判所がHB 2062は複数題目を含み州憲法に反すると判断し全体を無効とした。州は上訴予定だが、現状は同法が「存在しなかったのと同じ」扱い。
都市農との関わり: 都市・郊外の食料自給(裏庭養鶏)を認めた法が裁判所に無効とされた例で、立法技術上の欠陥が政策を丸ごと失わせた失敗事例。
インド・ビハール州 屋上菜園補助制度(Chhat Par Bagwani Yojana)
2024州・県税制・補助インド・ビハール州ビハール州農業局の園芸局が運営する、都市部の住民向け屋上菜園の補助制度。300平方フィート(約28m²)あたりの標準事業費 48,574ルピーに対し75%(36,430.50ルピー)を州が補助し、自己負担は 12,143.50ルピー。プランター・培土・苗などを補助価格で提供する。対象は自宅または集合住宅に300平方フィート以上の空き屋上を持つ人で、集合住宅の場合は管理組合の同意書が必要。2024-25年度の初期対象地域はパトナ市(パトナ・サダル、ダナプール、フルワリ、カガウル)とバガルプール・ガヤ・ムザファルプールの都市部。
都市農との関わり: 自己負担を4分の1まで下げることで、中〜低所得の世帯にも屋上での野菜・果物・花づくりを届けようとする補助制度。家庭の栄養改善と副収入、さらに都市のヒートアイランド緩和を目的に掲げている。インドの州レベルでは既収録のマハーラーシュトラ州(50%補助)やタミル・ナードゥ州のDIYキット制度と並ぶ類型で、補助率の高さが特徴。
ブエノスアイレス州「都市菜園プログラム(Programa Huerta Urbana Bonaerense)」
2024州・県公的プログラムアルゼンチン・ブエノスアイレス州ブエノスアイレス州 農業開発省(家族農業・農村開発局および農業局)が2024年後半に実施を始めた、アグロエコロジーにもとづく家庭菜園・共同菜園による地域の食料生産支援プログラム。40平方メートル以上の共同菜園に対して苗と研修を提供し、市町村が地域の育苗場(ビベロ)を整備する際には資材と伴走支援を行う。対象は共同菜園をつくる団体・クラブ・協会・組織、および育苗場を整備する自治体で、州のオンライン窓口「MI MDA」から申請する。第1期は学校菜園、社会組織、病院の菜園が中心で、家庭菜園の参加は限られていた。
都市農との関わり: 州レベルで、共同菜園に苗と研修という「立ち上がりの実物支援」を直接届ける仕組み。40平方メートルという小さな下限を置いているため、学校・病院・地域団体の小規模な菜園が対象になりやすい。自治体の育苗場を支える枠を併設している点も、苗の供給というボトルネックに州が介入する設計として参考になる。
バハ・カリフォルニア州 持続可能な都市農業法(2023年)
2023州・県振興・基本法メキシコ・バハ・カリフォルニア州2023年6月22日にメヒカリの州議会(第24期)本会議で可決され、2023年7月7日付の州公報(Periódico Oficial 第39号、Tomo CXXX)に公布された州法。目的は3つで、(1) 都市農業に関する州と市町村の権限配分を定めること、(2) 都市菜園を通じた食料安全保障と環境負荷の緩和に向けた公共政策の原則を定めること、(3) 住民が都市農業を始め・守り続けることへの参加を促すこと。『持続可能な都市農業』を、都市の内部で小規模に、地面でも代替空間でも、私有地・公共空間・遊休地で行う植物栽培と食料生産と定義する。住民の権利として、法と規則の要件を満たす限り都市菜園を持つこと、健康で栄養があり安価な食料を得る手段として都市農業を営むこと、関連する行政プログラムの情報と利用を求めることを明記した。行政側では、農業・農村開発省が環境・持続可能開発省と連携して、助言・研修・技術的伴走・科学技術研究を通じて都市菜園づくりを支援し、支援した事業を追跡して毎年、成功事例の報告書を作ること、都市菜園で優先的に栽培すべき種のリストを公表することを定める。支援を受けた事業者は四半期ごとに進捗を報告する義務を負う。州の公有地上の都市菜園は教育・訓練を目的とし、生物多様性の保全を促すものとされ、行政は民間に栽培・管理を委ねる(コンセッション)ことができるが、余剰生産物は営利目的ではなく社会的な利益のために使わなければならない。施行は公布の翌日、施行規則は公布から90日以内に整備するとされた。
都市農との関わり: 「都市菜園を持つこと」を住民の権利として明文化した、比較的珍しい書き方の州法。行政に助言・研修・技術支援の義務を課し、支援した事業の追跡と年次報告まで書き込んでいるため、制度が実際に動いたかを外から確かめられる設計になっている。公有地の菜園について『余剰は営利ではなく社会的な利益に使う』と条件をつけた点は、公共用地を使った都市農の運営条件を考えるうえで参照しやすい。優先栽培種のリストを行政が公開する規定も、乾燥地の州で何を育てるべきかという実務的な問いに答えるしくみとして特徴的。
ハリスコ州 都市・学校菜園および送粉者の庭に関する法律案(メキシコ)
2023州・県振興・基本法提案中メキシコ・ハリスコ州州議会議員アレハンドラ・ヒアダンス・バレンスエラが2023年6月20日にハリスコ州議会へ提出した法律案(Ley de Huertos Urbanos, Escolares y de los Jardines Polinizadores para el Estado de Jalisco)。州内のすべての学校に菜園をつくることを求め、都市農業の専門家による支援を付ける。あわせて送粉者のための庭を設け、生物多様性の保護と、これらの空間を地理情報システムで把握することを定める。都市・近郊農業を気候変動の緩和策として位置づけ、環境教育と健康的な食生活の推進を目的に掲げる。可決には至っておらず、提出(イニシアティブ)段階。
都市農との関わり: 学校菜園を「あればよいもの」ではなく州法上の義務として全校に置き、送粉者の庭とセットで生物多様性まで含めて設計しようとする点が特徴。可決前の段階だが、州レベルで学校菜園を制度化しようとする動きとして参照価値がある。
ミズーリ州 都市農場投資税額控除プログラム(米国)
2023州・県税制・補助米国ミズーリ州2023年1月1日以後に始まる課税年度から適用される州の税額控除。都市部にある都市農場の建設・整備にかかった適格経費の50%を州税から控除する。対象となる都市農場は販売または市民への無償提供のための食料生産だけを行うもので、所在地が都市地域かどうかは合衆国国勢調査局の区分で判定する。控除額の上限は1農場あたり納税者1人につき5,000ドル、同一農場では全納税者の合計で25,000ドル。プログラム全体の枠は1暦年あたり20万ドルで、申請順に割り当てる。都市農場への金銭寄付も証明を取れば対象になるが、州・連邦の補助金で賄った経費は除く。申請は様式UFで、申請手数料100ドルと発行手数料3%(最低50ドル)がかかる。2023年の経費は2024年11月1日、2024年の経費は2025年11月1日が申請期限。控除は譲渡・売却・移転ができず、使い切れない分は3課税年度まで繰り越せる。
都市農との関わり: 都市農場の設備投資に対し、州が半額を税で戻す仕組み。ハウス・給水設備・土壌改良・洗い場といった支出は融資を受けにくく自己資金で背負いがちなので、50%戻る前提で投資計画を立てられるかどうかが経営を左右する。市民への寄付だけを行う農場も「販売または無償提供」の要件を満たすため、非営利の都市農場も対象に入る。一方で1農場25,000ドル・年間20万ドルという枠は小さく、先着順であるから、州全体で見れば年に数十件規模の支援にとどまる。控除は売却も譲渡もできないため、課税所得がない立ち上げ期の事業者は3年の繰越しのなかで使い切れるかを見ておく必要がある。
ベルリン市コミュニティガーデン・プログラム(Plattform Produktives Stadtgrün)
2022州・県公的プログラムドイツ・ベルリン(都市州)ベルリン州(市)が2022年に本格始動させたコミュニティガーデン支援プログラム。環境・交通・気候保護を担う州(市)担当部局が「Plattform Produktives Stadtgrün(生産的な都市緑地のプラットフォーム)」を通じて調整し、市民のコミュニティガーデンに対する用地確保・運営支援・情報提供を行う。2024/25年度予算では人員・財政の拡充も図られた。
都市農との関わり: プリンツェッシンネンガルテンに代表される市民主導のコミュニティガーデンに対し、用地の確保や運営の後ろ盾を制度として与える。市民参加型の都市農を一過性の取り組みから恒常的な都市緑地政策へと位置づける支援策。
カルナタカ州都市農業ゾーン指定制度
2022州・県土地利用・条例インド・カルナタカ州カルナタカ州が都市マスタープランに都市農業ゾーンを正式に指定。市内の公園、遊休地、屋上など複数スペースタイプを農業に適した用地として位置づけ、計画的な都市農業展開を支援。
都市農との関わり: 都市計画に都市農業が組み込まれることで、市民農業プロジェクトが公的な計画に沿い、許可・支援を受けやすくなる。長期的な農業スペースの確保が可能に。
ケララ州園芸ミッション アルカ縦型菜園 都市菜園補助制度
2022州・県税制・補助インド・ケララ州ケララ州園芸ミッション(SHM)が、土地のない都市部の住宅・集合住宅での野菜栽培を普及させるために実施する補助制度。ICAR-インド園芸研究所が開発した1平方メートルに16鉢を4段で配置できる「アルカ縦型菜園」ユニットを対象に、費用の75%(17,505ルピー)を補助し、住民負担は25%(5,835ルピー)となる。
都市農との関わり: 土地を持たない都市住民が安価に野菜を自給できるよう直接的な金銭インセンティブを提供する州レベルの支援策。当初はティルヴァナンタプラムとエルナクラムなどの市域住民を対象に330ユニットを配布し、ベランダや屋上など狭い空間での市民の家庭菜園を後押しする。
メキシコシティ 都市菜園法(Ley de Huertos Urbanos de la Ciudad de México)
2022州・県振興・基本法メキシコ・メキシコシティ(連邦区)メキシコシティ議会が2022年3月に公布した都市菜園に関する法律。2017年制定の旧法を廃止し、環境緩和・食料安全保障・経済的自立・環境教育を目的とする公共政策の概念・原則・手続き・権限を定める。誰でも環境局(Sedema)に登録して都市菜園の開設・維持・拡張ができ、各区(アルカルディア)はSedemaへ年次報告を行う。2023年には施行規則(Reglamento)も整備された。アグロエコロジーの実践を促し、遺伝子組換え作物や農薬の使用を避けることを掲げる。
都市農との関わり: 市民や地域の集団が都市菜園を開設・運営することを法的に位置づけ、登録制度と行政の支援・調整の枠組みを与える。2022年の調査では161の登録コミュニティ菜園と300人超の都市農家の名簿が把握されるなど、市民主導のアグロエコロジー都市農を制度として後押しする、ラテンアメリカの先進的な法律のひとつ。
マハラシュトラ州屋上農業50%補助制度
2020州・県税制・補助インド・マハラシュトラ州マハラシュトラ州が屋上農業システムの導入に対して最大50%の補助金を提供する制度。都市内のルーフトップを農業スペースに転換することで、遊休資源の有効活用と市民の食料自給を推進。
都市農との関わり: 屋上農業を行う市民・事業者が補助金の対象となり、導入コストの軽減が実現。小規模農業や家庭菜園の拡大を促進。
フロリダ州 上院法案82号(住宅地の野菜菜園保護法)
2019州・県土地利用・条例米国フロリダ州2019年7月1日施行。住宅用地の野菜菜園に対する自治体の規制を原則として禁止し、そうした地方条例を無効・執行不能とする州法。家庭菜園による野菜・果実の持続的な栽培の促進を『州の重要利益』と明記する。
都市農との関わり: 前庭などでの野菜栽培を禁じる地方条例を一掃し、市民の自家栽培の権利を州レベルで保護した。ただし住宅地内のHOA(管理組合)規約には及ばない。
米国ワシントン州 都市農業ゾーン設置権限(RCW 35.21.192/35A.21.420、2019年)
2019州・県土地利用・条例米国ワシントン州市町村が条例で「都市農業ゾーン(urban agriculture zone)」を区域内に設定できることを定めた州法。設定には少なくとも1回の公聴会が必要で、条例は「養蜂箱・道具小屋・温室・産直スタンド・教育スペースを含む、農的活動を支える構造物の利用を禁じてはならない」と定める。RCW 35.21.192 が市町(cities and towns)、RCW 35A.21.420 がコードシティに対応する。2019年会期法 c 353 s 14 で制定。
都市農との関わり: 市民の都市農業でしばしば障害になるのは、栽培そのものではなく「温室・物置・直売スタンドを建てられない」という付随施設の規制である。この州法は、都市農業ゾーンを設ける自治体に対しそうした構造物の禁止を封じることで、菜園を続けるための最低限の設備を法的に守っている。ワシントン州内の自治体がゾーニングで都市農業を位置づける際の根拠条文で、フェデラルウェイ市の都市農業章(FWRC 19.62)などがこの枠組みの下にある。
ミチョアカン州 都市・近郊農業法(2017年)
2017州・県振興・基本法メキシコ・ミチョアカン・デ・オカンポ州ミチョアカン州議会が2017年10月4日にモレリアの本会議で可決し、政令第402号として2017年12月13日付の州official公報(Periódico Oficial del Estado、Tomo CLXVIII、第80号、第7セクション)に公布した州法。都市農業・近郊農業を振興し規律することを目的とし、都市菜園(huertos urbanos)と農的な空間の創設・維持・運営を進める公共政策の枠組みを定める。
都市農との関わり: メキシコでは都市農業の制度化が連邦法ではなく州法として進んでおり、その代表例のひとつ。州の段階で「都市菜園をつくり・維持し・運営する」ことを行政の責務として書き込んだため、市町村が個別に条例を持たなくても、州の公共政策として菜園整備を求められる根拠になる。近郊(periurbana)まで対象に含めている点が、市域内に閉じた条例との違い。
カリフォルニア州 上院法案1383号(短寿命気候汚染物質・有機廃棄物削減法、2016年)
2016州・県食農政策米国カリフォルニア州提案者は Lara 上院議員、2016年成立。州全体の排出量について、2030年までにメタンを2013年比40%、ハイドロフルオロカーボンを40%、人為起源のブラックカーボンを50%削減する目標を定め、2018年1月1日までに戦略を承認するものとした。有機廃棄物については、2014年水準比で2020年までに50%、2025年までに75%の埋立処分削減を義務づけ、さらに2025年までに現在処分されている可食食品の20%以上を人の食用に回収することを規則に含めるよう求める。有機廃棄物の規則は2022年1月1日以降に発効し、罰則規定はさらに2年遅れて適用される。
都市農との関わり: 生ごみ・剪定枝といった有機廃棄物を埋立から外すことを州の義務にした法で、自治体の分別収集と堆肥化の急拡大を招いた。コミュニティガーデンや都市農園にとっては、地域で発生する堆肥の量と受け皿が制度的に増えることを意味し、住民向けコンポスト講習や堆肥の無償配布が自治体施策として広がる背景になっている。なお、堆肥・マルチの調達義務は法律本文ではなく、これに基づく規則の側で定められている点に注意。
タミル・ナードゥ州 都市園芸・DIY家庭菜園キット制度
2014州・県税制・補助タミル・ナードゥ州(インド)州園芸局が、屋上・ベランダ用の家庭菜園キット(培養袋やココピート、種子、生物肥料、栽培マニュアル等)を補助価格で提供し、都市住民に無農薬野菜の自給栽培を促す制度。当初チェンナイ・コインバトールで導入され、現在は統合園芸開発事業の下でオンライン申込により運用されている。
都市農との関わり: 都市住民はオンラインや園芸局窓口で登録し、補助価格でキットを入手して屋上・ベランダ栽培を始められる。タミル・ナードゥ農業大学(TNAU)が屋上菜園や生ごみ堆肥化の研修・相談を提供する。
カリフォルニア州 都市農業インセンティブ地区法(AB 551)
2013州・県税制・補助米国カリフォルニア州市・郡が「都市農業インセンティブ地区」を設け、空き地・未利用地を5年以上小規模農業に使う契約を結んだ地主に、農地並みの低い固定資産税評価を認める州法(2013年)。対象区画は0.1〜3エーカー、人口25万人以上の都市部が条件。
都市農との関わり: 都市の空き地を借りて農園を開くコストを税面から下げる仕組み。地主と運営者をつなぎ、暫定利用の事業性を高める。
プエブラ州 都市農業法(2013年)
2013州・県振興・基本法メキシコ・プエブラ州プエブラ州議会の政令により制定され、2013年12月30日(月)付の州公報(第12号、第19セクション、Tomo CDLXIV)に公布された州法。都市・近郊の空間を活用した自家食料生産と農の振興を通じて都市農業・近郊農業を促進し、組織づくりと社会的包摂によって家族とコミュニティの参加を強めることを目的とする。都市農業による生産・加工・貯蔵・販売についての研修・訓練・技術支援プログラムの整備と、雨水の収集・利用を可能にする屋上緑化(グリーンルーフ)やテラス方式の導入・展開を進めることを定める。
都市農との関わり: メキシコの州レベルの都市農業法としては早い時期(2013年)のもので、ミチョアカン州(2017年)やバハ・カリフォルニア州(2023年)に先行する。栽培だけでなく加工・貯蔵・販売までを研修の対象に含めている点と、屋上緑化・テラス栽培を雨水利用とセットで位置づけている点が特徴。屋上を使う都市農を、緑化と水の循環の観点から制度に取り込んだ早い例として参照できる。
テネシー州 憲法修正決議 HJR 780「食べ物への権利」(2026年・成立せず廃案)
州・県振興・基本法廃止米国テネシー州施行期間: ?–2026
テネシー州憲法第11条に「食べ物への権利」を加えることを提案した決議(正式名称: A RESOLUTION to propose an amendment to Article XI of the Constitution of Tennessee, relative to the right to food)。種子を保存し交換する権利、自らの栄養・健康・幸福のために食べ物を育て、収穫し、生産し、取得し、消費する権利を憲法に明記する内容だった。提出者はミシェル・レノー下院議員(第27選挙区)。対象は植物・作物に限られ、鶏やヤギなど小動物の飼育は含まれない。
都市農との関わり: ゾーニング(土地利用規制)が変わっても自分の土地で食べ物を育て続けられる権利を、州憲法のレベルで確保しようとした試み。既存のゾーニングや近隣被害への規制そのものを無効にするものではないと説明されていた。都市部の家庭菜園・市民菜園の法的な足場を憲法に求める動きの一例として、廃案になった経緯とあわせて記録する。
廃止理由: 一度も成立していない。2026年1月15日に提出され、2026年3月11日に下院の農業・天然資源小委員会で動議に賛同者(second)が得られず廃案となった。テネシー州憲法の改正には両院で3分の2の可決を得たうえで住民投票にかける必要があり、この決議はその最初の段階で止まった。
ナイロビ都市農業食料セキュリティ法案(2026)
2026自治体振興・基本法提案中ナイロビ市郡(ケニア)ナイロビ市郡が農業を都市から排除する従来の政策から転換し、都市農業の推進と規制枠組みを構築する法案。都市飢餓問題への対応。
都市農との関わり: 都市農業禁止から奨励へのパラダイムシフト。市民の食料自給権確保、地域経済活性化の法的枠組み構築。
米国イリノイ州エバンストン市 都市農業条例案(2026年)
2026自治体土地利用・条例提案中米国イリノイ州エバンストン市エバンストン市のゾーニング条例にはコミュニティ・ファームを扱う規定がなく、市職員が都市農業条例の起草を進めている。第8区の市議 Matt Rodgers が2026年5月11日に付託(referral)を提出し、あわせて「オープンスペース地区保護条例」と、実質的な付属的用途に公聴会を義務づける案も出した。条例案は市の土地利用委員会(Land Use Commission)を経て市議会にかかる予定。2026年7月時点で採択には至っていない。
都市農との関わり: エルクス公園の都市農園計画が、オープンスペース地区で都市農業が許可用途にも特別用途にも位置づけられていないために止まったことが発端。「条例に書かれていない用途は審査の土俵にすら乗らない」という、市民の菜園計画が制度の空白でつまずく典型例で、条例が通れば計画は審査対象になりうる。廃案・修正の可能性があるため status は proposed のまま。
米国ワシントン州オリンピア市 都市農業コード改正(2026年・農業を「主たる用途」として容認)
2026自治体土地利用・条例米国ワシントン州オリンピア市オリンピア市議会が2026年1月13日、市条例(OMC)第18.04章・第18.06章を改正する条例案を全会一致で第一読会可決し、第二読会へ送った。改正の核心は、それまで農業を「付随的な用途」(住宅の裏庭の菜園など)としてしか認めていなかった制限を外し、土地の主たる用途としての農業、あるいは住宅・事業との併用を、大半の住居系・商業系ゾーンで認めた点にある。自動車サービス系と工業系のゾーンは農業と相性が悪いとして対象外。家畜の飼養規定も見直され、2エーカー(約8,100㎡)以上の敷地には米国農務省(USDA)のアニマル・ユニット基準を適用して大型家畜の頭数を面積で決め、それ未満の小規模な区画は都市の宅地に向く動物(鶏・七面鳥・うずら、小規模養蜂など)に限り、離隔距離や保護措置の要件を課す。市の公式ページによれば、鶏・あひるは1エーカー以下の区画で雌5羽まで(それを超える面積は1,000平方フィートごとに1羽、上限10羽)、うさぎも同様、ミニチュアヤギは5,000平方フィート〜1エーカーで2頭までとし、いずれも敷地境界から5フィートの離隔が必要。
都市農との関わり: 「農業は住宅のおまけ」という前提を外したことで、空き地や大きめの遊休地をそれ自体として市民農園・コミュニティファームに使う道が開ける。市の担当プランナー、ケイシー・ショーフラー氏は、付随的用途への限定こそが空き地・低利用地の活用を妨げてきたと説明している。改正は2025年に採択された総合計画「Olympia 2045」の目標29(自給率の向上、環境負荷の低減、気候適応、健康と動物福祉、地域経済の支援のために、地域のパートナーと協働して地域内の食料生産を促す)に裏づけられている。なお本エントリの記載は第一読会可決時点の内容にもとづく(最終採択の日付・条例番号は確認できていない)。
米国ニューメキシコ州バーナリロ郡 都市農業マスタープラン2026(2019年版の改定)
2026自治体公的プログラム米国ニューメキシコ州バーナリロ郡(アルバカーキ市を含む)バーナリロ郡議会が2026年5月12日の運営会議で、4対0の全会一致で「2026年都市農業マスタープラン」を採択した。2019年に作られた元の計画の改定版で、菜園づくり・教育プログラム・地域の緑地を通じて住民の健康を良くすることを目的とする。過去5年で郡のオープンスペース部門はマーブル・オープンスペースの整備、月例の住民会合、都市農業の普及啓発、路地活用プロジェクト(Alleyway Activation Project)、ユース保全部隊の受け入れ、パーマカルチャー助成の運用を実施してきた。住民への聞き取りでは「もっと継続的なプログラム」「文化的に多様なワークショップ」「灌漑と土壌の技術支援」「園芸資材へのアクセス改善」が求められた。改定計画は、(1)都市農業の専任職員を置くこと、(2)教育の連携先と資材共有の仕組みを強めること、(3)住民の関与を深めること、(4)拡大よりも既存拠点の維持を優先することを勧告している。
都市農との関わり: 郡レベルの行政が、都市農業を単発の助成ではなく5年単位の計画として持ち、しかも改定時に「広げるより、いま在るものを維持する」を明記した点が参考になる。とくにインターナショナル・ディストリクト(低所得・多国籍の地区)を対象に、コミュニティガーデンと緑地を健康施策として位置づけている。専任職員の配置を勧告していることは、菜園運営がボランティア頼みでは続かないという実務的な認識の表れといえる。
ベナルマデナ市 生態系配慮型「社会菜園」利用条例の改正(2026年・貸付期間を2年から4年へ)
2026自治体農地保全・貸借スペイン・アンダルシア州マラガ県ベナルマデナ市2026年6月25日、ベナルマデナ市議会本会議が「生態系配慮型 社会菜園(Huertos Sociales Ecológicos)利用条例」の改正を可決した。改正の中身は貸付期間で、これまで2年だった1区画あたりの割当期間を4年に延ばし、さらに1年ずつ2回の延長を認める。区画の割当基準、対象者の要件、維持管理の規則は従来どおり変更していない。採決は国民党・Vox・統一左翼が賛成、社会労働党(PSOE)は棄権。フアン・アントニオ・ララ市長は、菜園は土づくりから収穫まで時間がかかるため2年では成果が出にくく、それが利用希望者の参加のハードルになっていたと説明している。あわせて市有地のハベア通りとアル=バイタール公園(第1期)で新たな区画の整備が進んでいる。
都市農との関わり: 市民菜園の制度でいちばん効くのに、いちばん見落とされやすいのが「何年借りられるか」であることを示す改正。土づくりや多年生の作付け、堆肥の仕込みは2年では回収できず、短い貸付期間そのものが参加をためらわせる。期間を4年+延長2回に伸ばすという最小限の変更で、既存の選考基準を一切いじらずに継続性を上げにいった点が、他都市が模倣しやすい形になっている。
コスタリカ・クリダバ市 市民菜園・共同区画に関する規則案(2026年)
2026自治体公的プログラム提案中コスタリカ・クリダバ市(サンホセ州)クリダバ市長エロル・ソラノが2026年5月に市議会(Concejo Municipal)へ提出した、市内の市民菜園(huertas urbanas)と共同区画(parcelas comunitarias)の設置・組織・運営を定める規則案。市が数年にわたり進めてきた都市農業・コンポスト・バイオ資材・環境教育の取り組みを制度化するもの。生物多様性領域情報センター CITBIO で行う年次の技術研修「アウラ・デ・ロス・ウエルテロス(Aula de los Huerteros)」を位置づけ、農業生産・堆肥化・バイオ肥料・生物的防除・運営管理を教える。菜園には水の確保・十分な日照・管理計画といった最低限の技術要件と、参加者10人以上という要件を課し、市による定期研修とモニタリング・技術/社会両面の評価の仕組みを設ける。2026年8月時点では市議会の審議・承認を経て正式公示される段階。
都市農との関わり: コスタリカでは市民の菜園づくりが自治体やNGOの事業として広がってきたが、明文の規則がないまま運用される例が多かった。クリダバ市の案は、参加人数・水・日照・管理計画という具体的な要件と、行政による研修・モニタリング・評価をセットで書き込む点で、市民菜園を「一過性の事業」から「制度」に移す試みといえる。市内にはコミュニティ菜園クリウエルタ(Currihuerta)など市民主導の菜園があり、そうした既存の取り組みを支える枠組みになりうる。
ニューヘイブン市 都市農業サービス2年間パイロット事業 条例案(2026年・審議中)
2026自治体公的プログラム提案中米国コネチカット州ニューヘイブン市市の食料政策協議会(Food Policy Council)議長ナディーン・ホートンが起草した条例案。市が提案募集(RFP)を出して事業者を選び、市内のコミュニティガーデンの維持管理を含む都市農業サービスを2年間のパイロット事業として担わせる、という内容。2026年8月時点では初期の検討段階で、計画を詰める作業部会が同年9〜10月に動き出す見通しとされる。
都市農との関わり: 市が所有する19のコミュニティガーデンの管理主体が、2026年4月に非営利団体 Gather から市へ返還されて以降定まっておらず、栽培者が問い合わせ先を失っている状況への対応。市は土地・水道・保険の提供に同意しているが、苗・土・資材の費用の出どころは未定で、次の作付期の運営をどう支えるかが焦点になっている。ボランティア頼みの運営から、契約団体による継続的な管理へ移そうとする試みとして、都市農園の担い手をどう制度化するかの実例にあたる。
米国イリノイ州ロックアイランド市 都市農業条例(2026年1月12日可決)
2026自治体土地利用・条例米国イリノイ州ロックアイランド市2026年1月12日に市議会が全会一致で可決した条例(市条例集 第11章「計画・開発」第12編「都市農業」)。コミュニティガーデン、屋上菜園、コンポスト、都市養鶏、都市養蜂を対象に、住民が自分の食べ物をつくる権利を確認したうえで、近隣とのトラブルを避けるための維持管理の基準と、問題が起きたときの執行のしかたを定める。2025年の原案は住民から賛否が分かれ、市の担当課が何度も書き直した経緯がある。最終案では作物の高さ制限が削られ、道路からの後退距離も緩められた。居住中の敷地では作物の高さ制限を設けず、空き地の菜園は敷地境界から10フィート離し、その部分を芝地にすることを求めている。
都市農との関わり: 米国の自治体で、ゾーニング条例に都市農業を明示的に書き込んだ比較的新しい例。2024年の全米都市連盟の報告では、都市農業をゾーニングで明示している米国自治体は22%にとどまるとされる。住民の反発を受けて条例案を作り直し、高さ制限や後退距離を緩めていった過程は、市民の菜園を規制でつぶさずに秩序をつくる線引きの参考になる。
ヤロヴァ市「ケント・ボスタヌ(都市の菜園)」事業(トルコ・ヤロヴァ)
2026自治体公的プログラムトルコ・ヤロヴァ県ヤロヴァ市ヤロヴァ市が市民に土と触れる機会をつくるため、ミッレト・バフチェシ(国民庭園)内に開設した菜園事業。1人あたり25平方メートルの区画を、育てる作物の生育期間にわたって使う権利として渡す。ブロッコリー・カリフラワー・白キャベツ・赤キャベツといった季節の野菜の栽培を想定する。定員は120人で、超過した場合は抽選で決める。申請先はヤロヴァ・ミッレト・バフチェシ内の農業サービス局で、2026年の募集は9月7日が締切。
都市農との関わり: 都市公園の一角を市民の栽培区画として開く運用例。年単位ではなく「作物の生育期間」を単位に貸すため、季節ごとに使い手が入れ替わる。公園緑地の管理部局ではなく農業サービス局が所管している点も、都市農業を行政の農政側に位置づけた例として参考になる。
リヨン市 市民共同菜園憲章と共同菜園・都市農業イニシアティブ補助金公募(2026年度)
2026自治体公的プログラムフランス・リヨン市リヨン市(地域開発局)が毎年出す補助金公募。対象は(1)既存または新設の共同菜園の運営・整備(技術的・用地的な実現性が確認済みのもの)、(2)都市農業の普及・啓発の取り組みの2本立てで、申請できるのは市の「市民共同菜園憲章(Charte des jardins citoyens et partagés)」に沿って活動する団体。水資源の節約に配慮した計画と、菜園をより広い層に開く計画が優先される。2026年度分の申請締切は2025年11月16日、受付は市の補助金ポータル。
都市農との関わり: 共同菜園を「憲章に沿って運営する団体」として位置づけ、そこへ毎年の運営費補助を回す仕組み。土地の手当てと運営資金が別々に手当てされるため、団体は用地交渉と資金調達を分けて計画できる。日本の市民農園制度と違い、区画の貸付ではなく団体の活動そのものを支える点が特徴。
タシケント市・サマルカンド市のFAO「グリーン・シティーズ」ネットワーク加盟(2026年)
2026自治体公的プログラムウズベキスタン・タシケント市/サマルカンド市2026年8月20日、ローマのFAOグリーン・シティーズ・イニシアティブ事務局が両市に加盟証を発行した。同ネットワークは(1)都市・近郊林業、(2)都市・近郊農業、(3)持続可能なバイオエコノミーの3分野を束ねて取り組む都市の集まりで、2020年発足・2030年までに1,000都市を目標とする。両市はまず自己評価を行って優先課題を洗い出し、それに合わせた技術支援を受ける。参加は「グリーン・シティーズ・コミュニケ」とFAOのグリーン・シティ原則・基準に沿って進める。
都市農との関わり: 都市・近郊農業を柱の一つに据えた国際枠組みに中央アジアの都市が入った例。自己評価と技術支援を通じて、市民が関われる菜園や近郊の農地をどう位置づけるかが今後の計画に書き込まれていく。ウズベキスタンで都市農を明示的に扱う公的な枠組みとしては初期のもの。
ソールズベリー市議会 市民農園戦略 2026–2031(草案)
2026自治体農地保全・貸借提案中英国イングランド・ソールズベリー市(ウィルトシャー)ソールズベリー市議会がまとめた5年間の市民農園戦略の草案(文書番号 ENV/PG/002、2025年12月9日公表、次回見直し2031年12月8日、所管は環境委員会)。市議会は市内12か所で650を超える区画を管理しており、いまの提供のしかたをどう保つか、質と利用しやすさをどう上げるか、これから増える需要にどう備えるかを示す。区画の申込は市(教区)の区域内に住む人に限っている。人気の高い場所では待機の列が動きにくいとしている。
都市農との関わり: イングランドの市民農園は1908年の小自作農地・市民農園法の系譜で、自治体に区画を用意する義務が置かれてきた。ただし義務があっても、区画の質・待機の長さ・車いすでも入れるかどうかは戦略と予算の話になる。5年の期間と見直し日を明記した文書を置くこと自体が、単年度の予算に流されずに手を入れ続けるための仕掛けである。650区画・12か所という規模も、日本の市民農園を考えるうえで比較の目安になる。
ハックニー区「Right to Grow」決議と遊休区有地の栽培パイロット(英国ロンドン)
2026自治体農地保全・貸借英国・グレーターロンドン ハックニー区2026年3月4日の本会議でRight to Grow決議を可決し、ロンドンで2番目の採択区となった。2026年9月には遊休区有地を住民グループが果物・野菜・ハーブ・花の栽培に使えるパイロットを開始。近所の住民同士のような任意のグループでも5人以上なら申請でき、申請は無料。対象は区有建物のまわりの土地、道路沿い、空いた緑地で、区立公園は含まない。植え付け前に区の許可を得て適地かどうか審査を受ける。第1期は最大10件を承認し、以降の募集も続ける。整備と維持の費用はグループ負担。
都市農との関わり: 決議を宣言で終わらせず、申請窓口と承認件数を決めた運用にまで落としている点が要点。ハックニーRight to Growやキャピタル・グロウスといった団体が適地探し・資材・研修・助言を支える。区長の『Who Owns Hackney』(土地の利用と所有を洗い出す取り組み)の一部として、公有地を住民の利用に開く流れに位置づけられている。
ナイロビ県都市・近郊農業政策
2025自治体振興・基本法提案中ケニア・ナイロビ県ナイロビ県が策定中の都市・近郊農業専用政策。ベランダ、廊下、バルコニーなど住宅内での栽培や、小規模インフラを活用した農業を対象。都市農家と地方自治体の紛争を防ぎ、安全性を確保しながら農業実践をガイドすることを目的とする。2025年2月時点で策定作業は最終段階にあり、ナイロビ県の Chief Officer of Food, Agriculture, and Natural Resources が推進中。
都市農との関わり: ナイロビを含むケニア都市部ではほぼ全国レベルの都市農業政策がなく、本政策が他県のモデルとなる可能性が高い。技術進展により狭い空間での栽培が可能になったことで、密集都市でも市民参加が容易になる見込み。
クラクフ区画型コミュニティガーデン・パイロット・プログラム(2025)
2025自治体公的プログラムポーランド・クラクフ市ポーランド・クラクフが2025年に開始した最初の区画型コミュニティガーデン・パイロット・プログラム。市民が指定区画で野菜栽培を実施。生態的実践、コミュニティ参加、社会的イノベーションを促進し、EU の持続可能性・包括性・気候レジリエンス目標に合致。
都市農との関わり: 市民参加型の都市ガーデン推進を通じて、食料自給性の向上、生態的実践の拡大、社会的結束の強化を実現。EU 規格への適合も促進。
デトロイト市 コミュニティコンポスティング政策イニシアティブ
2025自治体公的プログラム米国ミシガン州デトロイト市デトロイト市が実施するコミュニティコンポスティングパイロットプログラム。市民主導のコンポスト活動を支援し、食品廃棄物削減と有機資源循環を推進。市の都市農業復興戦略の一部。
都市農との関わり: 市の都市農業復興計画の核となる政策。市民のコンポスト実践を通じて、食品廃棄物削減とコミュニティガーデンへの有機肥料供給を実現。
アレクサンドリア市 食品廃棄物コンポスティング・プログラム
2025自治体公的プログラム米国バージニア州アレクサンドリア市アレクサンドリア市が2025年7月1日から開始した自発的・有料型食品廃棄物コンポスティング収集プログラム。既存ゴミ・リサイクル収集サービスの利用者を対象。
都市農との関わり: 都市部の有機廃棄物管理を制度化し、市民参加型のコンポスト化を促進。コミュニティガーデンや都市農場への肥料循環を支援。
ヘルシンキ大学・Viikki Food Design Factory都市農業支援プログラム(2025-2026)
2025自治体公的プログラムヘルシンキ市(フィンランド)ヘルシンキ大学とViikki Food Design Factoryが協働する都市農業支援プログラム。学生マイクロファーム実験、食システム教育、地域フード・サーキュラリティ実現に向けた制度的支援。
都市農との関わり: 教育機関による都市農業の実践的制度化。若世代への食農教育、大学キャンパス内での持続可能な食システム構築の実験的枠組み。
デトロイト市動物飼養条例(2025年)
2025自治体土地利用・条例米国デトロイト市デトロイト市議会が承認した動物飼養条例。住宅地での鶏・アヒル・ミツバチの飼養を許可。鶏・アヒルは最大8羽、ミツバチは最大4箱。都市農業の推進と市民の食料主権確保を目的。
都市農との関わり: 市民参加型の都市農業を法制度面で支援。10年以上の市民運動を経て実現。食料自給と地域フードシステムの構築を推進。動物を含む多次元的な都市農業活動を可能に。
ポーランド・クラクフ市民農園イニシアティブ(2025年)
2025自治体公的プログラムポーランド・クラクフ市クラクフ市が初の区画貸与型市民農園を開設。市民に指定区画での食糧栽培機会を提供。生態的実践、コミュニティ参加、社会イノベーションを促進。
都市農との関わり: 中欧における市民農業の成長を示す。EU の持続可能・包摂的・気候適応的都市開発目標を実現。
ホープウェル市 ゾーニング条例改正(都市農業用途・運用基準の追加、2025年)
2025自治体土地利用・条例米国バージニア州ホープウェル市米国バージニア州ホープウェル市の市議会が2025年10月14日に承認した、市ゾーニング条例の改正。「都市農業(Urban Agriculture)」という用途区分と、その運用基準(Performance Standards)を条例に加えるもので、2025年11月14日に施行された。市が10月16日に出した告知では、市内での持続可能な食料生産と緑地の確保に道を開く改正と説明されている。条例上の定義では、養蜂と蜂産品の生産・販売を除いて家畜・動物・畜産物の生産販売は都市農業に含めないとしたうえで、市街地の菜園やCSA(地域支援型農業)を例示している。
都市農との関わり: 都市農業がゾーニング条例に明記されていない自治体では、市民の菜園やCSAが「どの用途に当たるか」で判断が揺れ、開設のたびに個別協議が必要になる。用途区分と運用基準をセットで条例に書き込むことで、どの地区でどんな条件なら農的な土地利用ができるかが事前に読める状態になる。人口2万人台の小規模都市が既存の条例改正だけでこれを整えた例として、同規模の自治体が参照しやすい。
キト首都特別区 都市菜園振興条例(「健康な食の地区」=Barrios de Alimentación Saludable、2025年)
2025自治体振興・基本法エクアドル・キト首都特別区2025年4月29日、キトの首都圏議会が都市菜園の創設を促す条例を承認した。市議のウィルソン・メリーノがそれまでばらばらに出ていた4本の提案を1本にまとめ、アナリア・レデスマとの共同提案として成立した。柱は3つ。(1) 市有地のうち使われていない・活用が足りない場所に菜園を開き、「健康な食の地区(Barrios de Alimentación Saludable)」をつくること。(2) 新しい住宅開発に、都市菜園のためのスペースを設けることを義務づけること。(3) アグロエコロジー/有機の栽培方法を推奨すること。市の経済振興公社 ConQuito が種と講習を住民に提供し、収穫物は各ゾーン行政区と ConQuito が開く「ビオフェリア(bioferia、有機の市)」で売る。条例は既存の伝統市場に不利益を与えないことを明示している。市内の都市菜園は現在およそ2,000か所で、2030年までに4,000か所への倍増を掲げる。
都市農との関わり: 市民が耕す場所を「あれば良いもの」から行政の仕組みに引き上げた条例で、都市農業に関わる人にとっては用地・種・講習・販路が一続きで用意される点が大きい。とくに新規住宅開発への菜園スペース義務づけは、都市が育つ過程であらかじめ耕地を確保する数少ない制度例にあたる。キトはこれ以前から参加型都市農業プログラム AGRUPAR(2002年〜)を持っており、本条例はその実績の上に法的な後ろ盾を足したものと読める。
サラマンカ市 市民菜園規則(2025年改定)
2025自治体公的プログラムスペイン・サラマンカ市サラマンカ市議会が2025年3月20日の本会議で最終承認した、市民菜園の新しい規則。利用許可の期間を4年とし、延長はできないと定めた(許可は毎年12月1日開始)。区画の交換は、当事者の合意があるか空き区画がある場合に認められる。再度当選した利用者は、7日以内に辞退しない限り従来の区画を継続できる。正当な理由なく2か月を超えて手入れを怠り放置した場合は許可を取り消す。割当は市役所への登録順を基本とし、空きがある地区については希望を加味する。あわせて、利用者の中から抽選で選ばれた代表が加わる「菜園評議会(Consejo de Huertos)」を新設した。
都市農との関わり: 市民菜園の「使い続けられる期間」と「手放させる条件」を明文化した、運用規則の実例。4年・延長なしという上限は待機者に回すための設計で、放置区画の取り消し規定とあわせて、限られた区画をどう配分するかという都市農の共通課題への一つの答えになっている。利用者代表が入る評議会を置いた点は、行政が貸すだけの制度から利用者が運営に関わる制度への一歩として参考になる。
米国ニューオーリンズ市 被覆作物(カバークロップ)を雑草から除く条例改正(2025年)
2025自治体土地利用・条例米国ルイジアナ州ニューオーリンズ市2025年10月9日に成立した、市の「最低限の資産維持管理規定(Minimum Property Maintenance Code)」の改正。第26-160条(a)(b)および第66-312条(a)の「雑草」の定義から、栽培された花・菜園・被覆作物を明示的に除外した。あわせて第26-150条に被覆作物の定義を新設し、「侵食を遅らせ、土壌を改良し、水の保持を高め、雑草を抑え、病害虫を抑制し、生物多様性を高めるために一時的に植えられる作物」であって「雑草とはみなさない」と定めた。
都市農との関わり: 都市の農家や市民菜園が、収穫と収穫のあいだに緑肥・被覆作物を播くと、雑草の繁茂として是正命令や罰金の対象にされてきた。この改正はその衝突を条文レベルで解消するもので、土を裸にしない栽培を市の維持管理規定が罰しないようにした。景観条例と有機的な栽培がぶつかる場面は各地にあり、条文の書き換え方の実例として使える。
メラム区 ホビ・バフチェレリ(趣味の菜園)貸付制度(トルコ・コンヤ県メラム区)
2025自治体公的プログラムトルコ・コンヤ県メラム区メラム区が区民に菜園区画を5年間貸し付ける制度。割当料5,000トルコリラに加え、年額5,000トルコリラの賃料を2回に分けて納める。応募は18歳以上のメラム区民に限られ、同一住所からは1人だけ。区画数を超える応募があれば公証人立会いのもとで抽選し、結果はSMSで通知する。2025年の募集期間は1月15日から31日で、申請は専用サイトから受け付けた。契約は同年4月1日以降に締結する。
都市農との関わり: 都市住民が自治体の用意した区画で自ら野菜を育てられる公的な仕組みで、トルコの各自治体に広がる「ホビ・バフチェシ(趣味の菜園)」型の市民農園制度の一例。5年という比較的長い貸付期間と有料制、抽選による公平な配分が特徴。
ベイリキデュズ区 ホビ・バフチェレリ(趣味の菜園)無償貸付制度(トルコ・イスタンブール)
2025自治体公的プログラムトルコ・イスタンブール県ベイリキデュズ区ベイリキデュズ区が1区画15平方メートルの菜園133区画を区民に無償で貸し付ける制度。貸付期間はおよそ1年で、区の第6期にあたる2025年の募集は1月10日から24日まで受け付け、2月16日にベイリキデュズ・アタテュルク文化芸術センターで抽選を行い、翌17日までに当選者を公表した。条件は行為能力を持つ個人であること、区内に居住していること、区に対する未納がないこと。申し込みはオンラインまたはホビ・バフチェレリ管理棟で受け付ける。
都市農との関わり: 人口の密集するイスタンブールの一区が、市民に小区画を無料で開放している事例。有料のメラム区型と対照的に、費用負担なしで土に触れる機会を確保する設計になっており、募集ごとに抽選で入れ替える運用と合わせて、限られた区画をどう配るかの実務例になる。
サザーク区議会「Right to Grow(育てる権利)」決議(英国ロンドン)
2025自治体農地保全・貸借英国・グレーターロンドン サザーク区2025年3月3日に採択された決議。区は市民の食料栽培や野生生物プロジェクトに適した公有地すべてを示す無料で誰でも見られる地図を整備し、コミュニティ団体が無償のリースを容易に得られるようにする。区が土地を売却する場合には団体が入札できるようにすることも含む。ロンドンの区で初の採択。決議の枠組みはNPOインクレディブル・エディブルが起草し、ロンドンの食料栽培ネットワークであるキャピタル・グロウスが普及を進めている。
都市農との関わり: 区のコミュニティ・ガーデニング・チームは2020年以降に21か所の菜園と241区画をつくってきた。Right to Grow はその支援を土地アクセスの手続きとして制度化し、市民団体が公有地を探して借りるまでの道筋を明文化する。同じ枠組みを他の自治体が採る際の雛形にもなっている。
クアチス市「都市菜園プロジェクト(Projeto Horta Urbana)」
2025自治体公的プログラムブラジル・リオデジャネイロ州クアチス市クアチス市が公募(edital)で回す都市菜園の事業。市街地と近郊で、野菜・豆類・花・薬草・小果樹の栽培に加えて、養魚と手づくりの食品加工まで対象に含める点が特徴。第1サイクル(2025/2026年度)では、菜園に充てる土地を登録する「区域認定(Credenciamento de Áreas)」の受付を2025年10月22日まで、耕す人を募る「関心表明(Manifestação de Interesse)」の受付を同年11月1日から28日まで置く二段構えをとった。
都市農との関わり: 土地の登録と耕し手の募集を別々の公募に分けることで、「空いている土地」と「耕したい人」を市が突き合わせる仕組みになっている。土地を持たない住民が都市農業に入る道をつくる方式として、小規模自治体でも回せる形を示す。
ポモナ市条例第4345号 ゾーニング・開発コード改正(2024年)
2024自治体土地利用・条例米国カリフォルニア州ポモナ市ポモナ市が1950年代以降初めてゾーニング・開発コードを包括的に改正。コミュニティ・コンポスティングへの障壁を大幅に削減。都市農業運営に関する制限を緩和。
都市農との関わり: 半世紀以上ぶりのゾーニングコード改正により、都市農業関連の規制障壁を大幅削減。特にコンポスティング施設の設置許可が容易に。有機資源循環と市民参加型農業の推進。
スウェーデン・ストックホルム市民農園地域政策(2024年)
2024自治体振興・基本法スウェーデン・ストックホルム市ストックホルム市が持続可能性政策の中で市民農園を重要な施策として位置付け。年間契約ではなく長期リース制度の確保が課題。
都市農との関わり: 北欧の先進的都市における市民農業の位置付けを示す。長期的運営の安定性が市民参加を促進。
ウィントフック市 アフリフードリンクス(AfriFOODlinks)都市農業・食環境事業の助成
2024自治体公的プログラムナミビア・ウィントフック市ウィントフック市が、アフリカと欧州の65都市超が参加する都市食料事業「アフリフードリンクス(AfriFOODlinks)」から72万8,000ナミビア・ドルの助成を確保し、2025年に市内の食環境・都市農業・持続可能性の取り組みを強化する事業を実施するもの。アフリフードリンクスは食料と栄養の安全保障の改善を目的に掲げ、あわせて環境・気候面の便益をもたらすことを狙う。
都市農との関わり: 市民の都市菜園を市の食料政策の一部として位置づけ、都市間ネットワークの外部資金で実施体制を支える形。自治体の一般財源だけでは予算がつきにくい都市農業に、国際的な資金を充てた例として参考になる。
アロヨ・デ・ラ・エンコミエンダ町 エコ市民菜園 規制条例(2024年改定・スペイン バリャドリッド県)
2024自治体農地保全・貸借スペイン・カスティーリャ=レオン州バリャドリッド県アロヨ・デ・ラ・エンコミエンダ町町営のエコ市民菜園(huertos ecológicos urbanos)の利用ルールを定める条例で、2008年3月版を全面的に見直したもの。2024年4月の町議会で全会一致により暫定承認された。運用のなかで見つかった不正な使われ方への対応として、応募資格の住民登録年数を1年から4年に引き上げ、実際に居住していることの確認を求める。区画は1住所(1家族単位)につき1区画に限り、住民登録のない第三者への譲渡を禁じる(配偶者への引き継ぎは認める)。割当は抽選で、期間は4年、さらに4年の更新が可能。落選者は申込順の待機リストに載る。申込受付期間は10日から15日に延長された。改定後の区画の引き渡しは2024年12月1〜10日、作物が休眠する時期に行うとされた。
都市農との関わり: 市民農園の「誰に、どれだけの期間、どういう条件で貸すか」を、実際に起きた又貸し・名義貸しといった問題を踏まえて締め直した実例。区画数が需要に足りない自治体が、公平性をどう保つかという設計(居住年数・1世帯1区画・抽選・期限つき更新)が具体的に読める。
ハル市『Right to Grow(育てる権利)』決議
2023自治体公的プログラム英国ハル市2023年9月、英国で初めて市議会が全会一致で可決した『育てる権利』の決議。市有の未利用地で住民・団体・近隣グループが食物を育てられるよう、市が適地マップを作成し、保険や水の確保といった実務上の障壁の解消を支援する。Incredible Edibleの全国運動に基づく。
都市農との関わり: 市民による公有地での食物栽培を『権利』として位置づけた先進事例。コミュニティの食・健康・荒廃地の再生につながり、他都市への波及が期待される。
アムステルダム・フード戦略(Voedselstrategie、2030年までに地域産25%)
2023自治体公的プログラムオランダ・アムステルダム市アムステルダム市が2025年に推進中の都市農業イニシアティブ。屋上農場を新築建設に組み込むことを助成金、建築基準改定、LEED認証ポイントなどでインセンティブ。2030年までに市内食料需要の25%をローカル供給、2026年までに市民参加の認識を20%に高めることを目標。
都市農との関わり: 市街地での食料自給率向上;環境負荷の低減(水使用量・農薬削減);都市緑化と生物多様性保全;市民参加型の食料システム構築;建築基準と都市計画への統合。
デトロイト市 Farm-A-Lot グラント・プログラム
2023自治体税制・補助米国ミシガン州デトロイト市デトロイト市が2023年に設立した都市農業局(Urban Agriculture Division)による支援プログラム。市民のアーバンファーミングプロジェクトに対し、市営用地へのアクセスと資金を提供。2026年には9つのローカル農業プロジェクトをオンボード。
都市農との関わり: 市営地の活用と資金支援を通じて、市民参加型アーバンファーミングを実現。食料セキュリティ、コミュニティ形成、雇用創出を促進。
フィラデルフィア都市農業計画「Growing from the Root」
2023自治体食農政策米国ペンシルベニア州フィラデルフィア市フィラデルフィア市公園・レクリエーション局が、黒人・ブラウン系の草の根アグロエコロジー連合 Soil Generation や都市計画事務所 Interface Studio と共同で策定した、市初の都市農業計画(2023年公表)。全地区での栽培空間へのアクセス確保や、市の政策・プログラムへの都市農業支援の組み込みなど6つの目標を掲げる10年計画。最大の課題として土地の安定的確保(land security)を据える。
都市農との関わり: 空き地に育ったコミュニティ・ガーデンの多くが法的に土地を所有せず再開発で失われてきた問題に対し、ランドバンクを通じた永続的な土地アクセスの確保を打ち出すなど、市民主導のコミュニティ農園の存続を市政策として支える枠組み。
アムステルダム市 食料戦略(Voedselstrategie)
2023自治体食農政策オランダ・アムステルダム市アムステルダム市の食をめぐる包括的な政策方針。食の社会的機能、健康的な食環境、地域生産と消費の結びつき、食品ロス削減、植物性たんぱく質の推進など6つの行動ラインからなり、2023〜2026年の実行アジェンダで具体化されている。市民・大学・研究機関・農家・企業と連携し、循環型で環境にやさしい食のシステムへの転換をめざす。
都市農との関わり: 地域生産と都市の消費を結びつけ、市民菜園(moestuinen)や近郊農を含む短い食のサプライチェーンを後押しする政策枠組み。市が都市農やコミュニティガーデンに用地・支援を振り向ける根拠となる。
カバニージャス・デル・カンポ町 市民菜園 規制条例(2023年)
2023自治体公的プログラムスペイン・カスティーリャ=ラ・マンチャ州グアダラハラ県カバニージャス・デル・カンポ町2023年5月19日の臨時本会議で町議会が承認した、新設の市民菜園を規制する条例。菜園はハドラケ通り沿い、カニャダ・ガリアナに接するマルチャマロとの境界近くにあり、1区画25㎡の30区画、全体で1,500㎡。園芸に関心のある町民が対象で、条例は各区画の割当手続き、利用者ごとの許可期間、公定料金、認められる用途と禁止される用途を定める。承認前に1か月を超える縦覧期間を置き、承認後にもさらに1か月の意見提出期間を設けたうえで施行する手順を踏んだ。
都市農との関わり: 人口規模の小さい自治体が、30区画・1,500㎡という小さな市民農園を始めるときに何を条例で決めておくのかを示す実例。割当手続き・期間・料金・禁止事項という最小限の骨格に絞られており、大都市の制度より移植しやすい参照例になる。
ウェリントン市 食料システム行動計画「Te Anamata ā-Kai o Tō Tātou Tāone/Our City's Food Future」(2023年)
2023自治体食農政策ニュージーランド・ウェリントン市(テ・ファンガヌイ・ア・タラ)2023年2月22日にウェリントン市議会が公表した、食料システム全体の行動計画。食べものを育て、加工し、運び、分け、食べ、生ごみを処理するまでの一連の流れを対象に、持続可能で公平・健康的でレジリエントな食のしくみをめざす。気候変動戦略「Te Atakura First to Zero」とマオリの戦略「Tūpiki Ora」に接続して位置づけられている。
都市農との関わり: 市民が市内で食べものを育てる場を、行政計画の中に明示的な行動として書き込んでいる点で都市農に直結する。計画は新しい地域の食の場を立ち上げること、クムトトやブルックリン・ロンゴアー菜園といった伝統的な栽培地(カイの畑)を支えること、地域コンポスト拠点の試行、種と苗を分け合う Seeds to Feeds のイベントやローカルフード週間の開催、ミラマー地区の生ごみ収集の試行をふまえた市全域の堆肥化モデルづくりを掲げる。
デリー市民都市農業政策案
2022自治体食農政策提案中インド・デリー市デリー市政府に2022年9月提出。総合的な都市農業フレームワーク。屋上・台所庭園、空き地農業利用、市場開発、動物飼育政策、啓発活動を推奨。デリーの既存慣行を基盤に策定。
都市農との関わり: 市民参加型農業の総合的枠組み。屋上利用から空き地活用、市場構築まで包括。デリー市民の食糧主権実現の戦略。
ポーランド・クラクフ「都市農業計画」
2022自治体振興・基本法ポーランド・クラクフクラクフ市が開発した都市・近郊農業計画。都市計画システムに都市農業を統合し、市民農業の政策的承認を実現。トリン、ローマ、ゲント、ブリストル、オスロ、ヴィリニュスと並ぶ先進都市として、UPA(都市農業)計画・規定を策定。市民参加型農業を都市開発計画の中心要素として制度化。
都市農との関わり: 都市計画システムにおける都市農業の公式承認、トップダウン・ボトムアップの統治モデル統合。地域コミュニティの自主性と行政支援の最適バランス実現。ポーランドの社会主義後社会における市民参加型都市復興の実例。
コロンボ市「アーバン・ハーベスト」都市食料生産プログラム(2022年)
2022自治体公的プログラムスリランカ・コロンボ市2022年のスリランカ経済危機(食料・燃料不足)を受けて、コロンボ市(Colombo Municipal Council)が市民の食料生産を支えるために立ち上げたプログラム。市長と市が主導し、市域内の公有地240ha超(約600エーカー)を作物栽培用に区画して開放したうえで、住民には空き地・家庭菜園・ベランダ・屋上のあらゆる場所を使うよう呼びかけた。市庁舎周辺にも菜園を設けている。市の専用ページからは、農業普及サービスのホットライン1920(毎日8:00〜16:15、週末・祝日も対応)、農業省の農業チャンネル Krushi TV、全国農業情報センターにつながる。
都市農との関わり: 経済危機のさなかに自治体が都市農業へ舵を切った、近年でもっとも規模の大きい例のひとつ。土地の開放(公有地240ha超)と、普及指導への到達手段(ホットライン・TV・情報センター)をセットで用意した点が実務的な学びどころで、「呼びかけ」だけで終わらせない設計になっている。危機時の都市農業という点では、キューバ(1990年代)やウクライナ(戦時)と並べて語られることが多い。スリランカはこのデータベースに制度が1件も無かった国。
ラス・ロサス市 市営市民菜園 利用規則(2022年)
2022自治体公的プログラムスペイン・マドリード州ラス・ロサス・デ・マドリード市2022年10月20日に市議会が承認し、同年11月28日のマドリード州公報(BOCM 第283号)に公示された、市営市民菜園の利用規則。区画は、個人向けの独立型モジュール区画66区画(各7.68㎡)、市の登録団体・学校向けの地面区画8区画(各約60㎡)、そして障害のある人のための予約区画7区画で構成される。対象は市民個人・市の登録団体・教育機関。当初の許可期間は2年で、その後延長された(延長分は2026年2月28日で満了し、2026年3月から新たな募集が始まった)。目的は「遊びと学びを兼ねた」活動を通じて、環境に配慮した技法による持続可能な都市農業を広めることとされている。
都市農との関わり: 個人向けの小さなモジュール区画、団体・学校向けの広い地面区画、障害のある人向けの予約枠という三層の設計が特徴で、市民菜園を「個人の区画配分」だけで考えない書き方の実例になっている。7.68㎡という小さな単位は、限られた市有地に多くの参加者を入れるための工夫として参照できる。
チューリヒ市 庭園規程(Gartenordnung der Stadt Zürich/GOZ、2022年3月1日施行)
2022自治体農地保全・貸借スイス・チューリヒ市チューリヒ市の緑地部局グリュン・シュタット・チューリヒ(Grün Stadt Zürich, GSZ)が貸し出す菜園用地の利用ルールを定めた規程。2022年3月1日から施行され、市建築・区域条例(BZO)第80条にいうレクリエーション区域 E3 にある GSZ 管理の貸付地すべて、すなわち単独区画(Einzelparzellen)・ファミリーガーデン(Familiengärten)・共同菜園(Gemeinschaftsgärten)に適用される。あわせて貸付の原則(Grundsätze der Verpachtung)が定められており、ファミリーガーデンの区画はチューリヒ市に居住する人にのみ貸し付けること、新規の貸付では単身者よりも園芸グループや子どものいる家族を優先することが明記されている。栽培はすべて有機栽培の原則に従うものとされ、化学肥料と化学合成農薬の使用、およびあらゆる廃棄物の焼却を禁じる。園小屋の新築や構造の変更には GSZ の承認が必要。
都市農との関わり: 市民農園の割当てを「早い者勝ちの待ち行列」ではなく、居住要件と優先順位のルールで設計している点が参考になる。とくに新規貸付で単身者より園芸グループや子どものいる家族を優先するという条項は、区画を個人の趣味の場ではなく、複数人が関わる場として位置づける意思を制度化したもの。ファミリーガーデン(クラインガルテン)と共同菜園(Gemeinschaftsgärten)を同じ規程のもとに置き、どちらにも同じ有機栽培義務を課している構成も、性格の異なる2つの都市農をひとつの用地制度で扱う例として読める。適用範囲を都市計画上の区域(E3)で定義しているため、規程と区域制が結びついている。
ニューヨーク市 都市農業局(2021年市条例 121・123号)
2021自治体公的プログラム米国ニューヨーク市2021年の市条例(Local Law 121・123)により、市長直属の都市農業局と都市農業諮問委員会を設置。都市農業のオンラインポータルや事例マップ、教育・普及、政策提言を担う。
都市農との関わり: 市民菜園・都市農業者が情報・支援に一元的にアクセスできる窓口を制度化。GreenThumbと並ぶNYCの都市農基盤。
モントリオール都市農業戦略
2021自治体公的プログラムカナダ・ケベック州モントリオール市モントリオール市2021-2026年戦略。耕地面積を120ヘクタールから160ヘクタールに拡大。学校での都市農業推進、農業ビジネス増加。市民と多くのステークホルダーの協力で策定。コミュニティ庭園97カ所運営。土壌、堆肥、道具、水を提供。
都市農との関わり: 市民参加型農業の拡大戦略。学校教育との統合と地域経済活性化を組み合わせ、都市農業の制度化を推進。
ベルリン・コミュニティ庭園プログラム
2021自治体振興・基本法ドイツ・ベルリン州ベルリン環境交通気候保護局が2021年3月開始。参加型でコミュニティ庭園プログラムを作成。近所庭園、教育庭園、気候庭園、異文化庭園など多様な形態。プラットフォーム・プロダクティブ・シティグリーンが2019年に設立。
都市農との関わり: 多様な市民参加型庭園形態を支援。教育、気候変動対策、文化交流を統合した総合的プログラム。
キト市土地利用・開発計画 食料安全保障規定(2021年)
2021自治体食農政策エクアドル・キト市キト市が都市計画に食料安全保障を基本戦略として組み込み。包摂的・生態的発展の基盤として都市農業と関連する食料システムを位置付け。
都市農との関わり: 南米における市民農業の長期的振興政策の事例。2002年開始の AGRUPAR プログラムと連携して 20 年以上継続。
ヴィリニュス市 都市園芸に関する規則および市民向け手引き(2021年)
2021自治体公的プログラムリトアニア・ヴィリニュス市2021年3月、ヴィリニュス市議会が都市園芸に関する新しい規則を承認し、市が市民向けの都市園芸の手引きを公表した。市の環境部門とURBACTの地域グループ(園芸愛好家・NPO・学校・環境省)が一緒に作った枠組みで、共同菜園の設置手続き、種の分け合い、園芸の指導者(Gardenizer)養成研修、幼稚園での環境教育などをひとまとまりの施策として位置づけている。現在は市の都市開発戦略プログラム「CITY+」に正式に組み込まれている。
都市農との関わり: ヴィリニュスでは市民が自由に使える空き地の多くが民有地・国有地で、共同菜園は長らく市の支援なしに存在してきた。2021年の規則はその状態を変え、住民が公有地で菜園を始めるときの手続きを明文化した。市が特に狙うのは、人口の約6割が暮らすソ連期の大規模集合住宅地区(いわゆる「眠りの街」)で、菜園を社会的孤立を解く手立てとして使うこと。日本の団地や郊外住宅地で共同菜園を制度化する際の参考になる。
ブラチスラバ市 コミュニティガーデン支援制度(Bratislavskí susedia)
2021自治体公的プログラムスロバキア・ブラチスラバ市2021年4月に始まった市の「Bratislavskí susedia(ブラチスラバの隣人たち)」事業。市民が使われていない市有地を「養子」にしてコミュニティガーデンや前庭に変えられる仕組みで、市は緑化部局の専門相談、あらかじめ承認済みの市有地14区画、書式のひな型、広報素材のデザイン支援を提供する。利用には市民団体(会員3名以上、登録手数料66ユーロ/電子申請なら33ユーロ)の設立と賃貸借契約が必要で、市有地の賃料は象徴的な1ユーロ。区画によっては栽培床50㎡・占用面積200㎡までの上限がある。
都市農との関わり: 市民が土地を持たなくても市有地で共同菜園を始められる、中欧では珍しい常設の窓口。非営利であること(収益はすべて共有空間の維持・整備に充てる)が条件で、市の助成プログラム「Komunity」から整備費の助成も申請できる。土地の確保と法人格という、コミュニティガーデン立ち上げの二大障壁を市の側から下げている点が参考になる。
スコティッシュ・ボーダーズ州議会 コミュニティ食料栽培戦略「カルティベイティング・コミュニティーズ」2021–26
2021自治体食農政策英国スコットランド・スコティッシュボーダーズ州コミュニティ・エンパワメント(スコットランド)法2015 第9部は、スコットランドの各自治体に食料栽培戦略の策定を義務づけている。(1) 市民農園(allotment)の用地になりうる土地を特定すること、(2) それ以外の共同栽培に使える土地を特定すること、(3) とくに社会経済的に不利な地域で共同栽培の場をどう増やすかを示すこと、の3点を書くことが法律上の内容。スコティッシュ・ボーダーズ州議会はこれに応じて「カルティベイティング・コミュニティーズ」を2021年に定め、対象期間は法の要求に合わせた5年(2021–26年)としている。同州議会自身が管理する市民農園は6か所93区画(ピーブルズの The Gytes・Burgh Hall・Moss Park、インナーリーゼンの Miller Street、ホーウィックの Guthrie Drive・Wilton Park Road)。区画の年額は61ポンドで、一定の給付受給者は半額。待機期間はホーウィックで2年弱、ピーブルズで3年ほどと案内されている。
都市農との関わり: 「市民が耕す場所を用意する」ことを自治体の裁量ではなく法定義務にした、数少ない例の一つ。スコットランドでは各自治体が土地を探して計画に落とし、5年ごとに更新することが法律で決まっているため、市民の側は「うちの自治体の戦略には何が書いてあるか」を根拠に交渉できる。ボーダーズの数字(93区画に対して2〜3年の待機)は、義務化しても供給が需要に追いついていない現実も同時に示しており、制度を評価するときの参照値になる。
スコピエ市「市初の都市菜園の整備」事業(共同菜園ボスタニエ)
2021自治体公的プログラム北マケドニア・スコピエ市スコピエ市が市予算から200万デナルを拠出し、市民団体「緑の箱舟(Зелена Арка)」がノヴォ・リシチェ公園内に市初の都市菜園「ボスタニエ」を整備・運営する事業。市は資金に加え、有資格の専門家による持続可能な園芸の実地研修を参加者に提供する。エアロドロム区、公営企業「公園と緑地」、林学部、建設研究所、社会的責任を掲げる複数の企業が協力している。菜園は2021年8月に開園し、2022年5月2日に一般来訪者へ開かれた。
都市農との関わり: 都市菜園の制度が整っていない国で、自治体が土地・資金・研修を出し、日々の運営は市民団体に委ねるという分担で最初の市民菜園を立ち上げた例。条例のような恒久的な枠組みではなく市の一般予算による助成事業として始めた点が、同じように前例のない都市が真似しやすい形になっている。
ブルアンSAE(統合型アーバンファーミング事業)
2020自治体公的プログラムインドネシア・バンドン市バンドン市食料農業局(DISPANGTAN)が2020年に開始した統合型都市農業事業。「Buruan」は庭、「SAE」はSehat(健康)・Alami(自然)・Ekonomis(経済的)の頭字語。野菜だけでなく畜産・漁業・薬用植物・果樹・生ごみの堆肥化を統合し、近隣コミュニティ単位でグループを組織。2022年時点で151地区335グループに拡大し、ミラノ都市食料政策協定(MUFPP)で受賞している。
都市農との関わり: 近隣コミュニティを単位に組織する住民参加型の都市農業モデルで、国際的に評価された自治体事業として参照価値が高い。
タリン市 都市園芸の非営利活動に対する助成制度(2020年〜)
2020自治体税制・補助エストニア・タリン市2020年1月1日から、タリン市内の非営利団体(住区連合や私立学校を含む)が、共同菜園の活動に対して市都市環境公共事業局のプロジェクト助成に応募できるようになった。応募は毎年1回、締切は2月1日。申請は市のNPO向けセルフサービス環境(mittetulundus.tallinn.ee)からIDカードまたはモバイルIDで認証して行う。共同菜園のほか、私立学校の学習菜園も対象範囲に含まれる。
都市農との関わり: タリン市は2018年から市民園芸を政策として支援しており、この助成はその実務的な受け皿にあたる。土地を貸すだけでなく、住民団体が続けるための運営費・資材費を毎年の公募で出す点が特徴で、市の支援で生まれた共同菜園はすでに多数にのぼる。日本の自治体が市民農園に「場所」だけを用意して運営を任せがちなのと対照的に、担い手側の団体を助成で支える設計になっている。
リュブリャナ市 市民菜園のための市有地の整備・貸付に関する条例(2020年)
2020自治体農地保全・貸借スロベニア・リュブリャナ市2020年2月3日にリュブリャナ市議会(第11回会期)が採択し、官報 Uradni list RS 9/2020(2020年2月14日公布)に掲載された条例。市有地を市民に菜園用として貸し付ける条件を定める。借り手は市内に住民登録があり、自分で適当な農地を持たない者に限られる。割当ては直接契約または入札で行い、居住年数と区画までの距離を判断材料とする。栽培できるのは一年生・二年生の草本作物に限られ、借り手は区画の手入れ義務を負い、年間の賃料と共用部の維持費を負担する。区画の又貸しは禁止。従前の規定に代わるもので、公布の翌日に施行された。
都市農との関わり: リュブリャナは1990年代以降に非公式な菜園(vrtičkarstvo)が急増したのを受け、無許可の菜園を撤去して市が整備した公式区画に置き換える方向で規制を強めてきた。この条例はその到達点で、市有地の菜園を「誰に・どの条件で貸すか」を統一的に定めている。居住年数と距離で優先順位を付ける仕組み、又貸し禁止、栽培品目の限定などは、市民農園の公平な配分と転用防止を法令でどう書くかの具体例として参照できる。一方、こうした画一化が同市の自主的なコミュニティガーデン(例:オンクラィ・グラドビシュチャ)とは別の系統にあることも押さえておきたい。
ルサカ食料政策協議会(Lusaka Food Policy Council、2020年設立)
2020自治体食農政策ザンビア・ルサカ市ルサカ市議会(Lusaka City Council)と消費者団体 CUTS(Consumer Unity and Trust Society)が、オランダ資金による Hivos 主導の事業「Sustainable Diets for All」の一環として2020年に設立した食料政策協議会。自治体・市の各部局・市議会・企業・NGO の代表で構成され、ルサカの食料システムを運営するための指針をつくり実施することを任務とする。市場インフラの改善、食品の安全、意思決定への関係者の参加拡大を優先課題に挙げている。
都市農との関わり: ルサカでは住民の多くが自分で食べ物を育て、インフォーマルな市場が都市の食料供給を支えている。協議会は、その現実を政策の側で受け止め、都市の食料システムをめぐる意思決定の場を自治体の外の担い手にも開くための器にあたる。都市農業を単独の事業ではなく市の食料政策の一部として位置づけたい人にとっての参照例。
ブエノスアイレス市 法律6377号(都市農業の振興・普及)
2020自治体振興・基本法アルゼンチン・ブエノスアイレス自治市(CABA)ブエノスアイレス市議会が2020年12月3日に可決した、市内の都市農業を振興・普及するための法律。都市農業を「持続可能性の原則に沿って食料の生産・加工を行う、大都市内の農的実践」と定義し、都市アグロエコロジー(作付けの多様化、伝統的な手法の再評価、化学合成資材に頼らない健康な食の生産と流通、自然資源の保全)も併せて定義する。環境負荷の小さい生産と消費の推進、アグロエコロジー的な資源管理、廃棄物を減らすためのコンポストの促進、都市農業に関する知識の共同構築を目的に掲げる。第8条により、公的・私的を問わず自然人・法人が、適地の公有スペースを共同菜園として使う許可を申請できる。
都市農との関わり: 遊休の市有地を共同菜園に開く申請ルートを法律として定めた点が、市民の菜園づくりにとって実務的に大きい。一方で、法案を推したのは社会党のロイ・コルティナ議員で、可決時には市内の菜園グループ(インテル・ウエルタス、エル・レシクラドール等)が「議論なしに与党多数で通された」「公有地が私的な営利目的に使われる余地を残す」と批判し、教育とアグロエコロジーを軸にした対案を示していた。制度が誰のために公有地を開くのか、という論点を含んだ事例として読める。
ケソン市 遊休地税の免除条例(都市農業への転用、市条例 SP-2972 S-2020)
2020自治体税制・補助フィリピン・ケソン市ケソン市の遊休地税(Idle Land Tax)を免除する条例。土地の所有者が遊休地の全体を3年以上にわたり都市農業に充て、自家消費または地域への供給となる農産物を得る場合に、遊休地税を免除する。1993年ケソン市歳入法典 第11条の改正にあたる。2020年、ジョイ・ベルモンテ市長が承認した。申請は市の食料安全保障タスクフォースが受け付け、市不動産評価官事務所と連携して固定資産税の納付前に証明書を出す。2024年には申請書類を減らす簡素化の手順が導入された。
都市農との関わり: 都市で菜園を開くときに最も動かしにくいのが地主の同意である。この条例は「貸すと税が減る」という形で地主側に利益を与え、遊休地を農にひらく交渉の材料を市民の側に用意した。土地の提供者に罰ではなく便益を与える設計のため、市が土地を買い上げずに面積を増やせる。3年という下限は、1シーズンで畑をたたむ形を防ぎつつ、地主にとって長すぎない期間として置かれている。
コロネル・スアレス市 都市農業プログラム(条例7420/2020号・アルゼンチン)
2020自治体公的プログラムアルゼンチン・ブエノスアイレス州コロネル・スアレス市2020年11月26日制定の市条例。第1条で市域とその周辺における持続可能な食料生産を進める市都市農業プログラムを創設し、その設計・実施・普及・監督を市の任務とする。第3条で実施主体を行政部とし、国立農牧技術研究所(INTA)や州の機関との協定締結を求める。第4条は住民向けの研修を義務づけ、作付け技術・地域の資源に合う作物・土づくりを扱う住民ワークショップ、家庭菜園用の教材、各世帯への技術的な追跡支援を保障する。第5条は市有地の利用を認め、第6条は輪作・土壌改良・種の交換・廃棄物のリサイクルを重視する。第7条はプログラムの利用方法と便益を伝える周知キャンペーンを求める。
都市農との関わり: 人口10万人に満たない地方都市が、家庭菜園と市有地の共同菜園を条例で制度として据えた例。研修・教材・技術フォローと、市有地の提供、種の交換までを条文に書き込んでいるため、小規模自治体が都市農業を始めるときの条例の型として読める。
ワルシャワ「グラスルーツ都市農業運動」
2019自治体公的プログラムポーランド・ワルシャワ2019年にワルシャワで設立されたZasiej(ボトムアップ市民農業組織)。緑色教育、都市園芸、包摂性を中心に活動。コミュニティ種子銀行、パーマカルチャー設計・実装、園芸療法、芸術・教育プログラムを展開。学校・社会療法・健康センター・芸術機関・自治体と連携。市民主導の都市農業推進と地域統合。
都市農との関わり: ボトムアップ型市民農業運動による都市再生、多セクター連携による包摂性の実現、グラスルーツからの都市農業制度化への道筋提示。社会統合と環境改善の同時実現。
オスロ市 都市農業戦略「シュピレンデ・オスロ」(Spirende Oslo、2019〜2030年)
2019自治体振興・基本法ノルウェー・オスロ市オスロ市の都市農業(urbant landbruk)に関する施策の総称で、2019年から2030年までを対象期間とする。栽培・小家畜の飼育・緑の集まりの場づくりを後押しし、市をより緑豊かで、包摂的で、持続可能なものにすることを目標に掲げる。都市農業を、公衆衛生・包摂・教育・食料生産という社会の重要な分野と結びつけて位置づけ、国連の持続可能な開発目標に沿うものとしている。市が担う支援は3つ——(1) 用地の提供、(2) 補助金(tilskudd)、(3) 知見の共有——であり、あわせて都市計画や都市開発の各過程で都市農業が考慮されるようにすることを定める。具体的な施策は毎年の実施項目リスト(tiltaksliste)で示され、これは毎年12月に市の予算とあわせて決定される。国の戦略『Dyrk byer og tettsteder(都市と市街地で育てる)』と歩調を合わせている。オスロ市内では区画菜園(parsellhage)をはじめとするさまざまな形の都市農業が対象になる。
都市農との関わり: 北欧で、都市農業を単発の助成ではなく10年以上の期間をもつ市の戦略として据えた例。注目すべきは、毎年12月に予算とあわせて実施項目リストを決める仕組みを持たせた点で、戦略を書いたきり動かない文書にしない工夫になっている。用地・補助金・知見という3つの支援を明示し、さらに都市計画の各過程で都市農業を考慮させるとしている構成は、菜園を「余った土地に置くもの」から「計画で確保するもの」へ移す設計として参考になる。国の戦略と市の戦略が対応している点も、日本の都市農業振興基本法と自治体計画の関係を考えるときの比較材料になる。
ケベック市 共同菜園整備補助制度(Programme de subvention à l'aménagement de jardins partagés)
2019自治体税制・補助カナダ・ケベック州ケベック市ケベック市が2019年に始めた、共同菜園(jardins partagés)の整備に補助金を出す制度。市の「都市農業行動計画(Plan d'action en agriculture urbaine)」の一部として運用される。2026年度は総額126,199カナダドル(2025年度は101,437ドル)を交付し、菜園整備12件(応募15件のうち12件を採択)と、移民と受入コミュニティの交流を促す異文化間交流事業5件(各1万ドル)の計17件を支援した。対象となる整備には、屋上菜園の拡張、水耕栽培設備、レイズドベッド(立ち上げ花壇)、共同スペースの造成や植栽が含まれる。ラ・シテ=リムワル区の4件をはじめ市内各区で採択されており、ケベック多民族センター(2万ドル)やル・ピニョン・ブルー(9,189ドル)などが交付先。
都市農との関わり: 都市農の補助制度としては規模が小さい(年間十数万カナダドル)が、「菜園をつくる費用」と「そこで人が交わる仕掛けの費用」を別枠にしている点が特徴。ハードだけ整備して使われない、という失敗を避けるための組み立てとして参考になる。移民と受入コミュニティの交流を明示的な補助対象にしているのも、共同菜園を social inclusion の道具として位置づける制度設計の例。
インドネシア・ジャカルタ都市農業実装規則
2018自治体公的プログラムインドネシア・ジャカルタ市ジャカルタ総督規則第14号(2018年)。都市農業の実装と「都市農業グレートデザイン2018-2030」を規定。緑地法(Law No. 26 of 2007)で規定された都市内農業活動(私有地・家庭菜園・バルコニー・屋上・建物の縦型スペース利用など)の具体的な実装。
都市農との関わり: インドネシアの大都市ジャカルタにおいて、屋上・バルコニー・隙間スペースの活用を公式に認める規制枠組み。市民参加型農業の場所確保と、官民の役割分担を明確化。2018年以降、南ジャカルタなど複数地域でコミュニティの取り組みが推進されている。
南アフリカ・ヨハネスブルグ「都市農業イニシアティブ」
2018自治体公的プログラム南アフリカ・ヨハネスブルグヨハネスブルグ市が展開する都市農業イニシアティブ。食料安全保障プログラムの一環として実施。小規模農業による短い食価値鎖を活用し、市民食料生産を通じた都市食料システムの変革を目指す。インフォーマル経済における短鎖フードシステムの商品化と自給的農業の統合。
都市農との関わり: 都市食料システムの根本的変革、インフォーマル経済セクターの正当化と支援、市民主導の食料生産による地域経済活性化。南アフリカの多層的食料不安への創造的対応。
ヨハネスブルク食料レジリエンス戦略・屋上菜園プログラム
2018自治体食農政策南アフリカ・ヨハネスブルク市ヨハネスブルク市が2018年より推進する食料レジリエンス戦略。食料レジリエンス部門(Food Resilience Unit)とヨハネスブルク開発機関(JDA)が連携し、インナーシティの建物屋上をハイドロポニック野菜農園として整備・運営。脆弱層の食料セキュリティと都市農業の推進を統合。
都市農との関わり: 脆弱層(都市貧困層)の直接的な食料アクセス向上、起業・雇用機会創出、インナーシティの経済活性化、ヒートアイランド対策。市当局による直接投資と運営モデル。
イスタンブール市都市農業フレームワーク・ガイドライン
2018自治体振興・基本法イスタンブール市(トルコ)イスタンブール市が制定した都市農業支援フレームワーク。屋上菜園、空地活用、コミュニティガーデンの設置と支援に関する指針を示す。古い庭園の保全と新しい都市農業イニシアティブの両立を目指す。
都市農との関わり: 市民による屋上・空地農業の正当化と支援。旧市街地のヨディキュレ・ボスタンラルなどの歴史的菜園保全と、新規プロジェクトの奨励を両立させる政策枠組み。
クラクフコミュニティガーデン規制 - 市長令2715/2023
2018自治体公的プログラムクラクフ、ポーランドコミュニティおよび学校ガーデンの枠組みを確立する市立規制。イニシアチブグループへの市立地の無料リース提供で25以上のコミュニティガーデンを支援。
都市農との関わり: イニシアチブグループ形成を通じた正式な参加的ガバナンスを含む。社会的結束とコミュニティ構築目標を優先。
ロンドン食料戦略(The London Food Strategy、2018)
2018自治体食農政策英国・グレーターロンドン(ロンドン市長/GLA)ロンドン市長が2018年に策定した、市域全体の食料に関する戦略。「住む場所・境遇・収入にかかわらず、すべてのロンドン市民が健康で手ごろな良い食べものにアクセスできるようにする」ことをビジョンに掲げる。2018年5月11日から7月5日まで草案のパブリックコンサルテーションを行ったうえで公表され、優先事項を実行に移すための実施計画(Implementation Plan 2018–2023)が別に用意されている。
都市農との関わり: 戦略の6章のうち1章が「良い食べものの栽培、コミュニティガーデニング、アーバンファーミング(Good Food Growing, Community Gardening and Urban Farming)」に充てられており、市民や地域にとっての食料生産の多面的な便益を推進する枠組みになっている。市長が支援するコミュニティ食料栽培のネットワーク Capital Growth はこの流れに位置づく。
ラパス市 自治体法321号「都市菜園の振興に関する法律」(2018年)
2018自治体振興・基本法ボリビア・ラパス市(ラパス自治市政府 GAMLP)2018年9月12日にラパス市議会が可決した自治体法。放置された市有地・低利用地を食料生産に使えるようにすることを目的に、都市菜園の振興をうたう。近隣組織・学校・市民グループの参加を促し、「コミュニティ菜園」の区分にあたる菜園は、所在する分区(サブアルカルディア)に市有地利用の許可申請を出す。申請は環境管理部門に送られ、そこで菜園が登録され、立ち入り検査と、求めがあれば講習が行われる。
都市農との関わり: 標高3,600mのラパスで市民が菜園を開くときの、市有地利用の根拠となる制度。ただし、一般の市民が自分の菜園を認定してもらうための明確で実務的な手続きが整わなかったため、実際にはほとんど機能してこなかったと報じられている。2025年には菜園の実践者たちが「3、2、1…耕そう!」という提案書を市に提出し、この法律を実際に動かすよう求めている。制度をつくるだけでは市民農園は増えない、という点で参考になる事例。
ポーランド・ワルシャワ都市庭園支援
2017自治体振興・基本法ポーランド・ワルシャワ市ワルシャワ市2017年設立プログラム。住民がコミュニティ庭園の立ち上げと管理を支援。知識、資材、能力構築教育、ネットワーキング機会を提供。コミュニティ庭園委員会がプログラム実施に参加。
都市農との関わり: 市民参加型庭園の設立と管理を直接サポート。知識・資材・ネットワークの提供により、市民農業を実装。
モンゴメリー郡 都市農業固定資産税控除(条例31-16号・米国メリーランド州)
2017自治体税制・補助米国メリーランド州モンゴメリー郡都市農業に供される土地について、本来納めるべき固定資産税の80%を5年間控除する郡条例。2017年3月7日に郡議会が8対0で可決した(提案者トム・ハッカー議員、共同提案マーク・エルリッチ議員)。対象は0.5エーカー以上3エーカー未満の区画で、メトロ駅政策区域の内側またはその1,000フィート以内にあることが要件。対象となる営みは果物・野菜・花・観葉植物の栽培、限られた規模の家禽の飼養と養蜂、養殖。土地は都市農業の用途だけに供されている必要があり、作物生産に携わる者が居住することは認められる。要件を満たさなくなると控除は打ち切られ、控除分の未納税額を負う。控除は7月の年次納税通知には反映されず、その後の修正通知で計算・適用される。
都市農との関わり: 地価と税負担が営農継続の壁になる大都市圏で、税制を使って都市農地を残す具体例。駅に近い土地ほど転用圧力が強いという前提を逆手に取り、鉄道駅の政策区域の内側または1,000フィート以内という立地要件を付けている点が特徴。申請は郡財務局の様式で行い、農業局へ送る。
パリ市 レ・パリスクルトゥール(Les Parisculteurs)
2016自治体公的プログラムフランス・パリ市2016年にパリ市が始めた都市農業プログラム。屋上・壁面・駐車場・空き地などの公共・民間サイトを公募し、農業プロジェクトの事業者をマッチングする。これまでに70件超のプロジェクトが実現した。
都市農との関わり: 行政が場所を募り事業者に開放する『マッチング型』の代表例。都市の遊休空間を農的利用へ動かす公的な仕組みとして参考になる。
サンフランシスコ市 ベター・ルーフ条例(生きた屋根/太陽光)
2016自治体緑化規定アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ市2016年制定・2017年1月施行(条例第221-16号、都市計画法第149条)。新築建物に対し、屋根面積の15%を太陽光、または30%を「生きた屋根(緑化屋根)」とすることを義務づける。SOMA地区ではより厳しく、太陽光15%かつ緑化屋根50%。緑化屋根は培土の深さ4インチ以上が求められる。雨水流出・エネルギー消費の削減、生物多様性向上を目的とする。
都市農との関わり: 緑化屋根を新築に義務づける代表的なグリーンビルディング条例。培土のある屋根は食用栽培への転用余地があり、都市の栽培空間創出の制度的基盤となる。
バンクーバー市 アーバンファーム・ガイドライン(2016年)
2016自治体土地利用・条例カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバー市2016年にゾーニング・営業許可条例の改正とともに導入されたアーバンファーム・ガイドライン。都市農業を正当な事業活動として認め、規模・立地を問わず全農場に営業許可取得を義務づける。農場を「住宅型」と「商業型」に区分し、住宅型は10ドルの許可、商業型は開発許可と農場管理計画の提出を要する。公衆衛生上、栽培は果物・野菜に限定される。
都市農との関わり: 都市農業を正規の事業として制度化し、住民が住宅地でも許可を得て栽培・販売できる枠組み。市民参加型の都市農業事業化の参照事例。
クライストチャーチ市 コミュニティガーデン・ガイドライン
2016自治体振興・基本法ニュージーランド・クライストチャーチ市クライストチャーチ市議会が食料レジリエンス方針に沿って策定したコミュニティガーデンのガイドライン。市の役割をコミュニティガーデンや食用栽培空間を「可能にし奨励する」ことと位置づけ、リースやライセンスを通じた公的用地でのガーデン設置の手続きを定める。ニュージーランドの地区計画(District Plan)の中でも、市場菜園・菜園区画・コミュニティガーデンを都市環境で明示的に認める数少ない例とされる。
都市農との関わり: 市民グループが公共用地にコミュニティガーデンを設置するための具体的な手順と市の支援を示す文書。ニュージーランドでは都市農が「農村活動」として扱われがちな中で、都市部での菜園を明確に位置づける先進例として市民が活用できる。
ジャージーシティ市 Adopt-A-Lot(市有遊休地の菜園・レクリエーション貸付制度)
2016自治体農地保全・貸借米国ニュージャージー州ジャージーシティ市市が保有する空き地・遊休のオープンスペースを、非営利団体に年1ドルという名目賃料・1年更新で貸し出し、コミュニティガーデンやレクリエーションの場として使わせる制度。2011年の条例(Ordinance 11-019)に始まり、2016年の条例16.091で現在の形に整理された。市の都合で90日前の通知により解除できる。商業・製造・小売など営利目的の利用は認められない。個別の区画については、市議会が借地(更新)ごとに条例を議決する運用で、たとえば2025年4月9日には5か所の既存菜園の更新と1か所の新規貸付が一括で可決された。市内にはこの制度による借地と私有地とを合わせて23のコミュニティガーデンがある。
都市農との関わり: 都市の空き地を菜園に回すときに必ず問題になる「借りる根拠」を、条例で仕組み化した例。年1ドルという名目賃料で非営利団体に貸すため、団体側は土地代の負担なく始められる。一方で1年更新かつ市の都合で90日前通知の解除が可能という条件は、暫定利用(meanwhile use)の典型的な弱点でもある。日本で自治体の遊休地を市民活動に開くときの制度設計の参考になる。
ローマ市 共有菜園・市民農園規則(2015)
2015自治体農地保全・貸借イタリア・ローマ市2015年7月に承認された、市民が管理する共有菜園・市民農園(orti urbani)を公有地で正式に位置づけ、その設置・運営の枠組みを定めたローマ市の規則。Zappata Romanaなど市民運動の高まりに対する行政の応答として生まれた。
都市農との関わり: 市民主導の都市菜園を制度的に認め、公有地を菜園として利用する道を整えた。市民の農的活動に法的な裏づけを与える。
メキシコシティ都市農業振興プログラム(2015~)
2015自治体公的プログラムメキシコシティ市(メキシコ)メキシコシティ市が2015年以降に導入した都市農業振興プログラム。27のプロジェクトを支援し、うち8つは年間95トンの食料生産を達成。空地、屋上、バルコニーなど既存空間を活用した市民農業を支援。
都市農との関わり: メキシコシティの食料安全保障、環境衛生、コミュニティ開発、市民参加を統合した政策。失業対策と家族経済の向上も含む。
台北市ガーデンシティ・ポリシー及びコミュニティ農業振興
2015自治体振興・基本法台北市(台湾)台北市が2015年に開始したガーデンシティ政策。2020年までに740以上の市民菜園を推進、計21万3,000㎡以上の農業地を市民に開放。コミュニティ農業推進センターを設置し、市民による農業スペース導入を支援。
都市農との関わり: 台北市が市民農業の組織化と支援体制を整備。高密度都市における市民参加型農業を大規模に展開する政策モデル。
ミラノ都市食料政策協定(Milan Urban Food Policy Pact)
2015自治体食農政策イタリア・ミラノ市(発起)・世界200超の署名都市2015年10月15日、ミラノ万博を機に113都市の市長が署名した、都市間では世界初の食料政策に関する国際協定。持続可能で包摂的・強靭な都市食料システムづくりを掲げ、ガバナンス、持続可能な食生活と栄養、社会的・経済的公正、食料生産(都市農業と都市・農村連携を含む)、供給と流通、食品ロス削減の6分野37の推奨行動を示す。署名都市は現在200を超える。
都市農との関わり: 都市農業とコミュニティガーデンを都市食料政策の柱として国際的に正当化した枠組み。多くの署名都市がこの協定を根拠に食料政策室や都市農業支援策を立ち上げている。
台北市「田園城市」政策(Garden City Initiative)
2015自治体公的プログラム台湾・台北市柯文哲市長が2015年に開始した市の政策。市民運動『都市農耕ネットワーク』の政策白書を市が受け入れて成立した経緯を持ち、コミュニティガーデン・屋上菜園・学校菜園・市民農園の4類型を市が支援する。用地を集約する『ガーデンバンク』や農業技術の指導体制を整え、対象サイト数は2015年の292から2020年には733へと拡大した。
都市農との関わり: 市民運動の提言がそのまま市の看板政策になった、市民主導の都市農政策の代表例。高密度都市での可食ガーデンの制度化モデルとして国際的に研究されている。
ナイロビ市県都市農業振興規制法
2015自治体振興・基本法ケニア・ナイロビ市県ナイロビの都市農業実践の規制枠組みを確立。土地・水アクセス、食品安全、環境保全、有機廃棄物管理の基準を規定。ナイロビ市県都市農業振興アドバイザリーボード設置。
都市農との関わり: ナイロビにおける市民参加型都市農業の実践を法的に支援。土地アクセス、食品安全、環境規制の基準化により、持続可能な農業実践を推進。
ボゴタ 都市・近郊アグロエコロジー農業地区プログラム(市議会合意第605号/2015)
2015自治体振興・基本法コロンビア・ボゴタ首都特別区2015年の市議会合意第605号が、都市・近郊アグロエコロジー農業プログラムを制度化する指針を定めた。ホセ・セレスティーノ・ムティス植物園が実施主体となり、市内20地区で「ボゴタは私の菜園」等を通じて技術支援・研修・資材提供を行い、食料主権と都市緑化を進める。
都市農との関わり: 2万人超の都市農民と4千超の菜園を支える、ラテンアメリカ先進の参加型都市農業公共政策として参照される。
エジプト・カイロ都市農業支援プログラム
2015自治体公的プログラムカイロ市(エジプト)カイロ市が公式に認定した都市農業支援プログラム。屋上菜園、ハイドロポニクス、コミュニティガーデンを食料安全保障戦略の一部として位置付け。市民による農業実践の正当化と支援制度を提供。
都市農との関わり: エジプトの水資源制約下で食料安全保障を向上させるため、屋上ハイドロポニクスなど効率的な都市農業形態を促進。市民参加のエンパワーメント。
ナイロビ都市農業法 2015
2015自治体土地利用・条例ナイロビ、ケニアナイロビにおける都市農業を可能にする条例。地域および商業農業のための適切なゾーンを指定。
都市農との関わり: 農業グループの確立による強力なコミュニティ参加。女性参加を奨励(割り当てプロットの30%)。
米国サクラメント市 都市農業条例(2015年)と都市農業インセンティブ地区条例
2015自治体土地利用・条例米国カリフォルニア州サクラメント市サクラメント市議会が2015年3月24日に可決した都市農業条例。住宅地を含む敷地で育てた農産物をその場から直接消費者に売ることを合法化し、菜園の敷地内に一時的な農産物スタンドを置けるようにした。スタンドは仮設で、面積は120平方フィート(約11平方メートル)以下、販売は火曜と土曜の午前8時〜午後7時に限られ、設置には一時利用許可(Temporary Use Permit)が要る。採決は6対1で、反対はラリー・カー議員1人だった。販売できるのは敷地内で生産した新鮮な農産物・卵・蜂蜜と、カリフォルニア州公衆衛生局の承認リストに載り許可を得たコテージフード(家庭で加工した食品)。採卵鶏やアヒルの飼育、養蜂も認められ、教育プログラムに紐づく場合は小さな敷地でも75ポンド超の家畜を、2エーカー超の敷地では豚を飼うことができる(いずれもマイナー利用許可が必要)。同年8月6日には空き地を農地に転換する場合の税制優遇を定める都市農業インセンティブ地区条例が続き、2017年1月24日にはサクラメント郡が同様の規定を採択して市外の都市・郊外地域にも広げた。
都市農との関わり: 市民が自宅や共同菜園で育てたものを「その場で売る」ところまでを条例で明示的に認めた点が、多くの都市の条例と違う。栽培だけを認めて販売を用途違反のまま残す制度では、市民菜園が小さな収入を生む段階へ進めない。サクラメントは販売可能な品目(生鮮・卵・蜂蜜・コテージフード)と、スタンドの大きさ・曜日・時間という具体的な条件をセットで示し、隣接する住民の懸念と両立させる形をとった。あわせてカリフォルニア州の都市農業インセンティブ地区法(AB 551)に基づく税制優遇を市の条例として実装し、空き地の所有者が農的利用に貸し出す動機を用意している。市の「Farm-to-Fork」政策の一部として位置づけられている。
ボルティモア市 都市農業固定資産税控除(市条例第28編10-19条・米国メリーランド州)
2015自治体税制・補助米国メリーランド州ボルティモア市都市農業に供される土地について、本来課される固定資産税額(他の控除を差し引いた後)の90%を控除する市条例。期間は当初5年で、5年単位の更新ができる。適用の前提として、土地を都市農業の用途だけに使い、市条例に適合した状態を保つこと、そして各課税年度に植物・植物生産物・動物・動物生産物を合計5,000ドル以上の価値で販売または供給することを求める。「価値」は実際の売上のほか、市場価格で売ったと仮定して合理的に見込める粗収入も含む。開設したばかりの農場と災害に見舞われた年は5,000ドル要件が免除されるが、連続2年までに限る。申請は最初の適用課税年度の90日以上前までに市の持続可能性室(Sustainability Office)へ提出し、以後の各年度も90日以上前までに都市農業の用途を続けていることの証明書を出す。用語の定義は州法メリーランド州租税・不動産条項第9-253条を引く。根拠は市条例15-350号・15-427号、2016年の16-503号、2022年の22-124号・22-125号。実務では申請書と継続適格証明書を4月1日までにTax.Credits@baltimorecity.gov へ送れば、7月1日に始まる会計年度に間に合う。
都市農との関わり: 空き地の多い都市で、固定資産税という固定費を9割落として都市農場の損益を成り立たせる制度。注目すべきは年5,000ドルの出荷要件で、税の優遇を受ける条件として「実際に売るか配るか」を課している点。景観目的の遊休地の看板替わりに使わせない仕組みであり、同時に小規模でも本気で出荷する農場なら届く水準に置かれている。開設初年度と被災年の免除があるため、初期の売上が立たない段階でも申請できる。運用はメリーランド州が2014年に州税法を改め、控除を認める余地を市に与えたうえでボルティモア市が2015年に実装した二段構えで、州の授権規定と市の実装条例を分けて読む必要がある。既収録のモンゴメリー郡(条例31-16号、控除80%・5年)は同じ州法に基づく別自治体の実装であり、要件も異なる。
ワシントンDC食料政策協議会・食料政策局
2014自治体食農政策米国ワシントンD.C.(コロンビア特別区)2014年に全米初の行政直轄型として設置された食料政策協議会と食料政策ディレクター局。生鮮処方や農産物市場アクセス等の政策を進めたが、2025年以降ディレクター職が空席のまま体制が空洞化し、市長のFY2027予算案は根拠法の廃止と協議会・局・常勤3ポストの廃止を提案した。
都市農との関わり: 『全米初』とされた行政直轄の食料政策機関が予算削減で法的に廃止提案されるに至った象徴的な後退例。
ヤラ市 都市農業戦略 2014–2018
2014自治体公的プログラムオーストラリア・ビクトリア州ヤラ市(メルボルン都市圏)メルボルン都市圏のヤラ市が策定した、2014–2018年を対象とする都市農業戦略。コミュニティガーデン、ナチュラルストリップ(歩道脇)での栽培、食用樹木、公共用地での食料生産を支援・拡大し、市民が地域で食料を育てられる環境づくりを目指す自治体計画。期間としては2014–2018年だが、ヤラ市の都市農業への取り組みの基盤として継続的に参照されている。
都市農との関わり: オーストラリアの自治体による都市農業政策の代表例。コミュニティガーデンや歩道・公共空間での栽培に対する市の支援枠組みを示し、住民グループが用地確保や許可を得るための根拠となる。
横浜市の都市農業における地産地消の推進等に関する条例(平成26年条例第76号)
2014自治体食農政策日本・神奈川県横浜市平成26年(2014年)12月26日公布・条例第76号、平成27年(2015年)4月1日施行。第1条は「この条例は、横浜市(以下「市」という。)の都市農業における地産地消の推進に関する基本理念を定め、市の責務並びに生産者、事業者及び市民の役割を明らかにし」と目的を述べる。第2条で地産地消・市内産農畜産物・生産者・事業者・6次産業化を定義し、第3条の基本理念は「地産地消の推進は、市、生産者、事業者及び市民が相互に連携し、都市農業の取組及び市内産農畜産物の情報を共有することを通じて信頼関係を構築」することに置かれる。第4条は「市は、生産者、事業者及び市民と連携し、かつ、協力して、地産地消の推進等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする」と市の責務を定め、第5〜7条で生産者・事業者・市民それぞれの役割を書き分ける(第7条は「市民は、都市農業の振興に対して理解を深めるとともに、市内産農畜産物を消費するよう努めるものとする」)。以下、広報活動(第8条)、情報の共有等(第9条)、市の施設等における市内産農畜産物の利用促進(第10条)、ブランド化(第11条)、観光資源としての活用(第12条)、6次産業化の推進(第13条)、食育との連携(第14条「市は、地産地消の推進に関する施策の実施に当たっては、食育に関する施策との連携を図るものとする」)、組織体制の整備(第15条)、財政上の措置(第16条)、委任(第17条)を置く。
都市農との関わり: 人口370万を超える大都市が、都市農業を「地産地消」という需要側の言葉で条例化した例。生産緑地法や都市農業振興基本法が農地の保全・貸借という供給側を扱うのに対し、この条例は市民・事業者・市の施設が市内産農畜産物を消費する側の役割を明文化している。市民の役割(第7条)が努力義務として書かれ、食育との連携(第14条)が別立ての条文になっているため、学校給食・食育講座・市民農園の体験プログラムを地産地消の施策としてつなげる根拠になる。横浜市はこの条例のもとで「横浜都市農業推進プラン2024-2028」(令和6年3月策定、5か年計画)を持ち、市民農園・体験農園の開設支援や市民農園コーディネーター制度を運用している。
バルセロナ「空地活用計画」(Pla BUITS)
2013自治体農地保全・貸借スペイン・バルセロナ市市が所有する未利用地を、非営利団体・公益団体に1年(更新で最長3年)の暫定使用として割り当て、近隣の社会的・コミュニティ的活動に活用する仕組み。割り当て先の多くが社会的な市民菜園で、第1回(2013年)は12件、第2回(2015年)は5件が選ばれた。
都市農との関わり: 都市の遊休地をコミュニティ菜園へと転換する公式の手続きを市民・団体に提供し、住民の参加と地域のつながりづくりを後押しする。
デトロイト市 都市農業条例(2013年)
2013自治体土地利用・条例アメリカ・ミシガン州デトロイト市2013年4月に成立したゾーニング条例で、都市農業の用途定義と付属用途の基準を定める。「マーケットガーデン」と「アーバンファーム」を区別し、それぞれにゾーニング規則を設定。かつてゾーニング上禁止されていたコミュニティ菜園を合法化し、住宅地の菜園敷地では小規模な直売スタンドでの販売を認める。大学・地域団体・住民の協働で起草された。
都市農との関わり: 空き地が多い縮退都市で、住民の非公式な菜園活動を合法化・制度化した象徴的条例。市民参加を制度に取り込んだ好例。
ロサンゼルス市都市農業インセンティブゾーン(UAIZ)プログラム
2013自治体税制・補助米国カリフォルニア州ロサンゼルス市ロサンゼルス市が AB-551 に基づいて実施する都市農業インセンティブゾーン(UAIZ)プログラム。市民農業者が空き地やコミュニティスペースで農業活動を行う際の土地利用・許可取得をサポート。
都市農との関わり: LA 市の都市農業支援。市民農業者が適切な法的枠組みで農業を展開できる環境を整備。土地へのアクセス改善と規制環境の透明化により、市民参加型農業を促進。
ザグレブ市 市民菜園事業「グラツキ・ヴルトヴィ」(2013年市長決定)
2013自治体公的プログラムクロアチア・ザグレブ市2013年4月4日のザグレブ市長決定にもとづき、市が所有する耕作可能な土地を整備・設備化して、市民に区画(1区画最大50㎡)を2年間・無償で貸し出す事業。自家消費用の野菜・ベリー類・薬用ハーブ・花の栽培が対象で、きちんと管理していれば更新できる。応募できるのはザグレブ市に住民登録があり、クロアチア国内に他の耕作可能な土地を所有・共有・賃借・利用していない人に限られ、1世帯につき1人まで。配分は点数制で、居住状況・経済状況・退役軍人・年金受給者・世帯人数などを考慮する。各菜園には共用部が設けられ、コンポスター、道具と有機質肥料の物置、給水タンク、ベンチ、東屋、ごみ・資源回収箱が市の負担で整備される。
都市農との関わり: 旧ユーゴ圏の都市では、市民が空き地を無断で囲い込む「野生の菜園(divlji vrtovi)」が広く存在してきた。この事業は取り締まりではなく、公募と点数制の公平な配分に置き換える形でそれを引き受けた点に特徴がある。無償貸与+低所得者・多子世帯・退役軍人・年金生活者への優先枠という設計で、3か所から14か所・2,152区画・23.03haまで10年あまりで拡大している。有料が原則の日本の市民農園に対して、「福祉的な優先枠つきの無償貸与」という別の設計を示す先例として読める。
ソウル特別市 都市農業の育成及び支援に関する条例
2012自治体振興・基本法韓国ソウル特別市2012年にソウル市が制定した都市農業の育成・支援条例。週末農園・屋上菜園・箱型菜園(상자텃밭)の普及、教育、コミュニティ支援の根拠となり、その後の韓国各地の都市農業条例の先駆けとなった。
都市農との関わり: 東アジアの大都市が市レベルで市民農業を制度化した代表例。区ごとの支援事業や公共空間の菜園化を支える。
ソウル都市農業計画
2012自治体振興・基本法韓国ソウル特別市ソウル市2012年計画。屋上農地展開、都市野菜庭園設置、コミュニティ参加促進。春の抽選で住民にプロット割り当て。農場クリニックで技術支援。19地区の4,000農場でクリニック開催。200ヘクタール以上の屋上農地を運営。
都市農との関わり: 市民参加型食糧生産の大規模展開プログラム。屋上空間の活用と農業技術支援により、都市農業を制度化。
ロッテルダム『食と都市』都市農業戦略(Food and the City)
2012自治体振興・基本法オランダ・ロッテルダム市2012年に市が公表した都市農業促進政策(stadslandbouw)。健康・持続可能な経済・都市環境の質という3目標のもと、市民・事業者による都市農業を支援し、市がどこで都市農業が可能かを示す。2010年設置のシンクタンクと2013年の地域フードカウンシルが体制を支える。
都市農との関わり: 市民・起業家主導の都市農業を市が明示的に後押しした、オランダの代表的な自治体都市農業戦略。
プラハ・コミュニティガーデニング・ガイドライン
2012自治体公的プログラムチェコ共和国・プラハプラハ市が2012年に制定した、コミュニティガーデン設立・運営のガイドライン。公的および民有地でのコミュニティガーデン設立を支援・規制する枠組みを提供。
都市農との関わり: 市民農業をまちづくり・コミュニティ形成の中核に位置づけ、包括的なガイドラインにより実践者のアクセス障壁を低減。社会的農業(Social Farming)の公的認識と法的基盤整備。
リマ都市圏 都市農業振興 枠組み条例 第1629号
2012自治体振興・基本法ペルー・リマ都市圏(リマ・メトロポリターナ)2012年9月にリマ都市圏(リマ・メトロポリターナ)が制定した枠組み条例。環境管理・食料安全保障・社会的包摂・地域経済発展の戦略として都市農業を振興する。家庭菜園、共同菜園、学校・公共/民間機関の菜園、生産的菜園、アグロパーク(公園菜園)、所有者との合意に基づく空地活用など、多様な都市農の形態を位置づける。
都市農との関わり: 市民の都市農を市政の枠組みに組み込み、後続の区レベルの条例(コマス区など)の基盤となった。世界有数の乾燥都市リマで、住民が土地にアクセスして食物を育てる活動を制度的に後押しする。
リスボン市営園芸公園プログラム(Parques Hortícolas Municipais)
2011自治体公的プログラムポルトガル・リスボン市リスボン市が2011年にベンフィカ地区(キンタ・ダ・グランジャ)で始めた市営園芸公園プログラム。市内に21の園芸公園・約850区画・計9.5haを整備し、有機栽培の研修と常設の技術支援を提供する。区画は公報での公募・公開抽選で市民に割り当てられ、誰でも応募できる。
都市農との関わり: 都市住民が低廉な負担で食物栽培のための土地に安定的にアクセスできる公的な仕組みで、市民主導の都市農を制度として支える。区画は園芸公園(広場・遊び場等を含む)に統合され、市街地の緑化・交流の基盤にもなっている。
シカゴ市 都市農業ゾーニング条例改正(2011年)
2011自治体土地利用・条例アメリカ・イリノイ州シカゴ市2011年9月に市議会が可決したゾーニング条例改正。「コミュニティガーデン」を公園・レクリエーション用途と定義し、屋内・屋外・屋上の3種の「アーバンファーム」を定義。コミュニティガーデンは全ゾーニング区で許可、アーバンファームは多くの非住宅区で許可。菜園規模上限を25,000平方フィートに拡大し、水耕・アクアポニクスや養蜂を一定条件で認め、大規模商業農場の柵・駐車要件を緩和した。
都市農との関わり: 大都市が都市農業を正式な用途区分として全域的に許可した重要な事例。市民のコミュニティガーデンを全区で右許可とした点が参加型に直結。
リスボン市 都市菜園プログラム(園芸公園網)
2011自治体農地保全・貸借ポルトガル・リスボン市リスボン市が空地や荒れた公園を市民農園区画を備えた『園芸公園(parques hortícolas)』へと転換するプログラム。2008年の市グリーンプランと生物多様性行動計画の目標を実現するため2011年に開始され、2020年までに20の園芸公園・約750〜800区画に拡大した。失業者・高齢者・低所得層に区画が優先される。
都市農との関わり: 市民・家族・地域団体・学校に低廉で安定した栽培用地を供給し、緑のインフラと社会包摂を結ぶ。キンタ・ダ・グランジャなど市内の市民農園を生み出す制度的枠組み。
ホーチミン市 都市型農業への転換を促す利子補給制度(ベトナム)
2011自治体税制・補助廃止ベトナム・ホーチミン市施行期間: 2011–2020
都市型農業への転換のために借りた資金の利息を市の予算が肩代わりする制度。市人民委員会決定36/2011/QĐ-UBND(2011年6月20日施行)で始まり、決定13/2013/QĐ-UBND(2013年3月20日)、決定04/2016/QĐ-UBND(2016年2月23日)、市人民評議会議決10/2017/NQ-HĐND(2017年12月7日、対象期間2017〜2020年)と更新された。対象は市内で農地・林地・漁業用地・製塩用地を直接使う企業・協同組合・協同組合連合・事業世帯・農場主らと、農産物の生産・販売契約を結ぶ法人・個人。補給率は3段階で、基盤整備と土壌改良、農林水産物の一次加工、生産の機械化、高度技術農業、認証を取ったGAP生産、貧困世帯の生産資金は実際の借入利息の100%(貧困削減基金からの借入は年4%相当)、生産資材の購入など一般の生産・農村産業の資金は60%。支援期間は1件あたり最長5年で、生育期間が12か月未満の作目・畜種は12か月。2011年から2021年6月までに承認決定8,504件・貸付24,611件を処理し、投資総額13兆8,500億ドン、利子補給の対象となった貸付8兆4,000億ドン、1世帯あたり平均投資5億6,200万ドン、雇用およそ61,180人を記録した。品目はエビ41%、観葉植物とランが17.5%、牛13.1%、豚9.9%。市の補助1ドンが投資14.5ドン(信用機関8.8ドン、地域からの資金5.7ドン)を呼び込んだと市は評価している。
都市農との関わり: 都市の縁で農業を続けるとき、経営を決めるのは補助金よりも資金の借りやすさと金利。この制度は設備投資そのものではなく利息を肩代わりする形をとり、市の負担1ドンで14.5ドンの投資を動かしたと報告されている。補助率に段差をつけ、高度技術農業・GAP認証・一次加工・機械化を100%、資材の購入を60%と分けたことで、都市の需要に合う高付加価値の品目へ資金を誘導する設計になっている。実績がランや観葉植物、エビに偏ったことは都市型農業への転換を促す仕組みが実際にどこへ資金を運ぶかを示す資料としても読める。同時に、財源と上位法の授権が切れた瞬間に制度が止まり、5年たっても復活しないという経過は利子補給が毎年の予算措置に依存する脆さを抱えることを示している。
廃止理由: 議決10号の対象期間が2020年で終わり、後継の規定が出ないまま失効した。市農業農村開発局は2025年1月時点で、財源が確定していないことと中央政府からの法的根拠が整っていないことの二点を理由に挙げ、2024年に検討を中断したと説明している。国会決議98/2023/QH15を改正して2021〜2025年の利子補給を市が実施できるようにするよう求めている段階で、60%・80%・100%の3段階、1件あたり最大2,000億ドン、支援期間最長5年という2023〜2025年向けの案は制定に至っていない。
ワルシャワコミュニティガーデンプログラム - サシエズカ(近隣)
2010自治体公的プログラムワルシャワ、ポーランド野菜、果実、ハーブの生態的栽培を強調するコミュニティ管理ガーデンの市立支援プログラム。コミュニティガーデンプロジェクト向け助成金を提供。
都市農との関わり: 近隣ベースのガーデン管理委員会による参加的ガバナンス。都市農業と社会統合に関する教育プログラムを含む。
ウィーン市 コミュニティガーデン整備費助成(市公園緑地局 MA 42)
2010自治体税制・補助オーストリア・ウィーン市2010年1月に始まった、コミュニティガーデンの整備費を最大3,600ユーロまで一度だけ払い戻す助成。要件は(1)菜園が非営利団体(Verein)として組織されていること、(2)区役所の同意があること、(3)土地所有者との有効な契約があることの3点で、菜園を作り終えて領収書の原本を提出したあとに精算される。公式サイトは「全ての区で枠を使い切った」と告知しており、現時点で新規の申請は受け付けていない。
都市農との関わり: 菜園の立ち上げに必ずかかる資材・造成費を公費で埋める仕組みで、「団体化・区の同意・土地契約」を助成の条件に据えることで、市が把握できる形の菜園を増やす設計になっている。枠を使い切った現状は、この種の一度きりの整備費助成が持つ限界も示す。
トロント市 グリーンルーフ条例
2009自治体緑化規定廃止カナダ・トロント市施行期間: 2009–2025
2009年制定、北米初の屋上緑化義務条例。延床2,000㎡以上の新築建築に、屋根面積の20〜60%の緑化を義務づけ(代替の納付金制度あり)。約16年間(2009〜2025年)施行され、1,200超の屋上緑化を生んだ。
都市農との関わり: 屋上緑化を起点に屋上農園が広がる土壌をつくった制度。廃止の経緯も含め、緑化義務と都市農の関係を考える素材になる。
廃止理由: オンタリオ州政府が2025年(10月23日署名のorder-in-council、11月3日発効)により、トロント市法の根拠条項を削除して廃止。「住宅・インフラを速く建てる」政策(Bill 17:Protecting Ontario by Building Faster and Smarter Act 2025 ほか)の一環で、緑化を任意化しコスト削減を図るとした。協議・猶予期間・補償はなく、チャウ市長ら反対派は雨水流出抑制・省エネ・温室効果ガス削減の効果が失われると批判した。
コペンハーゲン屋上緑化義務化政策
2009自治体緑化規定コペンハーゲン市(デンマーク)コペンハーゲン市の気候計画(2009年採択)の一環。傾斜30度未満の全屋根に植生被覆を義務付け。屋上農場・屋上庭園を推奨。2011年に初の学校屋上農場がBlågårds Schoolに設置。
都市農との関わり: 強制的な屋上緑化を通じた都市農業推進。気候中立性達成と食料自給率向上の統合的戦略。商業的垂直農業施設の補助施策と連携。
リュブリャナ市 市民菜園の整備・貸付に関する条例(2009年・2020年に置き換え)
2009自治体農地保全・貸借廃止スロベニア・リュブリャナ市施行期間: 2009–2020
市有地を市民菜園として貸し付ける条件を定めた条例。区画の管理・使用の決まり、借り手の維持義務、賃料、市による監督手続きを規定した。2000年代に非公式な菜園が急増したことを受け、市が菜園を統一的な規格(均一な区画・設備)のもとに置き直す方向で作られたもので、都心部・景観上重要な場所・文化遺産や墓地の周辺には菜園を置かないという方針もこの時期の規制に伴うものだった。
都市農との関わり: 廃止された制度だが、市民農園の制度設計を考えるうえで意味がある。この条例の下でリュブリャナの菜園面積は1984年の200ヘクタールから2008年に130ヘクタールへと減っており、規制の強化と都市開発が市民の栽培地を圧迫した経緯が数字に残っている。2010年に市が空間計画で23か所46ヘクタールを公的菜園に充てたのはその埋め合わせにあたる。「整えるための規制」が同時に総量を減らしうるという教訓として記録に残す価値がある。
廃止理由: 2009年3月30日にリュブリャナ市議会が採択し、官報 Uradni list RS 28/2009(2009年4月10日公布)で施行。約11年間、市有地の市民菜園を規律した。2020年2月3日採択の新条例(Uradni list RS 9/2020)に置き換えられて失効した。なお本条例自身も、その第21条で1985年制定の旧「リュブリャナ諸自治体における市民菜園の整備に関する条例」を廃止しており、リュブリャナの菜園規制がおよそ四半世紀ごとに書き換えられてきたことを示している。
ポルトガル・リスボン「2008年グリーンプラン」
2008自治体振興・基本法リスボン市リスボン市の2008年グリーンプランに基づく都市アロットメント庭園プログラム。2011年から実施開始。遊休地・劣化公園を市民庭園に転換。20の都市アロットメント公園、750のアロットメントを運営(2020年時点)。失業者・高齢者・低所得層へのアクセス優先。2020年、リスボンは欧州グリーン首都賞受賞。
都市農との関わり: 遊休地の有効活用。環境・社会・経済の多面的便益。社会的包摂と福祉向上の施策。市民の緑空間アクセス保障。
南アフリカ・ケープタウン「都市農業政策」
2007自治体食農政策南アフリカ・ケープタウンケープタウン市が策定した都市農業政策。食料不安が深刻な非公式定住地での食料安全保障向上を目的とする。西ケープ州農業局と連携し、拡張部門を通じた農業支援を実施。市民参加型の都市農業を公式政策化し、政府と市民社会の連携による食料正義と地域発展を推進。
都市農との関わり: 都市部の食料不安への体系的対応、非公式定住地への食料アクセス改善、官民連携による持続可能食料システム構築。南アフリカのポストアパルトヘイト社会における社会正義と食料民主主義の実装。
クリーブランド市 都市菜園地区(ゾーニング条例第336章)
2007自治体土地利用・条例アメリカ・オハイオ州クリーブランド市2007年にゾーニング条例を改正して創設した「都市菜園地区(Urban Garden District)」。地域の食料生産・健康・教育・緑地保全のために都市菜園を正式な用途区分として位置づけ保護する。営利目的の「マーケットガーデン」とコミュニティガーデンを区別し、温室・フープハウス・農具小屋等の付属構造物や、離隔距離・高さ・駐車・柵などの基準を定める。
都市農との関わり: 都市農業を独立したゾーニング区分として明文化した米国の先駆例。市民のコミュニティ菜園を「最善の土地利用」として保護する点が参加型に直結する。
ケープタウン市 都市農業政策(2007年)
2007自治体振興・基本法南アフリカ・ケープタウン市2006年12月承認・2007年に採択された、南アフリカで唯一の市の都市農業政策。世帯の食料安全保障の改善と、恵まれない世帯の収入創出という二本柱を掲げる。一定所得以下の個人・グループが市に申請すれば、種子・農具・研修・水の補助等の基本的支援を受けられる。明確な実施戦略と行政体制を定め、最貧困層を主要な受益対象とする。
都市農との関わり: 貧困層への直接支援を制度化した市政策で、市民(特に低所得層)の農業参加を公的に後押しする枠組みとして重要。
アンマン市 都市農業室と「新規宅地化区画の15%を緑地・都市農業に」土地利用指針
2007自治体土地利用・条例ヨルダン・アンマン市(Greater Amman Municipality)アンマン市は2007年、ベイルート・アメリカン大学の環境・持続可能開発ユニットによる実態調査を受けて都市農業室(Urban Agriculture Office)を設け、以後、屋上・学校・家庭菜園・建物のあいだの空き地といった市有/民有の都市の土地を使った都市農業と食料安全保障の施策を続けている。空き地の活用に関する規制枠組みとインセンティブ制度が策定・承認され、あわせて新たに市街化される区画については、その15%を緑地または都市農業に充てることを求める土地利用指針が出された。省庁・大学・農家・金融機関・市民団体が参加する多主体フォーラム「グリーン・アンマン委員会(Committee for Green Amman)」が運営の場になっている。
都市農との関わり: 都市農業を「余った土地の善意の使い道」ではなく、新規開発の条件として面積を確保させる仕組みにしている点が要点。空き地の活用ルールと土地の貸し手・つくり手をつなぐランドバンク、地元の都市農産物を見分けるための独自の認証シールまでを一体で整えており、300を超える屋上菜園と4,000の学校・家庭菜園が生まれた。日本の生産緑地や緑化率規定と比較しやすい先行例にあたる。
カンパラ市 都市農業条例(2006年)
2006自治体農地保全・貸借ウガンダ・カンパラ市2005年に承認され2006年に施行された、都市・近郊農業を合法化する条例群(5本の一つ)。それ以前カンパラでは都市農業は違法だった。市内で農業を行う個人には許可、農業事業者には免許を義務づけ、公有地を都市農業に開放して住民の家計食料安全保障を高めることを狙う。安全・衛生基準を伴う法的枠組みを整備した。
都市農との関わり: 都市農業を「違法」から「許可制の正当な土地利用」へ転換した先駆的条例で、公有地開放と住民参加の制度設計として重要。
ダカール市マイクロガーデン計画(micro-jardins)
2006自治体公的プログラムセネガル・ダカール市ダカール市が2006年5月に始めた都市農業プログラム。ダカール市とミラノ市の分権協力から生まれ、FAOとイタリアのNGO ACRA が戦略パートナーに入る。調整役は市の Ndeye Ndack Pouye Mbodj。技術は土を使わない栽培台(plateaux de culture)で、廃パレットを再利用した台に落花生の殻と籾殻を基質として詰める。C40の事例集の時点で市内に12か所の養成・実演センター(CFD)を設置し、24人(女性18人・男性6人)の指導者を養成、受益者は9,694人(女性17%・男性83%)。セネガル国営通信APSが2025年5月6日に報じた時点で、ダカール市による養成プログラムは休止している。同記事によれば1週間の研修費は市の制度下で1,000 FCFA だったものが、休止後は少なくとも15,000 FCFA へ上がり、現在は女性の経済利益団体(GIE)などが独自に研修を続けている。制度として廃止されたのか一時休止かは出典に記載がないため、状態は unknown とする。
都市農との関わり: 屋根・テラス・中庭といった土のない場所を栽培面に変える方式で、土地を持たない都市住民でも始められる。市が養成センターと栽培台を配ることで技術と初期資材の壁を同時に下げた点が要で、受益者1万人近くという規模はアフリカの都市農業プログラムとして大きい。一方で市の研修が止まると費用が15倍になった事実は、この種のプログラムが自治体の予算に依存しており、補助が切れた瞬間に低所得層から先に脱落することを示す。導入だけでなく継続の資金をどう確保するかという論点の実例になる。
カンパラ市都市農業条例(5件) 2005-2006
2005自治体土地利用・条例ウガンダ・カンパラ市カンパラ市が2005年に認可、2006年に施行した5つの市条例。都市農業の法的枠組みを確立。農家のライセンス・許認可制、衛生・安全基準の設定、農業従事者への土地保有権付与、支援サービスの提供、湿地地保護を規定。
都市農との関わり: カンパラの都市農業が1980年代から非公式に展開されていたため、初めて法的規制枠を創設した重要な条例。市民農家の土地保有権を認め、ライセンス制で農業従事者を支援・保護。アフリカの都市農業政策の先例。
カンパラ都市園芸条例 2005
2005自治体土地利用・条例カンパラ、ウガンダカンパラにおける都市園芸の枠組みを確立する自治体条例。公開空地と住宅敷地の食料生産利用を許可。
都市農との関わり: 近隣ガーデン委員会による高いコミュニティ参加。女性農民グループと青年雇用の正式な仕組みを含む。
パリ市「メインヴェルト憲章」(共有菜園プログラム)
2003自治体公的プログラムフランス・パリ市2003年にパリ市が始めた共有菜園(ジャルダン・パルタジェ)の制度。市有地に住民団体が菜園を開設・運営するための憲章と枠組み協定を定め、団体は参加型の運営、社会的つながりづくり、環境に配慮した庭づくり、定期的な一般公開を約束し、市は土地と支援を提供する。以降、市内の共有菜園ネットワークが継続的に拡大する基盤となった。
都市農との関わり: 市民団体と市の役割分担を『憲章』という形で定式化した、コミュニティガーデン制度の古典的モデル。後のパリスクルトゥールなど都市農政策の素地をつくった。
ロサリオ市 都市農業プログラム(PAU)・市営コミュニティ菜園条例
2002自治体公的プログラムアルゼンチン・ロサリオ市2001年の経済危機を受けて2002年に始まった市の公共政策。条例7341号(2002年)で市営コミュニティ菜園プログラムを制度化し、市域の36%と推計された遊休地(線路脇・低湿地・未整備緑地など)をアグロエコロジー菜園として開放した。道具・種子・研修の提供から常設の青空市(ferias)での販売支援まで一貫して支え、開始2年で約800の菜園が約4万人分の野菜を生産。2020-21年にはWRIのPrize for Citiesの大賞を受賞した。
都市農との関わり: 危機対応から恒久的な土地利用政策へと発展した、南米で最も著名な市民都市農業の制度。遊休地の農的利用と生産者の生計支援を一体で設計したモデルとして世界的に参照される。
キト 参加型都市農業プログラム(AGRUPAR)
2002自治体公的プログラムエクアドル・キト首都圏1990年代の経済危機を受け、2002年にキト首都圏市が創設。当初は持続可能人間開発局が運営し、2005年以降は経済振興公社CONQUITOが実施。女性・難民・高齢者・障害者・先住民など周縁化された層を対象に、食料生産・市場向け農業・環境保全・消費習慣改善を支援する。
都市農との関わり: 社会的包摂とジェンダー平等を明示した参加型都市農業の代表例で、食料安全保障と生計向上を両立させた運用実績が長い。
ロサリオ 都市農業プログラム(Programa de Agricultura Urbana)
2002自治体農地保全・貸借アルゼンチン・ロサリオ市2002年の経済危機下に市が創設し、住民に研修・種子・資材・栽培地を提供。2004年の市条例で空き公有地を都市貧困層へ一時的に貸与する仕組みを整え、2015年には『緑のベルト』条例で800haの近郊地をアグロエコロジー生産用に恒久指定した。
都市農との関わり: 空き公有地の一時貸与を条例化して市民の耕作地アクセスを保障した、土地保有面での参加型都市農業の代表例。
ポートランド・マルトノマ食料政策協議会
2002自治体食農政策廃止米国オレゴン州ポートランド市・マルトノマ郡施行期間: 2002–2012
2002年に市・郡の市民諮問機関として設置され、都市農業を認める区画整理の変更や新規就農者研修などに関わった食料政策協議会。委員と行政スタッフの方向性の不一致や役割認識のずれから機能不全に陥り、2012年夏に「存在意義を失った」として解散された。
都市農との関わり: 先進的とされた自治体食料政策協議会が制度設計・役割合意の欠如で解散に至った代表例で、失敗要因が学術論文に詳細記録されている。
ロサリオ市立都市農業プログラム(PAU)2002-2020
2002自治体公的プログラムロサリオ、アルゼンチンロサリオ全域で700以上のコミュニティガーデンを運営する長年の市立プログラム。年間2,500トンの野菜を生産し、2,400以上の家族を農業生態的生産で訓練。
都市農との関わり: コミュニティ主導のガバナンスを重視。農民協会の正式な参加メカニズムを伴う不利な立場の地域を優先。
トロント都市農業アクションプラン
2001自治体公的プログラムカナダ・オンタリオ州トロント市トロント市2001年2月。カナダ初の包括的な複数セクター食糧安全保障計画。トロント・フード・チャーター承認。正式プランでは農業が開放空間ゾーンで許可された土地利用。コミュニティ庭園は100カ所以上。
都市農との関わり: カナダ初の総合食料安全保障計画。市民参加型農業を都市計画に統合し、制度化。100以上のコミュニティ庭園を展開。
ニューヨーク市コミュニティガーデン競売計画(グリーンサム)
1999自治体農地保全・貸借廃止米国ニューヨーク州ニューヨーク市施行期間: 1999–2002
1999年、ジュリアーニ市政が住宅開発のため114のグリーンサム・コミュニティガーデン用地を競売にかけようとした市の土地処分方針。住民の訴訟・抗議と非営利団体による買取、さらに州司法長官の環境影響審査を巡る提訴を受けて競売は中止され、2002年の和解で多数の農園が恒久保全された。
都市農との関わり: 都市農地を一方的に処分しようとした自治体方針が訴訟と世論で撤回された典型例で、土地保有の脆弱さと保全スキームの重要性を示す。
ベロオリゾンテ 食料安全保障政策(市条例第6.352号/都市農業・アグロエコロジー支援政策)
1993自治体食農政策ブラジル・ベロオリゾンテ市1993年の市条例第6.352号が食料安全保障の政策枠組みを定め、食料供給市局(SMAB、現SUSAN)を創設。地元生産者と消費者の直結、公共調達による地域農業の多様化などを進め、都市農業・アグロエコロジー支援を市の食料供給政策の一部として位置づけた。
都市農との関わり: 市民の食料アクセスを軸に都市農業を都市政策へ統合した先駆例で、参加型の食料システム構築のモデルとされる。
シアトル市 Pパッチ・コミュニティ園芸プログラム
1973自治体公的プログラム米国シアトル市シアトル市が運営する全米有数の自治体コミュニティ園芸プログラム。1973年にウェッジウッド地区のピカルド家の農地の一角で始まり、1974年に市議会が制度化した(「P」はピカルド家にちなむ)。現在は近隣局(Department of Neighborhoods)と非営利の土地信託が共同で管理し、2023年時点で91のPパッチ・3,000区画超を約3,500世帯が耕している。
都市農との関わり: 市が用地・運営の枠組み・スタッフを提供し、市民が低廉な負担で安定的に菜園区画を借りられる、市民主導の都市農を半世紀にわたり支える制度。自治体がコミュニティガーデンを恒常的な公共サービスとして位置づけたモデルケースで、各地の都市農政策の参照点となっている。
マイアミショアーズ村 前庭野菜栽培禁止条例
自治体土地利用・条例廃止米国フロリダ州マイアミショアーズ村施行期間: ?–2019
美観を理由に住宅前庭での野菜栽培を禁じた村の条例。2013年、17年続けた前庭菜園の撤去を命じられた夫婦が訴訟を起こし、2017年に州地裁は条例を支持したが、2019年の州法SB 82により無効化された。
都市農との関わり: 自治体の景観規制が市民の自家栽培を阻みうることを示す事例。最終的に州の先制法によって覆された。
廃止理由: 2019年のフロリダ州法 SB 82 により、住宅地の野菜菜園を規制する地方条例は無効・執行不能とされた。
バンクーバー市 都市農業ガイドライン・市民菜園支援
自治体公的プログラムカナダ・バンクーバー市バンクーバー市の都市農業に関する一連の方針・運用指針。公園や市有地での市民菜園・果樹園の設置運用の指針、民間開発地での食の景観づくりの設計指針を整え、市が用地探し・利用協定・環境教育を支援する。『グリーネスト・シティ行動計画』の地域食料目標とも連動する。
都市農との関わり: 市民による菜園づくりを公有地・民間地の双方で制度的に後押しし、用地確保や運営協定のハードルを下げる。北米の自治体による都市農業支援の代表例の一つ。
タイ・バンコク市農業プログラム
自治体公的プログラムタイ・バンコク市バンコク都市圏が実施する都市農業プログラム。空き地の公有地活用許可、地区自治体との連携、経験農家と初心者農家の相互支援とメンタリング、種子・資材・施設の提供。EAST枠組み(Easy, Attractive, Social, Timely)に基づいた長期継続を促進するコミュニケーション戦略。
都市農との関わり: 地域内ネットワークに根ざした都市農業支援モデル。政府機関が土地(空き地)と初期支援を提供し、コミュニティが知識・資源を相互共有する仕組みが機能している。タイの13地域・325世帯の参加実績があり、市民参加型農業の効果実証となっている。
フォートワース市 § 5.146 「都市農業・コミュニティガーデン条例」
自治体土地利用・条例米国テキサス州フォートワース市フォートワース市が定める都市農業・コミュニティガーデンに関する市条例。住宅地の前庭・空き地での菜園栽培、コミュニティガーデン、屋上農業などを規制・許可する基準を提供。
都市農との関わり: 市条例による都市農業許可枠組みを通じて、住宅地での市民農業の実装と地域コミュニティの食糧生産を推進。
バンコク市街地農業支援プログラム
自治体公的プログラムタイ・バンコク市バンコク市が大学や地域組織と連携して、屋上菜園やコミュニティガーデンを支援する総合プログラム。有機栽培技術の普及と市民参加の拡大を目標とする。
都市農との関わり: 屋上ガーデニングの公式支援、市民参加型ガーデンの推進、技術訓練の提供により、都市農業の実践的基盤を構築。
ブラジル・サンパウロ市都市農業制度化プログラム
自治体振興・基本法ブラジル・サンパウロ市サンパウロ市の都市農業政策は、市民社会と政府の協働により発展。市民団体による提案・実行が政策立案者に認識され、市政府の官僚が社会活動に関与しながら、都市・近郊農業政策の段階的な制度化を推進。
都市農との関わり: 市民主導のガーデン・プログラムが政策化される过程を示す。官民連携による都市農業の制度的基盤構築のモデルケース。
カナダ・トロント市ゾーニング改正による都市農業の制度化
自治体土地利用・条例カナダ・トロント市トロント市がゾーニング条例を改正し、コミュニティガーデン・屋上菜園・空き地活用農業を法的に正規な用途として明記。公有地・私有地の双方で市民参加型ガーデンの設置を可能にし、都市農業を都市計画に統合。
都市農との関わり: ゾーニング改正により、市民ガーデンの法的地位が確保され、都市農業の実践的基盤が拡大。民間事業者の参加も促進。
メデジン『きみと菜園を(Huertas con Vos)』プログラム
自治体公的プログラムコロンビア・メデジン市市の農業菜園プログラム。食料援助から機会創出型の補助へと市の政策を転換する社会革新事業として位置づけられ、有機資材を用いたクリーン農業を採用。参加者に道具・堆肥・種子のキットを配布し、都市・農村の菜園を通じて食料安全保障と地域コミュニティを強化する。3年間で1,707菜園を整備した。
都市農との関わり: 公共空間の再定義を伴う市民参加型都市農業を、食料援助に代わる自治体施策として制度化した事例。
オレンジ郡食料協議会(ノースカロライナ州)
自治体食農政策廃止米国ノースカロライナ州オレンジ郡施行期間: ?–2022
郡の食料アクセス・食料安全保障政策を扱った食料協議会。郡委員会の要請で食料アクセス評価報告書をまとめ2022年9月に提出したが、その報告直後の2022年12月に郡委員会が予算を打ち切り、協議会は解散に追い込まれた。
都市農との関わり: 行政に求められた分析を提出した直後に予算を切られた例で、食料政策協議会が予算緊縮で容易に切り捨てられる脆弱さを示す。
デンバー持続可能食料政策協議会・市食料システムチーム
自治体食農政策米国コロラド州デンバー市郡市の気候部門に置かれ、健康的な食のアクセスや地域食産業、レジリエンスを掲げる長期計画『Food Vision 2030』を策定した食料システムチームと、それが支える食料政策協議会。2億ドル規模の財政危機を受け2025年に長年の担当者を含むスタッフが削減され、体制が空洞化した。
都市農との関わり: 策定した長期食料ビジョンを実行する行政基盤が財政難で静かに解体された例で、計画はあっても担い手が消える失敗パターンを示す。
南アフリカ・ケープタウン市コミュニティガーデン支援政策
自治体公的プログラムケープタウン市(南アフリカ)ケープタウン市と州農業局が低所得地域のコミュニティガーデンを支援。ボーリング掘削、水タンク、灌漑システムの提供。食料安全保障と栄養改善を目標。実装はケープフラッツ地域の複数タウンシップで進行中。
都市農との関わり: 南アフリカにおける低所得地域への食料アクセス向上の取組。市民参加型の食料安全保障戦略。環境正義と栄養改善の統合アプローチ。
サンディエゴ市都市農業インセンティブゾーンプログラム
自治体税制・補助米国カリフォルニア州サンディエゴ市サンディエゴ市の都市農業インセンティブゾーン(UAIZ)プログラム。0.1~3エーカーの市有地等を農業利用に提供し、農業のみに完全に専用される土地に対し、市街地での農業展開を支援。
都市農との関わり: 市民農業者が低コストで土地利用できるため、アーバンファーミングの起業・展開を促進。税制優遇と土地アクセスの改善により、市民参加型農業の拡大に寄与。
香港における建物統合型農業ガイドラインと支援制度
自治体緑化規定香港特別行政区香港における高密度都市環境での建物統合型農業(バーティカルファーム等)の推進。低炭素高層ビル内での垂直農業システムの設計導入に向けたガイドラインと支援。
都市農との関わり: 高密度都市での食料自給率向上と CO2 削減を両立。市民が参加できる屋上・建物内農業の設計・運営支援を通じ、都市での農業参加機会を拡大。
メルボルン市 コミュニティガーデン政策
自治体農地保全・貸借オーストラリア・メルボルン市メルボルン市が所有・管理する土地でのコミュニティガーデンの設置・運営の条件を定める市の政策。誰が・どのように区画を申請し管理できるかを示す一方、文化財指定地・街路樹帯・主要な公園庭園などガーデンに適さない土地も明記する。市はオーストラリアでも数少ない統合的な食料政策をもつ自治体の一つとされる。
都市農との関わり: 市民がコミュニティガーデンを公有地に開設するための明確な手続きと土地アクセスの枠組みを提供し、都市内の市民主導の農的活動を制度的に支える。
米国カリフォルニア州オークランド市 都市農業・コミュニティガーデン ゾーニング規定
自治体土地利用・条例米国カリフォルニア州オークランド市オークランド市が都市の農的活動を3区分に分けて用途地域ごとに扱うゾーニング規定。(1)コミュニティガーデン=自家消費・寄付を目的とし季節限定の販売のみ認められる区分で、住宅・商業・工業の多くの地域で許可不要、(2)限定的農業(Limited Agriculture)=敷地内外での販売を目的とした作物生産で、住宅系・商業系では条件付き、(3)拡張的農業(Extensive Agriculture)=家畜飼養や機械化農業を含む最も制約の強い区分で、原則として条件付き使用許可(CUP)が必要。養蜂は3群以下なら可、それを超えると拡張的農業の扱いになる。市の公開ページは規定が旧来の内容を更新したものと説明しているが、制定年は明示されていない。
都市農との関わり: 市民主体の菜園にとっては、コミュニティガーデンが多くの用途地域で許可不要になっている点が使いやすい。一方で販売を伴う活動に移った瞬間に区分が変わり、条件付き使用許可(CUP)ではゾーニング・ワークシートや配置図、開発審査の基本申請書に加え、騒音・臭気・交通・農薬の流出について近隣に悪影響がないことを示す判断(findings)が求められるため、収益化を目指す小規模事業者ほど手続き負担が重くなる。またコミュニティガーデンで認められる販売は「季節限定」に留まり、通年の直売所的な運営はこの区分では行えない。ヘーゲンバーガー通り周辺など、一部の区域では特定の活動が全面的に認められない点にも注意が必要。
神戸市 こうべコンポストプロジェクト(環境局資源循環課の生ごみ堆肥化推進事業)
自治体公的プログラム日本・兵庫県神戸市神戸市環境局資源循環課が事業主体となり、一般社団法人オンドが事務局を務める市の事業。市内各所の協力菜園・団体を会場に無料のコンポスト講習会を巡回開催し、受講者にはコンポスト容器を無料で贈る。会場となる協力菜園は東灘・灘・中央・兵庫・長田・須磨・垂水・北・西の各区に広がり、コミュニティ農園、商業施設屋上の菜園、高校敷地内の菜園、公園内の菜園、レンタル菜園、閉校校舎の複合施設、里山の拠点、マルシェなど多様である。放置竹林の整備で出た竹チップを使う「竹コンポスト」の講習も行い、竹林整備関連団体も協力団体に位置づけている。講習会の受講・見学には公式LINEでチェックインポイントが付き、9月末までに5ポイントを貯めた神戸市在住者には「コンポストマイスター証」と景品(オリジナルTシャツ、不織布コンポスト容器等)が贈られる。
都市農との関わり: 自治体の廃棄物部局が、生ごみ減量の施策を市民の菜園ネットワークに載せて実施している例。講習会の会場を市の施設ではなく市内各地の市民菜園・農的な拠点にすることで、堆肥化の学びが「その場で堆肥が使われる畑」と直結し、コンポスト容器の無料配布とポイント制度で継続を促している。放置竹林という別の地域課題(竹の利活用)を堆肥の資材として取り込んでいる点も、都市農の資源循環の設計として参照できる。
リガ市 家庭菜園(ģimenes dārziņi)のための市有地無償貸付制度
自治体農地保全・貸借ラトビア・リガ市リガ市が所有・管理する土地を、家庭菜園(ラトビア語で ģimenes dārziņi)の設置と維持のために市民へ貸し付ける制度。個人だけでなく私法上の法人も申請できる。賃料は無償。申請から30営業日で処理され、廃止予定区域外の菜園については70日かかる。所管はリガ市の資産局(Īpašuma departaments)で、申請は同局の窓口(Kaļķu/Knights通り10番地)またはメールで受け付ける。多子世帯(子ども3人以上)、障がいのある人、生活困窮者が優先される。根拠となるのは土地管理法、公的機関の土地賃貸・建築権に関する規則、自治体法などのラトビア国内法と、家庭菜園用地の配分・貸付手続に関するリガ市議会決定。
都市農との関わり: リガでは市が貸し出す区画に空きが無いほど菜園の人気が高まっている。この制度は無償の貸付でありながら、区画の一部が「廃止予定区域」に置かれていること(申請の処理期間が区分けされている)が示すとおり、都市開発が優先されれば菜園が消える前提の仕組みでもある。市民が始めた共同菜園(Sporta pils dārzi など)とは別系統の、旧ソ連期から続く家族菜園の系譜にあたる制度で、両者の並存がバルト諸国の都市の特徴になっている。ラトビアはこのデータベースに制度が1件も無かった国。
「緑のソフィア(Зелена София)」プログラム(ソフィア市)
自治体公的プログラムブルガリア・ソフィア市ソフィア市が毎年公募する、市有の緑地を住民の手で手入れするための助成プログラム。応募できるのは区役所に登録された建物管理組合、公式の登録簿に載る区分所有者の団体、ソフィア市に登録された非営利法人。採択された企画には、市が苗木・低木・草花、ベンチやパーゴラ、プランター、ごみ箱、道具といった資材と設備を無償で提供する(現金の交付ではない)。対象は集合住宅の間の空地や住区内の庭の緑化、休息・交流の場づくりと、その後の維持管理。資材の一覧と価格は市の「緑のシステム」局が公開している。
都市農との関わり: ブルガリアには市民菜園を直接あつかう制度がなく、ソフィアの菜園づくりは市民イニシアチブが自前で担ってきた。このプログラムは緑化一般の枠組みだが、住区内の市有地を住民の企画で整備し、資材の提供を受けられる数少ない公的な入り口として使われている(ソフィア「ヴィトシャ」地区のコミュニティ・バイオ菜園などが、この枠で市から資材の支援を受けたと報告されている)。市民が公有地に手を入れる正面の窓口が緑化プログラムしかない都市で、菜園づくりがどこに接続しうるかの実例。
トリノ市 市民農園の割当・管理に関する規則(第363号)
自治体公的プログラムイタリア・トリノ市トリノ市(Città di Torino)の規則第363号「Regolamento per l'assegnazione e gestione degli orti urbani」。市民農園(orti urbani)の割当と管理について市が定める規定を置くもので、所管は市議会(Consiglio Comunale)。
都市農との関わり: トリノで市民農園の区画を借りるための制度的な根拠にあたる。実際の募集は市の区(Circoscrizione)単位で「Bando Assegnazione Orti Urbani(市民農園割当公募)」として出される。規則の本文はPDFで市の公式文書ページに掲載されている(本ルーティンの実行環境ではPDF本文を読み取れなかったため、条文の細目は未確認)。
レイキャビク市 市民菜園貸付制度(grenndargarðar)
自治体公的プログラムアイスランド・レイキャビク市市が約600区画の菜園を市民に貸し出す制度。ヴェストゥルバイル、フォスヴォーグル、ロイガルダールル、アゥルバイル、グラーヴァルヴォーグル、キャラルネス、メザルホルトなど市内7か所に加え、隣接するモースフェットルバイルのスカンマダールルに200区画がある。区画は約100㎡(スカンマダールル)、約20㎡、8㎡の3種類。2026年の年間使用料はスカンマダールル7,760クローナ、標準区画6,420クローナ、グラーヴァルヴォーグルなど5,180クローナ。利用開始は5月1日(天候が許せば前倒し可)。ステッキャルバッキとグラーヴァルヴォーグル北側はアイスランド園芸協会が、ブレイズホルト(ヤザルセル)はセリャガルズルが、グラーヴァルホルトは住民組織が運営を担う。
都市農との関わり: レイキャビクの市民菜園は1900年ごろに始まり、20世紀半ばには市民がアイスランドの馬鈴薯生産の約4分の1を担った歴史を持つ。2011年に学校菜園を通常の区画に転換して現在の規模になり、2008年の金融危機以降ふたたび関心が高まっている。北欧の小規模都市で、公有地の区画貸付という古い制度がどう維持・更新されてきたかを示す例。
レイキャビク市 地区計画(hverfisskipulag)の都市農業許容規定
自治体土地利用・条例アイスランド・レイキャビク市レイキャビク市の地区計画(hverfisskipulag)は、住民が自分の敷地内および多くの場合は市有地でも都市農業を行うことを認める規定を置いている。野菜やハーブなどの食用作物の栽培に加え、市街地での鶏の飼育も対象に含む。市は住民が最初の一歩を踏み出すための都市農業ガイドラインも公開している(発行年は公式ページに明記がない)。
都市農との関わり: 市民菜園の貸付(別項)が「借りる区画」を用意する制度なのに対し、こちらは自宅の敷地や身近な市有地で作物を育て鶏を飼うことを都市計画の側であらかじめ認める規定。都市計画で食料生産を明示的に許容する例として、条例改正なしに小さな栽培を広げたい自治体の参考になる。市は屋外活動と公衆衛生の促進、地域のつながりの強化、栄養のある食べ物の供給を根拠に挙げている。
米国ワシントン州フェデラルウェイ市 都市農業章(FWRC 第19.62章)
自治体土地利用・条例米国ワシントン州フェデラルウェイ市フェデラルウェイ市の市条例集(FWRC)第19.62章にまとめられた都市農業のゾーニング規定。地元産の食料を増やし、食料安全保障と経済機会を高め、遠距離の食料流通による温室効果ガスを減らすことを目的とする。コミュニティガーデンと都市農園は「担当部長の承認があれば」どの用途地域でも認められ、仮設のファーマーズマーケットは全用途地域で、常設のマーケットは非住居系の小売地域で認められる。許可された農的プロジェクトに付随するファームスタンド(直売所)は、規模と期間の制限のもとでどの用途地域でも現地販売のために認められ、家庭内食品製造(cottage food operations)も RCW 69.07.100 / 69.07.120 に基づきどの用途地域で可能とされる。
都市農との関わり: 「どの用途地域でもコミュニティガーデンと都市農園を認める」という原則と、直売スタンド・ファーマーズマーケット・家庭内食品製造まで一本の章にまとめた点が特徴で、育てたものを売るところまでを地区ごとに切り分けずに扱っている。ワシントン州法(RCW 35.21.192/35A.21.420)が与えた都市農業ゾーンの権限を、市のコードとして具体化した実装例として参照できる。
ジョグジャカルタ市「カンプン・サユール/ロロン・サユール」(野菜の集落・野菜の路地)事業
自治体公的プログラムインドネシア・ジョグジャカルタ市ジョグジャカルタ市農業・食料局(Dinas Pertanian dan Pangan, DPP)が進める都市農業事業。住宅の庭先・空き地・路地といった細かい隙間を野菜や果樹の栽培にあて、収穫を家庭の栄養改善の取り組みに回す。市は種苗と稚魚を市の育苗圃場・種苗場から供給し、各区(kemantren)に配置した農業普及員(PPL)が農業・漁業・畜産の面で農民グループを伴走支援する。起点のひとつはカウマン集落で、2014年に農業省の「持続的食料家屋地区(KRPL)」事業として始まった。2022年10月時点で市内には115のカンプン・サユールがあり、市はこれを「クリエイティブ・エコノミー」として組み直し、農民グループ間の産品流通(「ジョグジャカルタからジョグジャカルタへ」)、栽培用土や育苗ハウスの生産、生ごみの液肥化、行政による買い上げ、飲食グループとの連携事業「Gandeng Gendong」などにつなげている。
都市農との関わり: 路地一本、庭先ひと区画という都市の細かい余白を、行政が種苗・普及員・販路まで含めて束ねている点が参考になる。担い手は農民グループと女性農民グループ(KWT)で、市民参加型の栽培がそのまま市の食料政策の一部になっている。一方で、気候や担い手の都合により115か所すべてが順調に動いているわけではないことも市側が認めており、面的に広げた制度の運用上の限界もあわせて記録に残る。
マディヤプール・ティミ市 都市農業・屋上農業振興および資材支援事業(ネパール)
自治体公的プログラムネパール・バクタプル郡マディヤプール・ティミ市マディヤプール・ティミ市が公式サイトに掲げる、都市農業と屋上農業の普及および資材支援の事業。市の事業一覧に「Urban Agriculture/Rooftop Farming Promotion and Material Support Program」として掲載されている。対象者の要件・補助率・年度といった細目は同ページに記載がないため、ここでは事業の存在と名称のみを記録する。
都市農との関わり: カトマンズ盆地の自治体が屋上農業を自前の事業として制度化している例。同市では UN-Habitat・ENPHO との共同事業「グリーン屋上農園(ウォーター・フォー・ライフ)」も行われており、外部資金の事業と市の常設事業が併走している構図が読み取れる。
シンシナティ市 グリーン・シンシナティ計画「シーズ・オブ・チェンジ」都市農業助成金
自治体税制・補助米国オハイオ州シンシナティ市(環境・持続可能性局)シンシナティ市の気候・環境計画「グリーン・シンシナティ計画」に基づき、環境・持続可能性局が公募する都市農業向けの助成金。コミュニティガーデン、採集地(フォレージング・サイト)、マーケットガーデン事業、地域の食料ハブを対象とする。2026会計年度は54件の申請に対し48件を採択した。
都市農との関わり: 空き地の多い中西部の都市で、市の気候計画の中に市民の食料生産への助成を組み込んだ枠組み。採択率が9割近く、コミュニティガーデンのような小さな主体でも申請が通りやすい設計になっている点が特徴。生産だけでなく採集地や食料ハブまで対象に含め、都市の食のネットワーク全体を支援対象に置いている。
タルトゥ市の市民農園・コミュニティガーデン(市有地をNPOへ貸し付ける方式)
自治体農地保全・貸借エストニア・タルトゥ市タルトゥ市が市内9か所の菜園を市の公式ページで一覧化し、それぞれの土地を園を運営する非営利団体(MTÜ)に貸し付ける。区画は市が個人へ直接貸すのではなく、運営団体を介して利用者へ又貸しされる(市のページの表現で「aeda haldava mittetulundusühingu vahendusel annab linn aiamaad kasutajatele rendile」)。利用者は土地の所有者にならない。内訳は、新しいコミュニティガーデンとして Linnupargi aed(8.3 ha・区画25〜150平方メートル・MTÜ Tartu Maheaed 運営・賃貸借は2029年5月1日まで)、Lehe aed(約1 ha・同団体運営・2025年まで)、Emajõe aed(MTÜ Majakas 運営・2026年10月1日まで)、Veeriku aed(2.7 ha・60〜180平方メートルの区画を30〜80区画予定・Veeriku Selts 運営)。ソビエト期の1960年代に始まった歴史ある区画地として Jaamamõisa aed(5 ha・130区画・150〜200平方メートル・2028年11月1日まで)、Tiigiaed(10 ha・91区画・500〜1000平方メートル・1965年開設)、Timuti aiamaad(1 ha 超・利用者約20人・2033年11月28日まで)、Märja aiamaad(2 ha・運営主体の記載なし)、Ilmatsalu aiamaad(3.3 ha・69区画を把握・実利用54人)。所管は空間創造部(Ruumiloome osakond、Küüni 3)。
都市農との関わり: 土地を市が持ったまま運営責任をNPOへ渡す仕組みで、市民は土地を買わずに耕せる。区画の割り当て・会費・ルールづくりを担うのは運営団体で、行政は貸付期間と土地だけを決める。賃貸借の期限が2025年から2033年までばらばらに設定されている点も実務的に重要で、期限が近い園ほど投資の回収年数が読めない。ソビエト期の区画地と新しいコミュニティガーデンを同じ枠組みで扱っている例として、旧東側の都市が既存の菜園を制度に載せ直すときの参照になる。エストニアからは既にタリンの助成制度を収録しており、土地貸付という別の手法を持つ第2の自治体にあたる。
フンシャル市 市営都市菜園(Hortas Urbanas Municipais)
自治体公的プログラムポルトガル・マデイラ自治地域 フンシャル市フンシャル市が「市営都市菜園規則(Regulamento das Hortas Urbanas Municipais do Funchal)」にもとづいて運営する区画貸与の制度。2025年3月10日から40区画の申込を受け付けた回では、アンパロ3・ナザレI 2・ラランジャル15・ペンテアダ5・ポソ・バラル2・リベイラ・デ・ジョアン・ゴメス3・リベイラ・グランデII 2・サン・マルチーニョI 2・テラ・シャン4の9か所に区画を配分した。申込は市民窓口(Loja do Munícipe)または市のオンライン窓口CMFonlineで受け、待機者が50人に達した時点で締め切る。
都市農との関わり: 大西洋の島嶼都市で、市が自ら用地を用意して住民に菜園区画を貸す仕組み。規則という形をとるため割当の基準と手続きが公開され、申込には居住の証明や税・就労に関する書類が要る。9か所に分散して配置することで、住まいの近くで耕せる距離を確保している。