食育・学校菜園
食育は、収録事例のなかで最も層が厚いテーマです。学校の校庭菜園から、企業・自治体が運営する体験農園まで、『つくって・食べて・学ぶ』場づくりの型が数多く蓄積されています。
611 件の事例
要点
- 収録 611 件が食育に関わる ── 最大のテーマ群。
- 収益の柱は販売より『参加費・会費・助成・企業/自治体連携』。
- 学校・給食・カリキュラムとの接続と、世話を続ける担い手が継続の条件。
データから見えること
成立しやすいのは、栽培そのものより『プログラム』に価値を置くモデルです。区画貸しに体験イベント・ワークショップ・収穫祭を組み合わせ、参加費や会費、自治体・企業の助成で運営費をまかなう事例が中心。収穫物の販売は主収入になりにくく、教育・コミュニティ価値が事業の柱になります。
学校・保育と組む場合は、カリキュラムや給食との接続、安全・衛生、継続的に世話をする担い手の確保が鍵になります。地域の市民農園やNPOが学校と連携してハブになる例が、長続きしやすい傾向です。
代表的な事例
関連する事例を見る →さかのうえん(長崎市中新町)
JPNagasaki, Nagasaki, Japan
長崎市中新町の斜面市街地で、市民団体「長崎都市・景観研究所/null」が空き地を貸し農園化するプロジェクト。2020年の中新町ベース開園以降、年1カ所ペースで拡大し2025年時点で5拠点。自治会管理地・民有地に加え、九州初となる市民団体への有休国有地管理委託(ザ・ビュー)も実現。高齢化で増える空き地の管理負担を減らしつつ、若い世代や福祉・教育との接点をつくる。
nagasaki-null.design+6
31VENTURES × シェア畑(アグリメディア)社内農体験実証
JPTokyo, Japan
三井不動産のベンチャー共創部門31VENTURESが、出資先アグリメディアの貸農園『シェア畑』を使い、2023年に社内の農体験実証を実施。グループ社員が公募で参加し、種まきから収穫まで野菜づくりを行い、農を通じた社内コミュニケーション活性化を検証した。三井不動産はこの出資を機に『農ある街づくり』を重点領域に追加している。
31ventures.jp+4
みんなのうえんPARK湊川
JPKobe, Hyogo, Japan
神戸市兵庫区湊川のUR遊休地約1,540㎡を、貸し農園+広場(公園)として再生した社会実験拠点(2022年開園)。約1/3を農園に、残りを公園として活用する。
minnanouen.jp+4
日の里団地 さとづくり48(日の里ファーム・ひのさと48)
JPMunakata, Fukuoka, Japan
福岡県宗像市の日の里団地(1971年・九州最大級)の旧48号棟を、保育所・DIY工房・団地内ビール醸造所などの複合拠点「ひのさと48」として2021年に再生した地域共創プロジェクト「さとづくり48」。団地敷地内に農場「日の里ファーム」を設け、多世代が農や食を介して交流する。
ur-net.go.jp+4
関連する研究
都市農業の社会文化的便益:文献レビュー
57カ国の事例を含む272本の査読論文を分析し、都市農業の社会文化的便益を「結束したコミュニティ」「健康と幸福」「経済的機会」「教育」の4領域に整理した大規模レビュー。社会的つながりや学びの場としての価値が最も多く報告された。
Ilieva R.T., Cohen N., Israel M. ほか · 2022 · Land (MDPI), 11(5):622
コミュニティガーデンが食事・健康・心理社会的・コミュニティ的成果に及ぼす影響:系統的レビュー
基準を満たした53研究を統合した系統的レビュー。コミュニティガーデンへの参加は野菜・果物の摂取量増加や一部の心理社会的・コミュニティ的成果と正の関連を示したが、身体的健康指標への効果は一貫しなかった。
Hume C., Grieger J.A., Kalamkarian A. ほか · 2022 · BMC Public Health, 22:1247
社会住宅における学びの場としてのコミュニティガーデン:幸福感とコミュニティのつながりに関する参加者の認識
シドニーの社会住宅団地に住む42名を対象に、6つの新設コミュニティガーデンの効果を混合研究法で評価。参加者は健康・幸福への意識向上、新鮮な食物を育てる関心、収穫物やレシピの共有、幸福感、そして頻繁な交流とコミュニティのつながりを報告した。
Gray T., Tracey D., Truong S. ほか · 2022 · Local Environment, 27(5):570-585
正規教育における食の持続可能性の導入:菜園を文脈とした中等教育向け教授・学習シークエンス
「食と栄養」をテーマに菜園を活用した授業単元の効果を、従来の教科書ベースの単元と比較評価。菜園ベースの学習は生徒の理解をより包括的にし、実生活での意思決定への準備を高めるなど、教育的改善をもたらした。
Eugenio-Gozalbo M., Ramos-Truchero G., Suárez-López R. ほか · 2022 · Education Sciences (MDPI), 12(3):168
東京近郊における食の循環をもつコミュニティガーデンのガバナンス
東京近郊のコミュニティガーデン「せせらぎ農園」を事例に、近隣の生ごみを回収して堆肥として畑に還す食の循環型ガーデンのガバナンスを分析。創設者がボトムアップで運営を立ち上げ、障がい者への就労機会や子どもへの食育の場を提供し、地域の福祉施設・幼稚園・学校と連携してきた過程を明らかにした。
Shimpo N. · 2021 · Urban Agriculture & Regional Food Systems (Wiley), 6:e20015