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数えられていない屋上——日本の屋上緑化統計が測っていないもの

累計633ヘクタールは在庫ではない。日本の屋上の現在地を、二つの数字の設計から読み直す

2026-07-30 · 23

特集 · 屋上という農地5 / 7

日本の屋上はいまどうなっているか。この問いに答えようとすると、すぐに奇妙な壁に突き当たります。数字はある。国土交通省は2000年から毎年、全国の屋上緑化の施工実績を調べており、2024年には新たに約14.5ヘクタールが施工され、25年間の累計は約633ヘクタールに達したと公表しています。東京都も2000年度以降の屋上等緑化の実績を公表しています。ところがこの二つの数字は、どちらも「いま屋上に何があるか」を測っていません。国交省の調査が数えているのは新しく施工された面積であり、撤去された分も枯れた分も差し引かれていません。東京都の数字は届け出られた計画上の値であり、都自身が「実際の施工面積とは異なります」と断っています。第5回は、日本の屋上の現在地を、まずこの計測の構造から読み直します。そのうえで、年間施工面積が2014年の約26.9ヘクタールから2024年の約14.5ヘクタールへとおよそ半減した事実と、それでも数字の外で続いている現場を並べて見ます。

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3分でわかる本記事の内容

  • 日本の屋上緑化は減っている。国土交通省の調査で新たに施工された屋上緑化は2024年に約14.5ヘクタール。2014年の約26.9ヘクタールと比べておよそ半分で、2017年の約23.1ヘクタールからも下がっている。
  • 累計「約633ヘクタール」は在庫ではない。2000年から2024年までに新しく施工された面積の合計であり、その後に撤去された分も枯れた分も差し引かれていない。25年分の売上であって、残高ではない。
  • もう一つの数字も実測ではない。東京都の「屋上等緑化実績」は緑化計画書の届出に基づくため、都自身が「計画上の数値であるため、実際の施工面積とは異なります」と明記している。
  • 面積を作ったのは市場ではなく条例だった。東京都は「東京における自然の保護と回復に関する条例」に基づき、敷地1,000平方メートル以上(国および地方公共団体が有する敷地では250平方メートル以上)の新築・増改築に緑化計画書の届出を義務づけている。
  • 屋上は制度上、農地ではなく緑化として扱われてきた。都市農業振興基本法(平成27年4月22日法律第14号)第2条の「都市農業」は「市街地及びその周辺の地域において行われる農業」を指すが、屋上の栽培を農の側で数えた統計は見当たらない。
  • 本記事の立場は、日本の屋上について「わかっていない」と言うのが最も正確だということである。停滞を示す数字はあるが、いま屋上に何が残っているかを測った統計はない。まず必要なのは推進ではなく、在庫を数えることである。

はじめに

「日本の屋上はいまどうなっているか」に、答える数字がない

この特集はここまで、屋上を面積として数え直し、荷重と水の物理を設計の水準まで下ろし、屋根に土を載せる発想の系譜を辿ってきました。第5回で扱うのは、日本の現在地です。ところが、これが思いのほか難しい。日本の屋上緑化には、国が毎年続けている全国調査があり、東京都には条例に基づく届出制度があり、実績も公表されています。統計が無いわけではないのです。それでも「いま日本の屋上に、緑や畑がどれだけ残っているか」という問いには、どの資料も答えてくれません。答えないのではなく、答えられない設計になっている。本記事はまず、その設計を読むところから始めます。

先に結論を言えば、日本の屋上について確かに言えることは三つです。第一に、新しく作られる面積は減っている。国土交通省の調査で、2024年に新たに施工された屋上緑化は約14.5ヘクタールでした。第二に、これまでに作られた面積の合計は約633ヘクタールだが、これは在庫ではなく累積のフローである。第三に、その面積を作ったのは市場ではなく制度である。この三つ以外のこと——たとえば、そのうちいくつが今も生きているのか、何ヘクタールが撤去されたのか——は、公表された統計からは分かりません。

全体像

十年でおよそ半減した——横ばいではなく後退

年ごとの施工面積を並べると、傾きははっきりしています。国立環境研究所の環境展望台によれば、2014年の屋上緑化の年間施工面積は約26.9ヘクタールでした。国土交通省の公表資料では、2017年に約23.1ヘクタール、2023年に約15.7ヘクタール、そして2024年に約14.5ヘクタールです。十年でおよそ半分になった計算になります。第1回では2022年と2023年を並べて「伸びはすでに横ばい」と書きましたが、二年ではなく十年の幅で見ると、横ばいではなく後退と呼ぶべき傾きが現れます。なお2023年と2024年の数値は暫定値とされており、今後の調査で修正されうる点は留保しておきます。

この後退を「関心の低下」と読むのは早計です。国土交通省が同じ調査で指摘しているのは、企業事務所の屋上緑化において、二種類以上を組み合わせた複合植栽の施工面積が単植を上回るようになった、という変化でした。中高木やタケ類を含む植栽が増えており、暑熱対策、生物多様性の保全、働く人のウェルビーイングに寄与するものと位置づけられています。面積は縮み、内容は厚くなっている。数量と質が逆方向に動いているとき、面積だけを見て「衰退」と結論するのは危うい。それでも、面積が半分になった事実は残ります。

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