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重さと水の設計——屋上を農地に変える物理

1,800ニュートンの天井から、蒸散という冷却装置まで——屋上農園の図面を下から読む

2026-07-27 · 23

特集 · 屋上という農地2 / 7

昨日の第1回「屋上という農地」では、屋上を面積として数え直しました。今日はその面積を、設計の水準まで下ろします。屋上農園の図面は、上から——どんな野菜を植えるか——ではなく、下から読まなければなりません。まずスラブがどれだけの重さを許すのか。次に防水層をどう守るのか。そのうえでようやく、土の厚さと作物が決まる。日本の建築基準法施行令第85条は、屋上広場およびバルコニーの積載荷重を、床の構造計算をする場合で1平方メートルにつき1,800ニュートン——およそ180キログラム重——と定めています。これは人が立つための数字であって、土のための数字ではありません。本記事はこの一枚の天井から出発し、防水・耐根・排水・ろ過という層の重なり、粘土をおよそ1,200℃で焼いてつくる軽量骨材がなぜ軽いのに水を持てるのか、屋上の風がなぜ真ん中ではなく縁から壊すのか、そして蒸散という冷却装置が何に依存しているのかまでを辿ります。屋上は、農地としてよりも装置として読むと、よく見えてきます。

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3分でわかる本記事の内容

  • 屋上に何を載せられるかは、法が先に決める。施行令第85条は屋上広場・バルコニーの積載荷重を住宅の居室と同じ扱いとし、床の構造計算で1平方メートル1,800ニュートン(約180キログラム重)と定める。
  • しかも土は、その枠に入らない。緑化の重量は固定荷重として構造計算に算入すべきもので、薄層型はおよそ50〜120、厚層型は390〜730キログラム毎平方メートルとされる。
  • 軽量人工土壌が軽いのに水を持てるのは、孔が二階建てだからである。粘土を約1,200℃で焼いた膨張粘土のかさ密度はおよそ250〜510キログラム毎立方メートルで、鉱質土壌の三分の一から五分の一にとどまる。
  • 屋上を冷やしているのは土ではなく水である。台湾での実験では厚さ10センチの軽量基盤の屋上が室内温度を夏季平均5〜6℃、最大10.65℃下げ、最大の寄与要因は断熱ではなく蒸発散だった。
  • 本記事の立場は、屋上農園がまず設備工学の問題だということである。荷重・防水・排水・灌水が決まらないうちに作物を選ぶのは順序が逆で、失敗の多くはこの順序違いから生じる。

はじめに

屋上農園の図面は、下から読む

地上の畑なら、設計は作物から始められます。何を育てたいかを決め、それに合う土をつくり、必要なら水を引く。土の下に何があるのかを問う必要は、ほとんどありません。屋上ではこの順序が逆になります。最初に問われるのは「このスラブは何キログラムまで許すのか」であり、次が「防水層をどう守るのか」、その次が「水をどこから入れて、どこへ抜くのか」です。作物の選択は、いちばん最後に来ます。昨日の第1回では、屋上を土の深さという最も基本的な自由を最初に奪われた農地だと書きました。今日はその不自由の中身を、数字と層の順番に沿って開いていきます。

この順序を守らなかったときに何が起きるかは、はっきりしています。土を厚くしすぎれば構造が持たない。防水層の一点が破れれば階下が濡れる。排水が詰まれば屋上に水が溜まり、その水がまた重さになる。灌水設備を省けば真夏の数日で枯れる。屋上農園の失敗は、農業の失敗としてよりも、設備の失敗として起こります。だからこの記事は、農書としてではなく設計の話として書きます。扱うのは四つの物理——重さ、水、風、熱——であり、そのすべてが互いに結びついています。

その結びつき方は、しばしば直観に反します。たとえば重さは屋上農園にとって最大の制約ですが、同時に風に対するほとんど唯一の抵抗手段でもあります。土を軽くするほど飛ばされやすくなる。水は植物の命綱ですが、建物にとっては最大の脅威であり、しかも水を吸い切った土は最も重い状態になります。冷却効果を生むのは土そのものではなく、土が抱えた水です。ひとつを軽くすると別のどこかが弱くなる——屋上の設計とは、この綱引きのどこに線を引くかを決める作業にほかなりません。

荷重

1,800ニュートンという出発点

日本で屋上に何を載せられるかを最初に規定するのは、建築基準法施行令第85条の積載荷重の表です。表の(八)は「屋上広場又はバルコニー」を掲げ、その数値は(一)の「住宅の居室、住宅以外の建築物における寝室又は病室」によると定めています。(一)の数値は、床の構造計算をする場合が1平方メートルにつき1,800ニュートン、大ばり・柱又は基礎の構造計算をする場合が1,300ニュートン、地震力を計算する場合が600ニュートンです。ただし学校または百貨店の用途に供する建築物では、(四)「百貨店又は店舗の売場」の数値、すなわち2,900・2,400・1,300ニュートンによるとされています。

1,800ニュートンは、重力加速度で割ればおよそ184キログラム重にあたります。1平方メートルにつき180キログラムまで、という言い方をすると余裕があるように聞こえますが、この数字の意味を取り違えてはいけません。積載荷重とは、人や家具のように入れ替わり、動く荷重を統計的に見込んだ数字です。屋上緑化の土や排水材や樹木は、本来そこには入りません。埼玉県が公開している屋上緑化の資料も、屋上緑化は建物の積載荷重によって制限されると述べたうえで、施行令の規定を参照しています。制限するのは確かに積載荷重の枠ですが、載る土そのものは別の枠に属しているのです。

新築であれば話は単純です。緑化の重さを設計条件として最初から織り込み、必要なら梁や柱を増やせばよい。難しいのは既存の屋上です。設計時にどれだけの余裕が見込まれていたのか、その余裕をどこまで使ってよいのかは、図面と構造計算書を当たらなければわかりません。「屋上があるから畑にできる」とは言えず、「構造計算書があるから検討できる」と言うべきなのです。市民の側から屋上農園を始めようとするとき、最初に立ちはだかるのは土でも植物でもなく、この一冊の書類です。

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