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乾いた都市で耕す——南欧は農地を「所有せずに」留めてきた

水は足りない。土地は売れる。それでもミラノは1990年に約46,300ヘクタールを、バルセロナは1998年に3,473.26ヘクタールを、買わずに都市の縁へ固定した

2026-08-02 · 19

特集 · 南欧という乾いた都市1 / 3

南欧の都市農を語るとき、私たちはたいてい二つの絵のどちらかを描きます。ひとつは地中海の陽光と石畳、テラスの鉢植えという観光の絵。もうひとつは、経済危機で職を失った人々が空き地を耕したという物語です。どちらも間違いではありませんが、どちらも仕組みを説明しません。この短い特集は、別の入口から入ります——南欧の都市農をいちばん強く縛っているのは水であり、南欧がいちばん独自に発明したのは区画ではなく「農業公園」という装置だ、という入口です。欧州環境機関(EEA)によれば、2023年に水不足の条件下に置かれたのは EU 国土の28%・人口の32%で、南欧では人口の約30%が恒常的な水ストレス下、最大70%が夏季の季節的ストレス下にあります。一方で EU 全体の淡水取水は2000〜2009年平均の224,000百万立方メートルから2020〜2023年平均の192,600百万立方メートルへ14%減ったにもかかわらず、農業部門の地下水取水だけは11,000から16,500百万立方メートルへ52%増えました。水が細るなかで、農業は地下へ手を伸ばしています。その制約のうえに南欧が置いたのが、ミラノ南農業公園(1990年、約46,300ヘクタール、1,400を超える農業経営)とバイシュ・リョブレガート農業公園(1998年、3,473.26ヘクタール、約621経営体)です。どちらも行政は土地を買っていません。買わずに留める——本記事はその技法を解きほぐし、続く2日でイタリアとスペインを訪ねる準備をします。

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3分でわかる本記事の内容

  • 南欧の都市農を縛るのは土地ではなく水である。EEA によれば2023年に水不足の条件下にあったのは EU 国土の28%・人口の32%、南欧では人口の約30%が恒常的な水ストレス下、最大70%が夏季の季節的ストレス下にある。
  • ただし国単位の平均は渇きを隠す。Eurostat の2022年 WEI+ はギリシャ13.8%・ポルトガル10.1%・スペイン8.8%と逼迫の目安20%を下回る一方、キプロスは71.0%、マルタは34.1%。渇きは国ではなく流域と季節に宿る。
  • 農業の水需要は緩んでいない。EU の淡水取水総量は2000年代平均224,000百万立方メートルから2020〜2023年平均192,600百万立方メートルへ14%減ったが、農業部門の地下水取水は11,000から16,500百万立方メートルへ52%増えた。
  • 南欧に固有なのは区画ではなく「農業公園」である。ミラノ南農業公園は1990年4月23日のロンバルディア州法24号により約46,300ヘクタール・約60自治体・1,400超の農業経営を抱え、バイシュ・リョブレガート農業公園は1998年に14自治体の共同体として3,473.26ヘクタールを囲った。
  • 本記事の立場は、南欧が示したのは「買わずに留める」という技法だ、というものである。所有ではなく計画と用途指定で農地を固定するこの方法は安価で速いが、水という別の希少性は解けない。だから南欧の課題は土地の次に必ず水へ移る。

はじめに

「南欧」という括りは、地図ではなく制約でできている

地中海に面した都市をひとまとめに「南欧」と呼ぶとき、私たちはたいてい風景を思い浮かべています。乾いた光、石造りの街、テラスの鉢植え。しかし都市農という主題でこの括りを使うなら、風景ではなく制約から入ったほうが正確です。南欧の都市が共有しているのは、地中海性気候という気象の型そのものよりも、そこから生じる二つの厳しさ——夏に雨が降らないことと、水の需要が観光と農業で同じ季節に重なること——のほうだからです。この二つは、都市の縁でどんな農業が成り立つかを、制度より先に決めてしまいます。

制約から入ると、もうひとつ見えてくるものがあります。南欧の都市が農地に対して取ってきた手つきの独特さです。北欧や中欧の都市農を語るときの中心はしばしば区画——一人ひとりに割り当てられた小さな菜園——ですが、南欧の都市が最も大きく賭けてきたのは、区画よりもむしろ都市の外縁に広がる農地そのものを、まとめて動かないようにする仕組みでした。それが本記事の主題である「農業公園」です。数千から数万ヘクタールに及ぶ農地を、行政が買い取ることなく、計画と用途指定によって農地のまま留める。所有ではなく利用で土地を回す、という言い方の実体はここにあります。

本記事は、この3日間の短い特集の初日にあたります。明日はイタリア、明後日はスペインを訪ねますが、その前に、二つの国に共通して効いている補助線を引いておきたい。ひとつは水——どこまでが逼迫で、どの数字を見れば渇きが見えるのか。もうひとつは所有——買わずに留めるとは具体的にどういう手続きなのか、そしてそれが何を解いて何を解かないのか。断っておくと、この特集は当初6か国7日の構成でした。公開の曜日運用を正すために3日へ圧縮しており、ポルトガル・ギリシャ・クロアチア・スロベニアの回は後日の枠に送っています。触れられない国があることは、先に書いておきます。

前提

土地より先に、水が足りなくなる

都市農の議論はふつう土地から始まります。空き地はあるか、地代は払えるか、いつまで借りられるか。しかし南欧では、その前に水の問いが立ちます。欧州環境機関(EEA)の水不足指標によれば、2023年に少なくとも年の四半期のあいだ水不足の条件下に置かれたのは、EU 国土の28%と人口の32%でした。そして同機関は、南欧では水不足が通年で常態化しており、人口の約30%が恒常的な水ストレス下、最大で70%が夏季の季節的ストレス下にあるとしています。都市の縁に農地を確保できたとしても、7月と8月に灌漑の水が回らなければ、その農地は帳簿の上にしか存在しません。

ここで注意がいります。「南欧は乾いている」を国別の平均値で語ると、しばしば話が逆になるからです。水の逼迫を測る代表的な指標である水利用指数プラス(WEI+)は、再生可能な淡水資源に対する消費量の割合を流域単位・四半期単位で見るもので、20%を超えると逼迫、40%以上で深刻とされます。ところが Eurostat が示す2022年の国レベルの値は、ギリシャ13.8%、ポルトガル10.1%、スペイン8.8%——いずれも20%を下回ります。EU 全体では5.8%。突出しているのはキプロスの71.0%とマルタの34.1%で、これは島嶼の特殊事情です。国の平均は、流域と季節に宿る渇きをきれいにならしてしまいます。

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