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休眠預金は、コミュニティ農園をどう変えたか——日本のインパクト評価の現在地

10年放置された銀行口座のお金が、こども食堂と地方創生の現場に、評価という条件つきで届く

2026-08-30 · 21

特集 · 「社会にいい」は、どう測るのか——アーバンファームとソーシャルインパクト5 / 7

休眠預金がJANPIA・資金分配団体・実行団体という三層を経てコミュニティ食支援団体に届く流れの図解

ここまで英国のソーシャル・インパクト・ボンドと米国のプログラム関連投資を見てきました。今日は日本に絞ります。日本にも、同じ「成果を測ることが条件」という発想に基づく資金の流れが、既に実在します。休眠預金等活用制度です。10年以上取引のない銀行口座の預金——いわゆる休眠預金——を原資に、指定活用団体JANPIAを頂点とする三層の仕組みを通じて、コミュニティ団体・NPOに資金が流れます。2019年度の開始から2026年4月末までの累計助成額は約401億円に達し、長野県のこども食堂ネットワークやフードバンク事業にも資金が届いています。ただし、この資金を得ようとすれば、社会的インパクト評価の実施は避けて通れません。今日は、この制度が実際にどこまで届き、評価がどんな形で課され、そして地方創生交付金のKPIが現場の事業設計をどう縛っているのかを見ます。

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3分でわかる本記事の内容

  • 休眠預金等活用法は2016年12月に成立、2018年1月に施行された。指定活用団体JANPIAは2019年1月に指定され、2019年度から資金分配団体への助成を開始。2026年4月末までの累計助成額は約401億円に達する。
  • 資金は長野県のこども食堂ネットワーク(約180拠点、年間約6万人)やフードバンク事業にも届いている。ただし今回の調査では、「コミュニティガーデン」を明確な対象に掲げたJANPIA案件は確認できなかった。
  • 資金を得るには評価が条件になる。JANPIAは2019年7月に評価指針を定め、2024年5月に改訂した。事前・中間・事後・追跡という4段階の評価サイクルを、資金分配団体から実行団体まで全階層に課している。
  • 日本の評価の浸透度は、まだ欧米に届いていない。内閣府の2016年報告書によれば、成果評価を行っていた日本の団体は2014年時点で32.8%、英国の75.5%(2012年)を大きく下回っていた。
  • 地方創生推進交付金は、KPIの設定と検証を法令上の要件としている。内閣府自身のガイドラインは「KPIの達成状況が、次年度以降の交付金の交付に反映される」「実績不十分な場合、事業が予定通り認められない可能性がある」と明記している。
  • 本記事の立場は、日本の評価制度への批判ではない。内閣府自身が2016年の報告書で「評価人材の不足」「評価コストの負担」を制度の課題として認めており、この制度的な自己認識を踏まえたうえで現在地を読むべきだというのが結論である。

はじめに

英米圏の契約とは別に、日本には日本の「成果連動」がすでにある

前回見た英国のソーシャル・インパクト・ボンドと米国のプログラム関連投資は、いずれも民間の投資家が主役でした。日本の休眠預金等活用制度は、資金の性質がまったく異なります。原資は投資家の出資ではなく、10年以上取引のない銀行口座に残る預金——2016年の法律で公益活動の原資として活用されることになった「休眠預金」です。銀行が公表・確認手続きを経てもなお引き出されない預金が、預金保険機構を経て国庫に帰属し、そこから指定活用団体を通じて公益活動に配られます。投資家へのリターンという概念はなく、その代わりに、資金の出所が「本来は預金者に帰属すべきお金」であることが、使途への説明責任をより強く求める理由になっています。

この制度が本特集にとって重要なのは、「成果を測ることが資金の条件になる」という、これまで見てきた英米圏の発想と同じ論理を、まったく別の制度設計のなかで実現しているからです。今日は、この制度が実際にどれだけの規模で、どんな団体に届いているのか、そして評価の要求が現場にどんな形で及んでいるのかを見ます。

仕組み

JANPIAを頂点に、資金分配団体、実行団体という三層で資金が流れる

休眠預金等活用法(平成28年法律第101号)は2016年12月9日に公布され、2018年1月に全面施行されました。一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)は2018年7月に設立され、2019年1月11日、法律にもとづく指定活用団体として内閣総理大臣から指定を受けました。JANPIAは自ら現場を運営するのではなく、まず「資金分配団体」に助成し、資金分配団体がさらに現場の「実行団体」に助成するという二段階の仕組みで資金を流します。2026年4月末時点で、資金分配団体は延べ373団体・254件の助成事業(1件平均約1億5,400万円)、実行団体は1,550団体(1団体平均約1,624万円)に達しています。2023年6月の法改正(同年12月施行)以降は、非資金型の伴走支援を行う「活動支援団体」と、出資というリスクの高い資金提供の枠組みも加わりました。

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