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市政が5回替わっても畑は残った——エクアドル、キトのAGRUPAR

所管が市の部局ではなく私法上の非営利法人にあり、研修と種苗から売り場までを同じ組織が持っている

2026-09-14 · 19

特集 · 危機が先、法律はあと——南米6か国のアーバンファーム6 / 7

山を背にした高地の街で、苗トレーと野菜かごの市が開かれ、植物の図だけのホワイトボードがある壁画調のイラスト。下の黒い帯に「20年続いた参加型」

キト市の都市農業プログラムAGRUPARは2002年に始まり、2026年で24年目に入りました。2022年に出た論文は2000年以降に政治的な立場の異なる5つの市政が入れ替わったあいだもプログラムが基本の価値と原則を保ったまま続いた、と書いています。理由の一つは所管の置き場所です。AGRUPARが入っているのは市の部局ではなく、2003年3月28日の市議会決議C 0193号で設立された経済振興公社CONQUITOです。定款第1条はこれを「独自の財産を持ち、存続期間を定めない私法上の非営利法人」と規定しています。プログラムはここで研修と種苗と技術支援を配り、収穫物の売り場であるビオフェリアまで自前で開いてきました。制度が追いついたのはずっとあとです。食料安全保障が市の土地利用・開発計画に入ったのは2021年9月13日、都市菜園の条例が可決されたのは2025年4月29日でした。

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3分でわかる本記事の内容

  • AGRUPARが市政の交代を越えて続いた理由の一つは所管の置き場所である。プログラムは市の部局ではなく、2003年3月28日の決議C 0193号で設立された私法上の非営利法人CONQUITOの中にある。
  • 2022年の論文によれば2000年以降に政治的立場の異なる5つの市政が入れ替わった。それでもAGRUPARは基本の価値と原則を保ったまま24年目に入っている。
  • 配っているのは土地ではなく一続きの支援だ。研修と技術支援、2,051の生産設備、48の共同貯蓄組合、そして売り場のビオフェリアまでを同じ組織が持っている。
  • 参加者のおよそ84%は女性の世帯主である。毎年およそ4,500人が耕し、1菜園あたりの追加収入は月およそ175米ドルとされる。
  • 制度は実践のあとに来た。市の土地利用・開発計画(PUGS)が承認されたのは2021年9月13日の臨時市議会、都市菜園の条例が可決されたのは2025年4月29日である。
  • 本記事の立場は所管の置き場所と一続きの運営が継続を支えたというものだ。ただし24年たっても、畑の借地期間と地代の上限だけは手に入っていない。

はじめに

AGRUPARが市政の交代を越えて続いたのは市役所の外に置かれているからだ

キト市が都市の菜園に手をつけたのは2000年です。ラテンアメリカ・カリブ地域の都市管理プログラム(PGU-ALC)の支援を受けて市が菜園を始め、2002年にAGRUPARという名前の正式なプログラムになりました。最初の3年間の担当は市の持続可能人間開発局です。2005年に所管が経済振興公社CONQUITOへ移り、以後20年以上そこにあります。2022年に『Frontiers in Sustainable Food Systems』誌に載った当事者たちの論文は2000年以降に政治的な視点も優先順位も異なる5つの市政が入れ替わったあいだ、プログラムが基本の価値と原則を保ち続けたと書いています。20年以上続いたという事実そのものより、この一文のほうが具体的です。替わったのは市政のほうで、プログラムは替わらなかった。

CONQUITOが何であるかを先に押さえておきます。正式名称は経済振興公社CONQUITO(Corporación de Promoción Económica CONQUITO)。キト市議会の2003年3月28日付決議C 0193号がその設立を承認し、定款は2003年10月27日の省令03 528号で認可されました。定款は2015年10月28日の省令15 208号で改正されています。この法人の性格は定款第1条に書かれています。私法上の非営利法人であり、独自の財産を持ち、存続期間を定めず、社員の数に上限を置かない。市の一部局ではなく、市が主要な社員として参加する別の法人です。この違いが予算年度をまたぐときに効きます。

昨日までの5日で見てきた南米の各都市と比べると、キトの珍しさはここにあります。ロサリオもベロオリゾンテもボゴタも、担当は市役所の中の局でした。キトは同じ仕事を法人の中に置き、その法人に研修も種苗も売り場も持たせています。特集の初日はこの配置を一段落で触れただけでした。今日はその一段落を開いて、定款の条文と数字で確かめます。規模の見当をつけておくと、世界未来評議会の記録では累計の菜園3,679か所のうち60%が家庭の菜園、26%が組織された集団の菜園で、直接の受益者7万3,936人に対して間接の受益者は11万3,774人とされています。順序としては、まず何を配っているかを見て、次に誰が耕しているかを見て、そのあとで制度が20年遅れで追いついてきた経緯を追います。

中身

AGRUPARが渡しているのは土地ではなく、研修から売り場までの一続きの支援である

世界未来評議会(World Future Council)がまとめた記録は、このプログラムの中身を項目ごとの数字で示しています。技術研修は16,172回、受講した人は21,746人でその84%が女性。技術支援の件数は81,886件。整備された生産設備は2,051件。作られた共同貯蓄組合(bancos comunales)は48。生まれた事業は177で、うち104が正規に登記されました。2016年以降に生まれた雇用は337。耕している人の数は1万2,000人とされます。プログラムを続けるという言い方は抽象的ですが、続いている中身はこの種の反復です。毎年の講座と毎年の設備と毎年の売り場が積み重なった結果がこの数字になります。逆に言えば、どれか一つが欠けても数字は伸びません。設備だけ配って講座をやめれば設備は遊び、講座だけ続けて売り場を持たなければ収穫は家の中で止まります。

終点にあるのがビオフェリア(bioferia)です。生産者が直接売る有機の市で、同じ記録によれば17か所が設けられ、2007年以降の開催回数は6,663回、扱う食品は105種、生産のおよそ25%がここで売られて年間およそ35万米ドルになります。2022年の論文の数え方では市は15か所、週あたりの開催が19回、年間およそ850回です。数え方で幅は出ますが、講習を受けた人が育てたものを売る場所まで同じ組織が用意しているという構図は変わりません。研修だけを配って現場を市場に放り出す設計ではないのです。生産の場そのものは大きくありません。2020年の調査では市内の生産面積は合わせておよそ60ヘクタール、1か所あたりの広さは最大でも7,500平方メートルでした。小さな区画を数千に分けて支えるという形がこの規模の事務局を必要にしています。

参考・出典

制度① 2003年

AGRUPARを抱えているのは市の部局ではなく、独自の財産を持つ非営利法人である

定款の条文を読みます。第1条は「キト首都特別区に住所を置き、私法上の非営利法人として、独自の財産を有し、存続期間を定めず、社員の数に上限を設けない」と定めています。設立の根拠は民法第1編第30編と非営利法人規則。つまりこの法人はエクアドルの一般の非営利法人法制のもとにあり、市の組織規程のもとにはありません。市長が替われば部局は再編できますが、別法人の解散はそれとは別の手続きです。財産が法人に帰属している点も同じ効き方をします。AGRUPARが使う設備も車両も市の備品ではなく法人の資産です。第2条によれば法人の目的は公共・民間・大学・市民社会の各主体を突き合わせ、起業と地域の生産と生産性・競争力を促すことです。菜園のプログラムがこの目的の下に収まるのは、収入と雇用を作る事業として位置づけられているからです。

統治の形も定款に書かれています。第28条によれば理事会は7名で構成され、うち2名は創設社員のうちの常任です。1人はキト首都特別区の市長またはその代理人で、代理人は市の経済開発長官でなければならないと指定されています。もう1人はピチンチャ小産業会議所の会長またはその代理人です。残る5名は非常任で、他の創設社員から1名、活動社員から3名、名誉社員から1名を総会が選びます。非常任理事の任期は2年で再任できます。行政と民間の代表が同じ理事会に常任の席を持ち、残りは2年ごとに入れ替わる。市政の任期とは別の時計が回っている構造です。最高の議決機関は全社員で構成する総会で、理事の選任も定款の改正も解散もここが決めます。総会の書記は事務局長が務めます。

ここで慎重になるべき点があります。第35条は理事会と総会の議長を市長またはその常任代理人が務めると定めています。だから「政治から独立した機関だから続いた」とは言えません。市長は議長席にいます。第30条によれば事務局長を任命するのは理事会ですが、候補は議長が提示する3名の名簿から選ばれます。日々の執行を担う人事の入口が議長の側にあるということです。この設計が与えているのは政治からの独立ではなく、法人格と財産と社員構成が市政の交代のあとも残るという連続性です。実際に2002年から2004年まで、AGRUPARは市の持続可能人間開発局という部局の中にありました。部局から法人へ移した2005年の判断が正しかったかどうかを直接に測る方法はありません。ただ、移したあとの20年に何が積み上がったかは前節の数字のとおりです。

設計

研修だけで終わらせず、種苗・設備・信用・売り場まで同じ組織が持った

配られるものを順に並べると、このプログラムの設計思想が見えます。まず種と苗。次に技術支援で、これは畑に人が来て土や水や病害虫を見る仕事です。そして生産設備——温室、貯水槽、養液栽培の台、堆肥の設備といった、個人では買いにくい物です。2,051件という数字はこの投資の積み上がりを指しています。栽培は再利用の資材を使って低コストで組むことが推奨されており、木箱や容器を使う作り方は費用の面から選ばれた方法でもあります。土地を配らない代わりに、手持ちの土地で始められる条件を揃えるという発想です。支援の対象は増え続けています。2019年に技術研修と技術的な追跡の対象になっていた菜園は1,800か所を超え、2022年の論文の時点では2,200か所を超えました。年に200か所ずつ増やすことが目標に置かれています。

次が信用です。48の共同貯蓄組合はメンバーが少額を持ち寄って互いに貸す仕組みで、銀行の与信が届かない層に運転資金を回します。ラテンアメリカの都市農業プログラムで金融まで踏み込む例は多くありません。2019年に発表されたAGRUPAR担当者自身の報告も、技術支援・能力開発・インフラ・起業管理・マイクロクレジット・アグロエコロジーの応用研究という6つを並べています。畑の話と金融の話を同じ窓口で扱うのは所管が経済振興の法人だからできることでもあります。福祉部局に置いていれば、収入を作るという目標はここまで前に出なかったはずです。組織の中での置き場所も具体的です。CONQUITOの2023年の説明責任報告書はこの仕事を「キト首都特別区における参加型都市農業」という名の事業として立て、担当を都市農業ユニットと明記しています。名前のついた事業と名前のついた担当部署がある状態が20年以上続いてきました。

そして出口です。2022年の論文によれば、生産の53%が生産者と家族の自家消費に回り、47%が売られます。年間の生産は1,200トンを超え、週におよそ11トンが市内で最も脆弱な地区へ向かうとされます。加工は農家の事業選択の15%を占め、市で売られる品目の82種が加工品です。1菜園あたりの追加収入は月およそ175米ドル。家族の菜園でも個人の菜園でも共同の菜園でも同じ計算です。同じ論文は別の箇所で年135万キログラムのうち76万9,000キログラムが生産者と家族の消費、58万1,000キログラムが販売と書いており、比率は57対43になります。加工品の内訳は食肉が26.47%、保存食が21.76%、スナックが20.00%、焼き菓子が17.06%、乳製品が14.71%。自家消費と販売の比率をどこで測るかで数字は動きますが、半分近くが売られているという事実は、この畑が趣味の区画ではないことを示しています。

参加者

耕しているのは主に女性の世帯主で、対象は保育所から社会復帰施設まで広い

CONQUITOの公式ページは参加者を「毎年4,500人を超える農業者」とし、その84%を女性の世帯主としています。菜園が置かれる場所も列挙されています。保育所、学校、高齢者の団体、障害のある人の施設、依存症からの回復施設、社会復帰施設、子どもの保護施設、女性センター、移民向けの窓口、保健施設。家庭の裏庭だけを想定した制度ではありません。学校や施設の敷地という、市が働きかけやすい土地に菜園を置いていく作り方です。土地の所有関係を変えずに使える場所から始める、という順序がここにも出ています。売る側にも常設の窓口があります。同じページは「健康な食の固定販売所」を挙げ、およそ105品目の有機農産物を扱うと書いています。週に一度の市だけでなく、いつでも買える場所を市内に持つということです。

参加した人に何が起きたかについては2016年にケイト・オヴィアットが行った調査の数字が2022年の論文に引かれています。都市菜園に参加する女性のうち88%が自分の収入を自分で管理していると答え、99%が菜園によって家族の栄養が改善したと答え、91%が果物と野菜を以前より多く食べるようになったと答え、83%が全体としての健康が改善したと答えました。いずれも本人の申告で、比較対象を置いた測定ではありません。それでも、収入を自分で管理しているという項目が最初に来ていることはこのプログラムが女性の世帯主を主な対象にしてきたことと噛み合っています。畑が渡しているのは野菜だけではありません。売って得た現金を自分の判断で使える立場を渡している、という読み方がこの数字からは出てきます。

研修の規模も押さえておきます。CONQUITOが公開した2023年の説明責任報告書は参加型都市農業の事業目標を「2023年までに生産技術と食料安全保障について2万人を研修する」と書き、月ごとの受講者数を並べています。最も少ない8月が941人、最も多い11月が5,080人。本記事がこの12か月分を足すと20,808人になります。年に2万人という規模は市の一部局が片手間に回せる量ではありません。所管を法人に置くという判断はこの量の講座を毎年組み続ける事務局を持つという判断でもありました。報告書は講座を通常課程・短期課程・補完課程の三つに分けており、人数の大半は補完課程が担っています。同じ2023年に持続可能な食生活の普及を目的とした催しが23回開かれたことも記録されています。

制度② 2017–2025年

20年分の実践があとから都市計画と条例に書き込まれていった

制度化はまず食の政策の側から進みました。2017年にキト農食料協定(Pacto Agroalimentario de Quito、PAQ)が作られ、脆弱な層に健康な食を届ける持続可能で強靭な農食料システムを作るという合意が関係者のあいだで結ばれます。2019年4月にはキト農食料戦略が公表されました。都市農業は気候行動計画2015–2025とその2050年までの更新、レジリエンス戦略、そしてこの農食料戦略に書き込まれています。戦略には「食料行動計画」が含まれ、変化の道筋をたどるという手法で作られています。ここまでは計画文書の世界の話です。予算と土地に直接効く文書はまだ出てきていません。なお、この農食料協定を作る動きを押したのはAGRUPAR自身でした。市の食料政策の主要な担い手の一つがプログラムの側だったという順序も、実践が先だったことの表れです。

土地の側の文書は2021年に来ました。9月13日の臨時市議会第173回で土地利用管理計画(PUGS)が承認され、有効期間は12年とされます。2022年3月に施行されました。2022年の論文はこの計画について、市の行動を導き予算の配分を可能にする文書として、食料安全保障を包摂的で生態的な都市発展の土台に据え、AGRUPARの運用を拡大するための戦略的指針を含めた、と説明しています。予算の配分を可能にする、という一句が重要です。計画に書かれて初めて、都市農業は毎年の予算の中で位置を持てるようになります。同じ論文は都市農業のプログラムを先に立ち上げた都市のほうがレジリエンスと持続可能な都市発展に資する食料政策を実施しやすい立場にあるという仮説を立てています。実践が先にあったから計画に書けた、という順序をこの仮説は言い直したものです。

そして2025年4月29日、キトの首都圏議会が都市菜園を促す条例を可決します。市議のウィルソン・メリーノがそれまでばらばらに出ていた4本の提案を1本にまとめ、市議のアナリア・レデスマとの共同提案として成立させました。条例が置く柱は三つです。市有地のうち使われていない場所に菜園を開くこと、新しく建てる住宅開発に都市菜園のための空間を設けさせること、アグロエコロジーと有機の栽培方法を推奨すること。ConQuitoが種と講習を住民に提供し、収穫物はゾーン行政区とConQuitoが開くビオフェリアで売られます。条例は既存の市場に不利益を与えないことを明示しました。市の説明では現在の都市菜園はおよそ2,000か所で、2030年までにその倍を目標としています。

市民の側

市のプログラムの外にも畑はある——ウエルトマニアスと、キト以外の都市

ウエルトマニアス(Huertomanías)はキト北部の地域精神保健サービスで2014年に開かれた集まりから生まれました。参加したのは利用者と家族と専門職です。翌2015年に活動を始め、その年の暮れにキト近郊のナヨンに農地を得ました。統合失調症など重度の精神疾患のある人が組合員として働き、アグロエコロジーで作った有機の食品を加工して売ります。公式サイトは自らを「重度の精神的健康の問題を抱える人が力を発揮できる事業であり場所」と説明し、地域精神保健・有機農業・生活技能の講座も開いています。エクアドルでは精神疾患のある人の就労機会が政策上ほとんど考慮されてこなかった背景があります。公式サイトは連携先としてエンバー・メンタルヘルスとサンフランシスコ・デ・キト大学を挙げています。CONQUITOが挙げる対象施設には依存症からの回復施設も社会復帰施設も並びますが、重度の精神疾患のある人の仕事を正面から扱う実践は市のプログラムの外から出てきました。

この取り組みには外部からの評価があります。2024年12月に『Qualitative Health Research』誌の第34巻第14号に載ったサモラ=モンカヨらの論文です。参加型の手法をとり、12人が認知マッピング、フォトボイス、面接といった作業に加わりました。菜園がもたらす影響として整理されたのは経済的・個人的な自律、対人関係と環境との関係、精神的健康、家族関係の4領域で、これに家族の支えと公共政策・医療サービスという外部要因が回復を左右すると位置づけられています。ただしこれは12人の質的研究です。症状の変化や就労の継続率のような数量的な効果は測っていません。菜園が回復に効くという命題の証明ではなく、何が効いていると当事者が語るかの記述です。

エクアドルの都市農業はキトだけではありません。人口最大の都市グアヤキルでは市の地域連携局がコミュニティ菜園を57か所整備しました。うち50か所が学校、7か所が地域と家庭です。これに加えて参加型の活動を30回、市営のフェアを17回、市民センターでの講座を2回、夏休みの子ども向け菜園を4回、地域イベントを10回開き、これまでに67,020人が裨益したと市は発表しています。市は種と養分と堆肥を無償で渡し、住民が植えるという形です。キトのように法人に所管を置いてはおらず、市の部局が直接運営しています。24年という時間はまだありませんが、学校を主な足場にするという選び方はキトの菜園の置き場所とよく似ています。

限界

24年たっても、畑の借地期間と地代の上限だけは手に入っていない

AGRUPARを担当してきた本人が課題を書き残しています。2019年に発表された報告は、このプログラムが行政の交代、予算の削減、そして制限的な土地利用法制という重大な課題に直面していると述べました。所管を法人に置いても予算の出どころは市です。法人格が守るのは組織の存続であって、毎年の予算額ではありません。2018年に世界未来評議会がFAOとIFOAMと共に贈るFuture Policy Awardの銀賞を受けた同じ時期に、担当者自身がこの三つを課題として並べていたことは記録しておく価値があります。国際的な賞は継続の後ろ盾にはなりますが、予算行を守る力は持ちません。行政の交代が課題として挙がっている点も見落とせません。5つの市政を越えて続いたことと、交代のたびに揺れることは矛盾しないのです。

三つのうち最も重いのが土地です。当サイトの収録によれば、AGRUPARの菜園は家庭・コミュニティ・学校・公共機関の敷地に置かれ、参加者は市の公共プログラムの枠組みのなかでそこを使います。使用の許可であって借地権ではありません。借りられる期間の下限も、地代の上限も、条文に書かれていません。先週まで扱ったドイツでは連邦小庭園法第5条が地代を営利園芸の地域相場の4倍までに縛り、第3条にあたる解約の保護と組み合わせて畑を都市の地価から切り離しました。キトの24年はその種の条文を一本も持たないまま積み上がっています。プログラムが止まれば菜園の根拠も止まる、という一点はいまも変わっていません。

2025年の条例はこの欠落に初めて手をつけました。市有の未利用地を菜園に開き、新しい住宅開発に菜園のための空間を求める。都市が育つ過程であらかじめ耕す場所を確保させる規定は世界的にも多くありません。ただし義務がかかるのは新しく建てる住宅開発です。すでに耕されている約2,000か所の足元がこれで固くなるわけではありません。2030年に4,000か所という目標も、増やす目標であって守る目標ではないのです。しかも数字は楽な水準ではありません。2025年から2030年までの5年で2,000か所を足すには年に約400か所の新設が要ります。2022年の論文が挙げていた目標は年200か所でしたから、条例は倍の速さを求めていることになります。順序が逆だったこの街で、いま欠けているのは新しい畑を作る仕組みではなく、できた畑を動かせなくする条文のほうです。

振り返り

今日辿ったのは、所管の置き場所と一続きの運営が24年を支えたという道筋である

道筋をもう一度並べ直します。出発点は2000年で、ラテンアメリカ・カリブ地域の都市管理プログラムの支援のもとキト市が菜園を始め、2002年にAGRUPARという正式なプログラムになりました。2002年から2004年までの担当は市の持続可能人間開発局、2005年以降は経済振興公社CONQUITOです。次に定款を読み、法人の性格と理事会の構成と議長の規定を確かめました。そのうえで何が配られているかを研修・技術支援・生産設備・共同貯蓄組合・ビオフェリアの順に見て、誰が耕しているかを女性の世帯主84%という比率と施設の一覧で確かめました。最後に制度が追いついた経緯を2017年の農食料協定、2021年9月13日のPUGS、2025年4月29日の条例という順で追い、いま何が欠けているかを土地の話として置きました。

重要な論点を三つだけ言い直します。第一に、所管の置き場所です。AGRUPARが入っているのは2003年3月28日の決議C 0193号で設立されたCONQUITOで、定款第1条はこれを独自の財産を持ち存続期間を定めない私法上の非営利法人と定めています。第二に、一続きの運営です。技術研修16,172回、受講者21,746人、技術支援81,886件、生産設備2,051件、共同貯蓄組合48、そしてビオフェリア17か所と2007年以降6,663回の開催。研修から売り場までを同じ組織が持っています。第三に、順序です。実践は2002年、都市計画への書き込みは2021年9月13日、条例は2025年4月29日。制度は19年から23年遅れて来ました。

留保と反論も書いておきます。第一に、菜園の数が資料でそろいません。世界未来評議会の記録は累計3,679か所、2022年の論文は支援中の菜園を2,200か所超、2025年の市の説明はおよそ2,000か所、当サイトの収録は5,200か所超としています。累計か現在かで数え方が違うため、本記事はどれか一つに寄せていません。第二に、2025年の条例が掲げる地区の名称に揺れがあります。市の公式ニュースが「Vecindarios Alimentarios Saludables」と書くのに対し、当サイトの収録は「Barrios de Alimentación Saludable」です。本記事は市の表記に従いました。第三に、最も大きな反論はこうです。「法人に置いたから続いた」という説明は反証しにくい。市長は定款第35条により理事会と総会の議長を務め、事務局長の候補名簿も議長が出します。続いた理由が所管の設計なのか人の継続なのかを本記事は切り分けられていません。2021年の計画についても、その後の改定で食料安全保障の規定がどう扱われたかを確認できていません。

特集のなかでこの回が担うのは自治体のプログラムが20年以上続くとき現場に何が積み上がるかを一つの街で確かめることです。Day2のロサリオは危機が制度を作る場面を、Day3のブラジルは自治体の31年に国が追いつく場面を見せました。キトが見せているのはその中間で、国の法律を持たないまま自治体の側だけで24年を回した街の姿です。明日のDay7はチリで、都市菜園の法案がまだ成立していない国を扱います。今日のキトが「法律が無いままでもここまでできる」という側の実例だとすれば、チリは「法律が無いままだと何が決まらないか」を見る回になります。両方を並べたとき、条文が最後に引き受ける仕事が何なのかが見えてくるはずです。それは畑を作ることではなく、できた畑を動かせなくすることです。

この記事の要点

  • AGRUPARを抱えているのは市の部局ではなく法人だ。CONQUITOは2003年3月28日の決議C 0193号で設立された私法上の非営利法人で、独自の財産を持ち存続期間を定めない。
  • ただし政治から独立しているわけではない。定款第35条により理事会と総会の議長は市長またはその常任代理人が務め、理事7名のうち2名は常任の席である。
  • 続いた中身は毎年の反復である。技術研修16,172回、受講者21,746人、技術支援81,886件、生産設備2,051件、共同貯蓄組合48という積み上がりがその実体だ。
  • 研修と売り場を同じ組織が持っている。ビオフェリアは17か所設けられ、2007年以降の開催は6,663回、生産のおよそ25%がここで売られて年約35万米ドルになる。
  • 耕しているのは主に女性の世帯主だ。CONQUITOは毎年4,500人を超える農業者の84%を女性の世帯主とし、1菜園あたりの追加収入を月およそ175米ドルとしている。
  • 制度は19年から23年遅れて来た。食料安全保障が土地利用管理計画に入ったのは2021年9月13日、都市菜園の条例が可決されたのは2025年4月29日である。
  • 24年たっても土地の保証は無い。菜園は使用許可で置かれており、借地期間の下限も地代の上限も条文に無く、2025年条例の義務がかかるのは新規の住宅開発だけである。

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