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インドのアーバンファーム事情——制度で読み解く、巨大都市の食の自給

州園芸局の補助金から湿地の保全法、スマートシティ事業まで。都市農を「仕組み」として読むインド・レポート

2026-06-23 · 22

インドの都市農を理解する近道は、まず「制度」を見ることです。屋上で野菜を育てる家庭も、湿地で下水を魚に変える漁民も、その背後には州園芸局の補助金、市政府の条例、保全のための法律といった仕組みが、見えにくい形で働いています。本レポートは、ベンガルールの屋上菜園からコルカタの湿地養魚までを、個々の善意やブームとしてではなく、制度・政策・自治体プログラムという軸で読み解きます。連邦と州が農業の権限を分け合う独特の統治構造、園芸振興のための国家ミッション、そしてスマートシティ事業のなかに都市農がどう位置づけられているのか。なぜインドの都市農は、国家の一枚岩の政策ではなく、州ごと・市ごとのモザイクとして育ったのか。仕組みを手がかりに、その輪郭をたどります。当データベースにはインドの事例が約8件収録されており、本文で名前を挙げる具体例はその一部です。

概況

連邦と州が分け合う、都市農のガバナンス

インドの都市農を語るうえで、まず押さえておきたいのは、この国では「農業」が憲法上、原則として州の管轄事項だという事実です。連邦(中央政府)は全国的な枠組みや資金の流れをつくり、実際の制度設計と運用は各州が担う——この権限の分有が、都市農の風景を決定的に形づくっています。ある州が屋上菜園に補助金を出す一方、隣の州では何の制度もない、ということが普通に起こる。インドの都市農は、国家の一枚岩の政策ではなく、州ごと・市ごとのモザイクとして理解するのが正確です。

もう一つの出発点は、都市の圧倒的な規模と速度です。国連の推計では、インドの都市人口はすでに4億人を大きく超え、2050年代にかけてさらに数億人が都市へ流入するとされます。住宅・水・廃棄物・食料の供給が同時に逼迫するなか、屋上や空き地で食べ物を育てる営みは、単なる趣味を越えて、食料安全保障・栄養・廃棄物循環・気候適応といった都市政策の課題と直接つながっています。だからこそインドでは、都市農がしばしば「園芸振興」「都市再生」「廃棄物管理」といった別々の政策の窓口から、断片的に支援されてきたのです。

結果として、インドの都市農には明確な「中心」がありません。先進的な制度をもつテランガナ州ハイデラバードのような都市がある一方で、市民団体や篤志家が制度の空白を埋めている都市も多い。本レポートは、この制度の濃淡を地図のように読み、どこで仕組みが機能し、どこで市民の自発性がそれを補っているのかを描き出します。制度の有無こそが、インドの都市農の地域差を生んでいるのです。

数字で見る入口

8つの事例が映す、制度と自発のあいだ

数字でみると、インドの都市農の独特な輪郭が浮かびます。インドは世界有数の野菜・果実生産国であり、農業全体ではGDPの2割弱、就業人口の4割以上を支えるとされます。しかし「都市の中の農」に限れば、統計はまだ整っておらず、その実態の多くは家庭の屋上菜園や非公式な空き地耕作として、公式の数字の外側に存在します。逆にいえば、制度がどれだけ整っているかが、その都市の都市農の可視性を左右している——これがインドを読む鍵です。

当データベースには、インドの事例が約8件収録されています。市民団体が主導するベンガルールの「オータ・フロム・ユア・トータ」やムンバイの「アーバン・リーブス・インディア」、屋上菜園の運動を広げたチェンナイやコチの取り組み、デリーで農と教育をつなぐ「エディブル・ルーツ」、そして州政府の補助制度として制度化されたハイデラバードの都市農業スキーム、保全法に守られた東コルカタ湿地の養魚——これらは、まさに「市民の自発」と「制度の支援」のあいだのさまざまな位置を占めています。事例の全体像は当サイトの事例一覧(/cases)から探せます。

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