アーバンファームDB
← 探究コラムへ
国別レポート会員限定

韓国のアーバンファーム事情:屋上のボックスから漢江の島まで

現場から読み解く、住民が育てた都市農の十年

2026-06-23 · 14

韓国の都市農業は、壮大な計画書からではなく、屋上に置かれた一つの栽培ボックスから語り始めるのがふさわしい。ソウルが政策的に号令をかけた2012年以降、菜園は約100から1,600超へと一気に広がったが、その実体はあくまで個々の現場にある。本稿は法や数字を背骨に置きつつ、実在する八つの現場と、そこで土に触れる人々の営みを軸に韓国の都市農を読み解く。漢江に浮かぶ島の再生から、返還された米軍基地の跡地、ソウル大学の付属地、地方都市の学校菜園まで、ボトムアップの物語として描く。

概況

号令ではなく、現場から始まった

韓国における都市農業は、高密度な都市生活への対抗運動としてではなく、むしろ都市そのものを耕し直す日常の実践として根づいてきた。ソウルをはじめとする大都市は、世界でも有数の人口密度と高層住宅を抱える。その隙間――屋上、ベランダ、建物のあいだの空地、河川敷、学校の校庭――に、住民が小さな区画を持ち込んだ。行政が補助金と栽培講座で背中を押し、市民がスコップを握る。この往復のなかで、韓国の都市農は政策と生活のあいだの実践として形を得てきた。

重要なのは、これが上からの号令だけで広がったわけではない、という点である。たしかにソウル市は2012年を「都市農業元年」と位置づけ、制度を整えた。しかし実際に菜園を維持してきたのは、屋上にボックスを並べた集合住宅の住民であり、放置された島を菜園に変えようと集まった市民であり、学校で子どもと一緒に土を耕す教員たちである。本稿が事例を軸に据えるのは、この国の都市農の重心が制度よりも現場の側にあると考えるからだ。

数字で見る入口

8件の現場から見える輪郭

数字は現場の輪郭を与えてくれる。当データベースには現在、韓国の都市農の事例が約8件収録されており、その多くがソウルに集中しつつ、仁川・釜山・水原・大邱へと広がっている。設立年は2012年から2021年に分布し、すべてが現役で稼働している。屋上ボックス、コミュニティ農園、都市農業公園、学校菜園、体験農園と形態は多様だが、いずれも「住民参加型」という共通の核を持つ。事例の規模は小さく、運営は補助に支えられる――この二点が韓国の都市農の入口を象徴している。

最も雄弁な数字は、菜園の総数の推移かもしれない。ソウルでは2012年の政策本格化を境に、住民参加型の菜園が約100から1,600超へと急増したとされる。十年に満たない期間でのこの伸びは、制度の整備と市民の手が噛み合ったときに何が起きるかを示している。本稿ではこの全体像を背景に、個々の現場へと降りていく。読者は当サイトの事例一覧(/cases)から、本稿で名を挙げる現場をさらに詳しく辿ることができる。

ここまでは無料でお読みいただけます。

会員限定

この続きは会員限定です

このコラムはアーカイブ入りしたため、本編はアーバンファームクルー以上のメンバー限定です。メンバーシップが、この独立した公共データベースの毎日の収集・調査・運営を支えています。最新のコラムはどなたでも無料でお読みいただけます。

まずは無料ニュースレターで最新コラムを受け取る

毎週水曜、世界の都市農の新着事例・研究・イベントをメールでダイジェスト配信しています。登録は無料です。

いつでも1クリックで解除できます。

関連コラム

韓国のアーバンファーム事情:屋上のボックスから漢江の島まで