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評価そのものが、団体を疲弊させる——インパクト測定のコストという問題

測ることは無料ではない。そのお金と時間は、いったい誰が払っているのか

2026-08-31 · 20

特集 · 「社会にいい」は、どう測るのか——アーバンファームとソーシャルインパクト6 / 7

評価にかかる予算・人員・時間が、資金の出し手と受け手のどちらの負担になっているかを示す図解

ここまでの4日間で、SROI・ロジックモデル・RCT・4段階の評価サイクルといった「測る道具」を見てきました。今日はその道具を使うこと自体にかかるコストを直視します。評価は無料ではありません。時間がかかり、専門知識が要り、外部に委託すれば費用もかかります。米国の非営利セクター調査団体Innovation Networkが2016年に1,125団体を調べたところ、予算の5%以上を評価に充てている団体はわずか12%で、2012年の27%から半分以下に落ち込んでいました。評価専任の担当者を置く団体はさらに少なく、わずか8%。小規模団体に限れば2%まで下がります。「評価をやるべきだ」という要求は年々強まっているのに、それをこなす現場の体力は逆に細っている——このねじれが、実際に何を引き起こしているのかを、米国・英国・日本の数字から見ていきます。

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3分でわかる本記事の内容

  • 米国では評価専任の担当者を置く団体が、2012年の25%から2016年の8%へ激減した。小規模団体に限れば2%で、予算5百万ドル以上の大規模団体の20%とは10倍の開きがある。
  • 資金の出し手への報告そのものにも時間がかかる。米国の助成財団評価団体CEPの調査では、典型的な助成金1件あたり年間約8時間、助成期間全体では30時間以上を報告業務に費やしているという結果が出ている。
  • 英国のコンサルティング会社Plinthの独自試算では、英国のチャリティ団体は助成元への報告作成に年間約1,580万時間、金額換算で約2億400万ポンドの人件費を費やしていると見積もられている(この数字は業界団体の公式統計ではなく、一民間企業による推計である点に注意)。
  • 評価コストを誰が負担するかも一様ではない。米国フォード財団は2015年、10億ドル規模の「BUILD」構想で約300団体に一般運営費と組織強化資金を提供し、評価・組織基盤への支出を助成元が引き受ける道を示した。
  • 日本の非営利団体が抱える課題の1位は「人材の確保や教育」で、認証NPO法人の65.6%、認定・特例認定法人の70.6%が挙げている(内閣府2023年度実態調査)。この調査は評価負担を直接尋ねてはいないが、評価をこなす現場の余力の薄さを示す傍証になる。
  • 本記事の立場は、評価そのものをやめるべきだということではない。評価にかかるコストを可視化し、それを資金の受け手だけに負わせない設計を探ることが、次善の策として現実的だというのが本記事の結論である。

はじめに

「評価をしてください」という一文の裏には、時間と人と専門知識がある

助成金の申請要項に「事業の成果を評価してください」と一行書くのは簡単です。しかしその一行を実行するには、指標を設計し、データを集め、分析し、報告書にまとめる作業が要ります。外部の専門家に委託すれば、そこには当然費用がかかります。第5回で見た日本の休眠預金等活用制度も、JANPIA自身が「一定の業務負担」を認め、研修やICTツールの導入支援という「伴走支援」でその負担を軽減しようとしていました。この事実は重要です——制度を設計する側も、評価がタダでは成立しないことを理解しているのです。今日の記事は、この「タダではない」の中身を、具体的な時間と金額で見ていきます。

重要なのは、このコストが均等にかかるわけではないという点です。予算規模の大きな団体は、専任の評価担当者を雇う余裕があり、評価コストを事業全体の中に吸収できます。しかし都市農・コミュニティ農園のような小規模団体は、そもそも専従スタッフが数人しかいないことも珍しくありません。今日の記事で示す統計は、この非対称——評価の要求は団体規模を問わず一律に強まるが、それをこなす余力は団体規模によって大きく異なる——を、具体的な数字で裏づけます。

誰が払うか

評価のコストは、資金を受け取る側が黙って引き受けていることが多い

評価のコストを誰が負担するかという問いには、二つの答えがありえます。資金を出す助成元自身が評価費用を助成額に上乗せするか、資金を受け取る団体が既存の予算をやりくりして自前で賄うか、です。英国の非営利セクター団体NCVOは、家賃や人件費、ガバナンスと並んで、モニタリング・評価にかかる費用を「フルコスト・リカバリー(全体コストの回収)」の正当な対象として位置づけるべきだと提唱しています。裏を返せば、多くの助成の現場では、評価費用が助成額とは別枠で手当てされず、団体側の持ち出しになっているのが実情だということです。

この構造のなかで、都市農・コミュニティ農園のような小規模団体がどう振る舞うかは、想像に難くありません。専門家への委託費用を捻出できなければ、評価の質を落とすか、他の活動費を削ってでも評価に回すかの二択を迫られます。次の節では、この負担が米国でどれだけの規模で現れているかを、具体的な数字で見ます。

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