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義務化しても、なぜ堆肥はうまく集まらないのか——世界の躓いた事例

フランス・ニューヨーク・カリフォルニア・中国——四つの制度を、同じ三つのボトルネックで並べ直す

2026-08-22 · 19

特集 · コンポストの現在地——制度・経済・限界4 / 7

義務化から堆肥化までの流れが、家庭の分別・回収の受け皿・処理施設の能力という三つの段階で細くなっていく構造を示す図解

昨日の第3回では、化学肥料と埋立地の20世紀を通じて、都市がどのように堆肥を「ごみ」の側へ移していったかを追いました。その転落を制度で押し戻そうとする動きが、2020年代に世界各地で走っています。フランスは2024年1月1日、生ごみの分別を例外なく義務づけました。ニューヨーク市は2024年10月に全市で生ごみの戸別回収を始め、翌春には罰則も入れました。カリフォルニア州は2016年の法律で、2025年までに埋め立てられる有機物を2014年比75%減らすと決めています。中国は2019年の上海を皮切りに、都市住民に厳格な分別を課しました。ところが、どの制度も予定どおりには進んでいません。本記事は、この四つを「うまくいかなかった事例」として並べ、躓いた場所がどこだったのかを揃った目盛りで見ます。先に結論を書いておくと、四つとも住民のやる気で説明できる話ではありませんでした。義務が届く場所と、詰まる場所が、そもそも違っていたのです。

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3分でわかる本記事の内容

  • フランスは2024年1月1日、生ごみの分別を量の下限なしで全生産者に義務づけた。だが1年後のADEMEの集計では、分別手段にアクセスできるのは3,210万人でおよそ国民の半数、実際に分別・回収された生ごみは年およそ90万トンにとどまっている。
  • ニューヨーク市の生ごみ回収は、2024年秋の捕捉率が5%未満だった。2025年4月に罰則を始めると約10%へ倍増したが、その罰則は3週間足らずで停止され、再開したのは2026年1月1日である。
  • カリフォルニア州のSB 1383は、2020年までに埋立有機物を2014年比50%減とする目標を掲げたが、達成できないどころか基準年を約100万トン上回った。州の独立監視機関リトル・フーバー委員会は、一時停止を含む12の提言を出している。
  • 上海は2019年7月に強制分別を導入し、湿ごみは1日9,000トン超まで増えた。だが当時の処理能力は日量5,050トン程度にとどまっていたとされる。分別が進むほど焼却炉は燃料を失い、2023年5月には老港の焼却12基で延べ88日の停止が記録された。
  • 四つに共通するのは、義務が家庭に届いても詰まるのは常に下流だったことである。制度が数えているのは分別手段へのアクセスや条例の有無であって、堆肥になった量ではない。義務化は出発点を作るが、受け皿と既存設備の会計を動かさない限り、数字は動かない。

入口

義務は2024年1月1日に始まったが、容器はまだ半分の家にしか届いていない

フランスの循環経済法(通称AGEC法、2020年2月10日法)は、生ごみの発生者に分別を義務づけました。2023年6月21日のデクレ(政令2023-478号)を経て、2024年1月1日からは量の下限が撤廃され、家庭を含むすべての発生者が対象になっています。それまで義務は年間10トン超の大口事業者に限られていましたから、これは制度としては大きな跳躍です。自治体の側にも、人口5万人超の市町村は2024年1月から、それ以外は2026年末までに分別収集の手段を用意する義務が課されました。個別・共同のコンポスト容器、集合住宅の足元回収、公共空間の投入ボックス、産業用堆肥化施設、メタン発酵——手段は限定されていません。要は、住民が生ごみを混ぜずに出せる道を、どこかに作れ、という設計です。

1年が経った時点の数字が、2025年4月にADEME(環境エネルギー管理庁)から出ています。分別手段にアクセスできるフランス人は3,210万人。2022年の3倍で、ほぼ国民の2人に1人です。増加そのものは本物ですが、裏を返せば、義務化から1年が過ぎた時点で残り半分には手段が届いていません。さらに重いのが量の数字で、実際に分別・回収された生ごみは年およそ90万トン。世帯調査では56%が「生ごみを分別している」と答え、37%が堆肥化していると答える一方、自治体の分別収集を使っているのは12%です。義務は全員に及んでいるのに、システムを通って堆肥やメタンになった量は、まだ発生量のごく一部にとどまっている——これが「躓き」の最初の形です。

枠組み

義務が届く場所と、システムが詰まる場所は同じではない

以下では四つの制度を、同じ三つのボトルネックで解剖します。第一は家庭の手元です。分別する意思があっても、置き場所・臭い・手間・容器の有無が壁になる。第二は受け皿です。分けられた生ごみを運び、受け入れ、堆肥かバイオガスにする施設と収集網が、必要な量に対して足りているか。第三は既存設備の会計です。焼却炉や埋立地は、投入量を前提に建てられ、借入金と処理料金で回っています。生ごみが抜ければ、その経済が崩れる。制度がどれだけ強い言葉で書かれていても、この三つのどこかが詰まっていれば、堆肥は増えません。

この三つで見ると、四つの事例は驚くほどきれいに分かれます。フランスが詰まっているのは主に第一と第二、ニューヨークは第一、カリフォルニアは第二、中国は第二と第三です。そして重要なのは、どの制度もこの区別を自分では測っていないことです。フランスが誇らしく発表する3,210万人はアクセスの人数であり、カリフォルニアが自治体に求めるのは条例と収集サービスの整備であり、中国が公表するのは分別率です。堆肥になった量、土に還った量を主指標に置いている制度は、この四つにはありません。測っていないものは改善されない——本記事の背骨はこの一文です。

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