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日本の生ごみは、なぜ分別されないのか——食品リサイクル法20年の実績

事業者の再生利用等実施率は91%。それでも家庭の生ごみの8割は焼却炉へ行く。優等生の数字と、対象外にされた台所のあいだにあるもの

2026-08-23 · 19

特集 · コンポストの現在地——制度・経済・限界5 / 7

食品リサイクル法が対象とする事業者側の流れと、対象外の家庭系生ごみが焼却へ向かう流れを分けて示す図解

昨日の第4回は、義務化しても堆肥がうまく集まらない国々の話でした。汚染率、住民の手間、回収の設計——制度を書いただけでは物質は動かない、という現場の教訓です。では日本はどうか。日本には、義務化に近い仕組みが四半世紀前からあります。2000年に成立し、2001年に施行された食品リサイクル法です。そして、その数字は驚くほど良い。農林水産省の推計によれば、令和6年度の食品産業全体の再生利用等実施率は91%、食品製造業に限れば98%に達しています。世界の躓きを並べたあとでこの数字を見ると、日本はうまくやっているように見えます。ところが同じ年、環境省の統計では、日本の一般廃棄物の直接焼却率は8割で、市町村のごみ堆肥化施設が受け入れた量はごみ総処理量の0.5%にも届きません。同じ国の、同じ生ごみの話です。本記事は、この二つの数字がなぜ両立するのかを、法律の射程と、再生利用の中身と、自治体の施設台帳から追います。結論を先に書けば、日本の食品リサイクルは成功しているのではなく、成功が定義された範囲の内側だけを測っています。

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3分でわかる本記事の内容

  • 農林水産省の推計では、令和6年度の食品産業全体の再生利用等実施率は91%。業種別では食品製造業98%、食品小売業65%、食品卸売業63%、外食産業35%と、川下ほど低い階段になっている。
  • 再生利用の中身はコンポストではない。令和6年度の用途別内訳は飼料が8,017千トン・76%で最大、肥料は1,516千トン・14%、メタンは534千トン・5%。日本の食品リサイクルは実質的にエコフィード政策である。
  • 家庭は法律の対象外。食品リサイクル法が義務を課すのは食品関連事業者で、年間発生量100トン以上の事業者に定期報告を求める仕組み。台所の生ごみは市町村の一般廃棄物として別の制度に置かれている。
  • そちら側の設備は薄い。令和5年度の市町村のごみ堆肥化施設は74施設・処理能力1,230トン/日で、焼却施設1,004施設・174,598トン/日の1%に満たない。直接焼却率は80.3%である。
  • 格差は自治体単位で開く。令和5年度のリサイクル率は全国19.5%だが、人口10万人未満の第1位である鹿児島県大崎町は83.0%。同じ法律の下で4倍以上の差がついている。
  • 本記事の立場は、日本の低さは意識ではなく会計の問題だということ。焼却施設1,004基のうち411基が発電設備を持ち、総発電能力は2,230MW。生ごみは既に別の資産の燃料として計上されている。

現在地

91%という優等生の数字は、測っている範囲がとても狭い

農林水産省が公表している「食品廃棄物等の年間発生量及び食品循環資源の再生利用等実施率」の令和6年度推計値によれば、食品産業全体の食品廃棄物等の発生量は14,634千トン、再生利用等実施率は91%です。業種別に見ると食品製造業98%、食品小売業65%、食品卸売業63%、外食産業35%。前年度の令和5年度は全体で90%、その前が89%ですから、じわじわと上がり続けています。令和7年3月に公表された新しい基本方針は、令和11年度までに食品製造業95%、食品卸売業75%、食品小売業65%、外食産業50%という目標を置いていますが、製造業と小売業はすでにその線に届いています。単体の統計として見れば、これは相当な達成です。世界の多くの国が同じ土俵で並べられる数字を持っていません。

問題は、この統計が何を数えているかです。分母は食品関連事業者から出た食品廃棄物等であって、家庭の台所から出た生ごみは一片も入っていません。日本の食品ロスは令和5年度の推計で約464万トン、そのうち家庭系が233万トン、事業系が231万トンと、ほぼ半々です。つまり食品ロスのおよそ半分について、91%という数字は何も語っていない。しかも「食品廃棄物等」は食品ロスより広い概念で、加工の過程で必ず出る野菜くずや魚のあらといった、そもそも食べられない部分を大量に含みます。91%の内訳の大半は、工場から規則正しく、乾いた状態で、単一の性状で、まとめて出てくる物質のことです。台所の生ごみとは、物としての条件がまるで違います。

法の射程

食品リサイクル法は、はじめから台所を見ていない

食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律——通称、食品リサイクル法は、平成12年法律第116号として2000年に成立し、2001年5月に施行されました。法の名宛人は「食品関連事業者」、すなわち食品の製造・加工・卸売・小売と、飲食店をはじめとする食事の提供を伴う事業者です。運用の骨格は、発生抑制・再生利用・熱回収・減量という優先順位を示したうえで、年間の食品廃棄物等の発生量が100トン以上の事業者に定期報告を課し、取組が著しく不十分な場合には勧告・公表・命令へと進む、というものです。義務の対象を事業者に限り、事業者のうち量の大きい者に報告を求める。制度としては素直な設計で、実際に成果も出しています。

その素直さの裏返しが、家庭系生ごみの位置づけです。家庭から出る生ごみは廃棄物処理法上の一般廃棄物であり、その処理責任は市町村にあります。食品リサイクル法は市町村に生ごみの分別収集を義務づけてはいませんし、堆肥化を求めてもいません。結果として日本には、生ごみについて二つの別々の制度が並んでいます。片方には報告義務と目標値と毎年の実施率統計があり、もう片方には1,700あまりの自治体それぞれの判断があります。第4回で見たフランスや中国の躓きは「義務を課したのに動かなかった」という失敗でしたが、日本の家庭系生ごみについては、そもそも課される義務が存在しません。躓く前の段階に、四半世紀とどまっているとも言えます。

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